ともに2023年にフルモデルチェンジを果たしたものの、Eクラス導入のタイミングが合わず、直接対決はこれが初。両ブランドの先進技術を纏った王道セダンの魅力を徹底比較する。
すべてにおいて優しくてマイルドなのがEクラス
SUV全盛の時代にあってもドイツ・プレミアムカーの2大巨頭であるメルセデス・ベンツとBMWは伝統的なセダンを疎かにはしない。ステアリングを握ってみれば、今こそセダンの優れた資質を世の中に再認識させるため、気合いを入れて開発しているとさえ思える。また自動車の基本であるセダンを磨きに磨いているからこそ、そこから派生した今どきのクロスオーバーSUVもいいクルマに仕上げることができるのだろう。
メルセデスとBMWの伝統的なセダンのなかでもど真ん中のEクラスと5シリーズが今回の対決。メルセデスはSクラス、BMWは3シリーズが実力・人気ともに高く、ブランドイメージに合っているとも思えるが、そういったキャラ立ちが抑えられているからクリーンで平等な比較になりそうだ。また、今回はガソリン2L直列4気筒ターボエンジンを搭載したエントリーモデルであることも比較するには都合がいい。
まずはEクラスに乗り込んで走り出してみると、タイヤと路面のアタリ、ちょっとした凹凸でのサスペンションのフィーリングが優しく、いかにも快適だというのが伝わってきた。コレコレ! この瞬間がメルセデスなのよ、と独りごちながら走っていく。試乗車のE200にはエアサスペンションや可変ダンパー、リアアクスルステアなどがなく、シャシー関連は素の状態。それでこれだけ優しく乗員を包み込むフィーリングを濃厚に生み出しているのだからさすがだ。
優しくて快適な乗り心地となると、柔らかすぎてフラフラとしてしまうイメージもあるが、そんなことは決してない。サスペンションがストロークしていくごとに粘りを増していくような感覚があり、ロールやピッチングは適度なところで抑えられる。高速道路でのフラットライド感は見事で安心感が高く、ワインディングロードをいいペースで走らせればたしかな操縦安定性が確認できる。コンベンショナルなシャシーで快適性と安定性をここまで高いレベルで両立させていることに脱帽せざるを得ない。
少しだけ重箱の隅をつつくとすれば、高速域で大きめの凹凸を乗り越えた後に、上下動がわずかに残る。それがネガになるほどではないが、もう少しダンピングが効いて収束が早いほうが好みだという方もいるだろう。
ハンドリングはメルセデス流で、コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと最初の反応はマイルドでスポーティなフィーリングとは言えないが、そこから切り増していくとグーッとノーズがインに入っていって軽快でFRらしい動きをする。基本的なフィジカルは高いレベルにあるが、それを殊更に強調してはいないのだ。
48Vマイルドハイブリッドだけあって2Lターボでもトルクに不足は感じない。必要十分な力感があって扱いやすく、アクセルを踏み込めば思いのほか活発な印象で高回転まで吹け上がっていく。サウンドもスポーツモードを選択すると迫力があり、お好みならばスポーティなフィーリングも出せますよと訴えているようだ。すべてにおいて優しくてマイルドながら、根っこの部分では高い実力を備えていることをそれとなく伝えてくるのがEクラスなのだ。
乗り心地が快適なのに走りも楽しい5シリーズ
5シリーズに乗り換えると、乗り心地が想像するよりもずっと快適なことにまずは驚いた。スポーティな味わいと引き換えにちょっとツンツンとする乗り味というイメージがあるが、まったくそんなことはない。強固なボディゆえにサスペンションがじつにスムーズにストロークしている印象が強い。
試乗車は可変ダンパーとリアアクスルステアがオプションで装着されていたので、その影響もあるだろうが、エンジン搭載車専用のEクラスに対して5シリーズはBEV(電気自動車)も用意するから、剛性面に余裕があるということだと推測できる。走り込んでいけば、Eクラスのように優しい感じではなく、少し硬質でいかにもスポーティなBMWらしさがにじみ出てくる。乗り心地が快適なのに、ワインディングを走ればきっと楽しいのだろうなと、普通に走らせているだけで予感させるのだ。
それは見事に具現化される。コーナーでステアリングを切り込んでいくと、いかにもフロント周りの剛性の高さを見せつけるように手応えがあり、切り増していけばミリ単位で正確に反応してビタッと思い通りのラインにのせていける。やはりBMWの魅力の根幹はハンドリングなのだと再確認。新型となってボディは大型化されたが、ハンドリングの正確性が高いおかげで道幅の狭いワインディングロードでも持て余すことはない。一体感があるからボディが身体の延長線上にあるかのようだ。
パワートレインで感心させられたのは、日常的なシーンでの実用トルクがじつに充実していること。1000rpm台でもアクセルをわずかに踏み増せば即座に反応してスーッと速度をあげていく。低回転域のトルクはEクラスとほぼ同等、MHEVのモーターも含めればむしろEクラスのほうが充実しているが、不思議と5シリーズのほうが日常域で頼もしい。トルクのスペックだけではなく、ドライバビリティを高めるべく、セッティングを煮詰めているのだろう。
ただし、高回転域ではそれほど活発というわけではない。スムーズに淀みなく回ってはいくのだが、リミットに近づいていくにつれてパワーの盛り上がり感が薄れていく。これは、本国には同じ2Lターボながらハイパワーの530iがあって、523iはECUなどで意図的にパワーを抑えているからで、エンジン本体のポテンシャルはあるがベーシックグレードゆえ、美味しいところを全部味わえるようにはなっていないのだろう。
2台とも走りの実力はとんでもない高みにある。100年を超えるエンジン車の知見・経験が伝統的なセダンに濃縮されていて、乗用車としてこれ以上ないくらいに、快適で走りの楽しさもあるのだ。実力は甲乙付けがたく、それぞれのブランドのアイデンティティが反映された味わいが違う。どちらかを選べと言われると難しいのだが、20年ほど前には多くのレースに出ていて、遠くのサーキットにもクルマで行くことが多かった。そのときはW210のEクラスに乗っていて、レースを終えて疲れているところに優しい乗り味がじつにありがたく、成績の悪さに落ち込んでいても癒やしてくれた。懐が深く、ドライバーを包み込んでくれるのがEクラスの魅力だ。
いまは年に2〜3回しかレースに出ていないので普段乗りのクルマもスポーティなほうが嬉しい。となると5シリーズに触手が伸びそうだ。ライフスタイルによって好みもかわってくるのだが、どちらをチョイスしても後悔することはない。メルセデスとBMWが誇る伝統的なセダンは、それだけ究極の乗用車であるからだ。
【SPECIFICATION】BMW 523i EXCLUCIVE
■車両本体価格(税込)=7,980,000円
■全長×全幅×全高=5060×1900×1515mm
■ホイールベース=2995mm
■車両重量=1760kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=190ps(140kw)/5000rpm
■最大トルク=310Nm(31.6kg-m)/1500-4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/55R18
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437
【SPECIFICATION】MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE
■車両本体価格(税込)=8,940,000円
■全長×全幅×全高=4960×1880×1470mm
■ホイールベース=2960mm
■車両重量=1790kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1997cc
■最高出力=204ps(150kw)/5800rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1600-4000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:4リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/55R18
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610
■関連記事
- 「ベストEクラスを探せ!」メルセデス・ベンツ EクラスコンシェルジュがアナタにぴったりのEクラスをお探しします!
- 【比較試乗】ガソリン/ディーゼル/PHEVを徹底比較。ベストEクラス・セダンを探せ!「メルセデス ベンツE200アバンギャルド vs E220dアバンギャルド vs E350eスポーツ エディションスター」
TAG :
関連記事
愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?
複数社を比較して、最高値で売却しよう!
車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。
手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!
一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!
【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>