クルマは時代を反映しつつ進化していくものだが、昨今は電動化がそこに拍車をかける結果になっている。新たにPHEVシステムを得たレンジローバー スポーツの性能的な幅を確認するため、ショートトリップに出てみた。
PHEVにより引き立つプレミアム感
最新のPHEVモデルで1泊2日のショートトリップに出掛けてみた。主役は2024年モデルから新たに導入が開始されたレンジローバースポーツ・オートバイオグラフィーP550eである。
スポーツ性の部分を切り取るだけなら箱根あたりで充分だが、PHEVならではの使い勝手をチェックするためには様々なシーンが欠かせない。我々は早朝の都内から長野方面を目指した。
レンジローバーブランドらしい厚みのあるスクエアなボディに、細めのヘッドライトとブラックアウトされた低めのキャビンを組み合わせたレンジローバースポーツ。P550eの動力源は3Lガソリン直列6気筒ターボに、最高出力217psの駆動用モーターと走行用バッテリー、そして充電ポートを組み合わせてPHEV化したもの。エンジンが発生する400psにモーターのパワーを足したシステム総計550psという最高出力が車名の数字と符合する。
今回のレンジローバースポーツは、最上級のトリムを与えられたオートバイオグラフィー。ディープガーネットという深い色合いのセミアニリンレザーをふんだんに使った内装の質感がすばらしい。そんな上質な雰囲気と、PHEVならではのスッと静かに発進する所作にも整合性が感じられた。メーター内の表示をチェックすると、バッテリーの残量は80%、EV航続可能距離は71kmとなる。これだけの距離をEV走行できれば、近場の普段使いならガソリンを消費することはほとんどないだろう。
首都高速に合流しスロットルを深く踏み込んだ瞬間、エンジンの滑らかな介入が感じられた。昨年、ディーゼルMHEVのレンジローバースポーツD300を試乗した際、直6ならではのスムーズな回転フィールに驚かされた。だが今回、強力なモーターとガソリン直6ユニットの融合は、さらなる静けさと滑らかさを訴えかけてきた。
現行のレンジローバーと共通のMLA-FlexアーキテクチャーはPHEVのみならずBEVにも対応できるように設計されており消音も徹底されている。このためアダプティブクルーズコントロール任せで巡航している際のエンジンの気配は微弱。度々BEVのような極上の滑空フィールを感じながら、緩やかにうねる中央自動車道をドライブできたのである。
今回のP550eにはランドローバーらしい走りに欠かせないテレインレスポンスの他に、電力の使用をコントロールするためのハイブリッド、EV、セーブという3つの走行モードが用意されていた。それでも基本的にバッテリーに電力が残っている場合には積極的にモーターを活用するという制御は多くのPHEVと同じである。
今回のようなロングドライブをPHEVで行なった場合、1〜2時間も走ると走行用バッテリーの電力が空近くまで減ってしまうことになる。しかし、興味深かったのは霧ヶ峰へと駆け上がるワインディングのようなシーンでバッテリー残量が0%と表示されていても、必要とあらばモーターによるアシストが入ってくれることだった。そのための電力はしっかりと確保されているので、バッテリーが減ると普通のICE車になってしまう、ということもないのである。
英国仕立てのスポーティなハンドリング
ニッコウキスゲが咲き始める前の霧ヶ峰高原は空いていて走りやすい。レンジローバーらしいコマンドポジションから見渡す雄大な景色の中で、レンジローバースポーツの走りを堪能できたのである。
レンジローバースポーツとして3代目となる現行型の走りの核となっているのは、最新のエアサスペンションシステムだ。スイッチャブルボリュームエアスプリングとツインバルブアクティブダンパーを組み合わせたダイナミックエアサスペンションの脚さばきの良さは、ワインディングで容易に体感することができた。
テレインレスポンスで「ダイナミック」モードを指定して走るのもいいが、それよりもAUTOモードで走らせた方がクルマのポテンシャルを活かせる。例えばゆっくり走る前走車の後ろを走っている状態ではコンフォート的な乗り心地を享受し、そこから一気に追い越しをかけ、元の車線に復帰するような場合にはダイナミックモードによってロールが抑えられた俊敏な動きを堪能できるのだ。
現代のフルサイズSUVの走りを変えた48V以上の電圧で動く電動油圧のスタビライザーはもちろん現行の全てのレンジローバースポーツにもインストールされている。その結果としてルーフ全面がガラスになっているようなSUVモデルでも重心の高さをすっきりと相殺できるのである。
最新のコンポーネンツをひと通り備えたレンジローバースポーツだが、重要なのはそのドライブフィールがイギリス車のセオリーに則っているという点だろう。ドイツ車が最新技術を是とし、イタリア車がデザインと官能性能に重きを置いているとすれば、イギリス車の特徴とは何か? それは伝統に根差したスタイリングとハンドリングに代表される動的質感である。実際にワインディングでペースを上げて楽しむレンジローバースポーツは、2870kgという車重を忘れさせるほど身のこなしが軽い。それでいてゆったりとした姿勢変化によってドライバーと対話する術にも長けている。電子制御が違和感なく滑らかなドライビングを演出してくれる点こそ現行レンジローバースポーツの真骨頂なのである。
旅の帰路、休憩のために立ち寄ったサービスエリアで充電を行なった。何しろ今回のP550eは普通充電に加えCHAdeMO規格の急速充電ポートを備えているので、隙間時間でもバッテリーを満たせる。ちょっとした心がけで、より効率の良いドライブを堪能できる。これもPHEVならではのメリットと言えるだろう。
今回は2024年モデルを試乗したが、現在の注文は2025年モデルとなっている。今回の切り替わりで最も目を引くのはPHEVモデルの価格引き下げである。オートバイオグラフィーP550eの場合1943万円から1685万円へとプライスダウンしているのだ。
レンジローバーブランドは今まさに半世紀以上の伝統に電動化を馴染ませている最中にある。プレミアムであり、しかし躍動的。PHEVシステムを含むレンジローバースポーツは今味わうことができる最良の1台だと確信した。
⼋ヶ岳⾼原⾳楽堂 開催情報
2024年7月14日
宇崎竜童「弾き語りLIVE」
https://www.yatsugatake.co.jp/event/concert/2024/0714/
2024年8月3・4日
小野リサ「サマーライブ2024」
https://www.yatsugatake.co.jp/event/concert/2024/0803-04/
2024年8月5日
万作の会「八ヶ岳狂言の世界」
https://www.yatsugatake.co.jp/event/concert/2024/0805/
【SPECIFICATION】レンジローバー スポーツ・オートバイオグラフィP550e
■車両本体価格(税込)=16,850,000円
■全長×全幅×全高=4960×2005×1820mm
■ホイールベース=2995mm
■トレッド=前:1700、後:1705mm
■車両重量=2870kg
■エンジン形式/種類=PT306/直6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=83.0×92.2mm
■総排気量=2993cc
■最高出力=400ps(294kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=550Nm(56.1kg-m)/2000-5000rpm
■モーター形式/種類=TZ288/交流同期電動機
■モーター最高出力=217ps(160kW)/5440-7040rpm
■モーター最大トルク=281Nm(28.7kg-m)/500-5440rpm
■燃料タンク容量=71.5L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=10.4km/L
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:285/40R23
問い合わせ=ジャガー・ランドローバー・ジャパン TEL0120-18-5568
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