マセラティが昨シーズンから参戦しているファナテックGT2のレーシングカー「マセラティGT2」に幸運にも試乗する機会を得た。世界中から招かれたジャーナリストはわずか9名。果たしてピュアレーシングカーのGT2はどんなパフォーマンスを披露してくれたのか?
レーシングカーながらドライバビリティも高い
昨年6月30日にスパ・フランコルシャン24時間レースで初公開された「マセラティGT2」のテストドライブが、彼らのお膝元である「アウトドローモ・モデナ」で開催された。そしてここに世界で9名のモータージャーナリストが招かれることとなった。
マセラティGT2はその名の通り、GT2規格で作られたレーシングカーだ。ベースとなるのはフラグシップモデル「MC20」であり、マセラティは開発当初からレースに参戦することを計画していた。そしてスパでの発表後「ファナテックGT2ヨーロピアン・シリーズ」最終戦に出場し、LPレーシングがデビューレースでポールポジション/決勝2位を獲得。さらに今年は3台がフル参戦を果たし、開幕戦のフランス・ポールリカールではLPレーシングの1号車がポール・トゥ・ウイン。同日開催の第2戦でも2号車が3位表彰台、TFTレーシングもアマクラスで2位及び3位と連続表彰台を獲得して、幸先のよいスタートを切っている。
そんなマセラティGT2で一番感心させられたのは、MC20と同じくドライバビリティの高さだった。当初は44万ユーロ(約7230万円)という価格に強烈なプレッシャーを受けていた筆者だったが、走り込むほどその挙動が体になじみ、夢中でそのパフォーマンスを楽しめるようにまでなったのである。
その核となるのは優れたシャシー性能と、ドライバーズエイドのきめ細やかさだ。ダラーラが開発に加わったカーボンモノコック。これを強化したアルミ製のサブフレームで支えるミッドシップシャシーは、抜群の旋回性を持っていた。マセラティGT2にはどうみても小さすぎると思えたモデナのタイトターンでその巨体を鋭くターンインさせるだけでなく、ブレーキを残し過ぎればスピンできるほど、リニアな感度を示したのだ。またステアリング上ではABSが調整可能で、慣れるに従いその介入を遅らせられるようになった。
そうなるとクリップからのアクセルオンも早くなり、コーナー立ち上がりでブーストの遅れが気になるようになった。そしてこれをエンジニアに伝えると今度は、「トラクションコントロールを緩めてみて」と指示が飛ぶ。彼らはその3L・V6ツインターボ“ネットゥーノ”に絶対の自信を持っており、果たしてTCダイヤルを回すと、言葉通りのレスポンスとパワーで、マセラティGT2はコーナーを立ち上がった。そしてこうしたやり取りが、鳥肌が立つくらいレーシーだった。
ちなみにF1由来のプレチャンバーシステムを持つこのエンジンは、出力こそMC20と同じ621psだが、高回転での効率と耐久レースでの燃費を考慮してタービンが大型化されていた。またボディ中央には吸気用シュノーケル、リアフェンダー上部にはインタークーラー用の大型エアダクトを新設し、その性能を安定化していた。
試乗を終えて開発ドライバーのアンドレア・ヴェルトリーニ氏に「やや挙動がシャープだから、アマチュアには難しいところもあるね」と伝えたら「ニュータイヤを履けば、断然扱いやすくなるよ。次はもっと、広いコースで走らせよう!」と彼が答えた。だったら最初からニュータイヤ履かせてよ! とも思ったけれど、とにもかくにも手塩にかけた我が子の実力はこの程度ではないとのことで、どうやらそれを確かめさせてもらえるお眼鏡にはかなったらしい。
確かに今回は調整式のフロントスプリッターやウイングも含め、そのダウンフォースレベルがわからなかった。サスセットだって合わせ込めば、もっと一体感が増すはずだ。何度だって、乗りたいよ! そう思えるほどマセラティGT2は、素晴らしいレーシングカーだったというわけである。
【SPECIFICATION】マセラティ・GT2
■全長×全幅×全高=4838×2029×—mm
■ホイールベース=2700mm
■エンジン型式/種類=─/V6DOHC24V+ツインターボ
■内径×行程=88×82mm
■総排気量=2992cc
■最高出力=621ps(463kW)/7500rpm
■最大トルク=730Nm(74.4kg-m)/3000rpm
■トランスミッション形式=6速シーケンシャル
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ=前:325/668-18、後:325/705-18
問い合わせ先=マセラティジャパン TEL0120-965-120
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