3月30日に有明地区で開催されるフォーミュラE東京大会を控えた3月中旬、ジャガーの電動モデルIペイスおよびIペイスのワンメイクレーシングカーに試乗する機会を得た。体感した圧巻のパフォーマンスの模様をお届けしよう。
ラグジャリーEVブランドに転身するジャガー
「なんで、いまさらIペイス?」と不思議に思う方もいるだろうが、これには意外と深遠な理由がある。
第1に、本誌発売直後の3月30日には東京・有明地区でフォーミュラEレースが初開催される。2014年に「世界初の電動フォーミュラカーレース」として始まったフォーミュラEは、2020年にF1やWECと並ぶFIA世界選手権に認定されるなど順調に成長。この未来志向の選手権にジャガーは2016年より参戦し、昨年はチーム・ランキングで2位に食い込む健闘を示した。というわけで、ぶっちゃけ、フォーミュラEの前振りという意味合いが、この試乗会には込められている。
2019年と2020年の2シーズンに渡り、フォーミュラEのサポートレースとして開催されたIペイス eトロフィー。パワートレインは基本的に量産車と共通ながら、ホンモノのレーシングカーらしい軽量化や足回りの強化を実施。コーナリング中にブレーキを残すと軽いテールスライドを起こす最高にファンなハンドリングに仕上がっていた。
2番目の理由はそれ以上に重要だ。ジャガーは2025年から「ピュア・エレクトリック・ブランド」になると宣言している。これに向けて、今年はエンジン車の生産を続々と終了。早ければ年内にも、ラグジャリーなEV専門ブランドに生まれ変わったジャガーのニューモデルが発表されることになっている。今回の試乗会は、ジャガーのEVとしていち早くデビューしたIペイスの最新版を試すことで、きたるべきジャガーの新時代に注目して欲しいという思いが込められているのだ。
2024年型は内外装の手直しだけとの説明だったが、乗ってみると2022年型よりもフラット感が強まり、安心してコーナーを攻めることができた。
富士スピードウェイのショートコースに姿を現したIペイスは3タイプ。1台は従来型で、もう1台はマイナーチェンジを受けた2024年型、そして3台目はフォーミュラEのサポートレースに使われていたIペイスのワンメイクレーシングカーである。
タイヤは2022年型が20インチで2024年型が22インチだったが、それ以上に足回りの設定が違うとの印象。いずれにせよ、サーキットでこれだけ安心してコーナリングを楽しめるEVは初めてだった。
個人的には、フロア下に重いバッテリーを積むEVは荷重移動を起こしにくく、サーキット走行は楽しめないと思っていたのだが、Iペイスは従来型も最新型もサスペンションの設定が巧みで、この弱点を見事に解消していることが印象に残った。残るレーシングカーは、スタビリティコントロールがないおかげでその傾向がさらに顕著。「EVでもここまで振り回せるんだ!」と認識を新たにした次第である。