直6エンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたX6 35dが本国でのリリースからやや遅れて日本に導入。EV的な出足からの強力な加速、そして滑らかなクルージングなど、新しいスポーツSUVの世界を見せてくれた!
見た目よりも小さく操作性に優れている
2019年末にデビューした3代目X6。約一年前の2023年4月にマイナーチェンジ版の日本仕様がデビューする。フロントマスクデザインやリアランプ周りのエクステリア変更と、カーブドディスプレイを採用したインテリア変更などがメインで、まずは高性能な2種類のガソリンエンジン搭載グレード(MパフォーマンスとMモデル)の導入が発表されたのだった。
もっとも実際に売れるグレードはというと、その3カ月後に追加でアナウンスされたxDrive 35d Mスポーツの方であろう。前期型の途中から導入された48Vマイルドハイブリッドグレードで、3L直6ディーゼルターボエンジンにベルト駆動のスタータージェネレーターを組み合わせ、小型の48Vリチウムイオンバッテリーによってエンジン始動はもちろん、オンデマンドで電動パワーアシストや回生制動を行なう。マイナーチェンジモデルではパワートレインそのものの変更はないようだ。
それにしてもX6をフツウのSUVとして接している自分自身に驚いた。初めてみたときには、背が高いのに低いだなんて随分と変わったカタチのSUVが現れたものだと感心していたというのに、そんなクーペSUVの先駆者的存在さえ霞むほど、昨今のSUVデザインは多様性を極めている。iXやXMに比べればX6などもはやフツウのカタチ、というわけだ。
それだけSUVというカテゴリーが日常の乗用車となった証拠である。裾野が広がればその分、ユニークな頂上も増える。当然の成り行きかも知れない。ただ、今回のマイナーチェンジにおけるデザイン変更、特にフロントマスク周辺の変化は、スポーティさを増やしたと思える反面、車体のサイズ感を大きく見せない効果もあるように思う。結果、X4とよく似た雰囲気に思えてしまう。主張の強いモデルを欲しがる高級SUVマーケットにおいて威張って見えないマスクの評価はどうだろうか?
もっとも実際に近くに立ってみれば、依然として大きなクーペSUVである。十分、圧倒的だ。イメージするよりもかなりでかいので、これを自宅のガレージにしまうと、サイズ的に余裕のあるスペースであったとしても、かなり大きな物体を持ち込んでしまったと思うに違いない。
腰を落ち着けエンジンをかけ、一瞬だけディーゼルエンジンらしい唸りを聞く。出発するまでは大きなクルマという印象が残ったままだ。ところがひとたび動き出すと、X5とは違って、車体のサイズがひとまわり小さくなったように感じる。フロントスクリーンのハイトが低く、トレッドがワイドで、まずまずクイックな動きをフロントアクスルがみせるからだろう。動かしてX4のように思えること自体は決して悪いことではない。むしろ操縦性に優れている証だと言っていい。
そんなことよりもソリッドな乗り心地の方に驚いた。タイヤはコンチネンタルのプレミアムコンタクト6。SSRだからランフラットだ。その影響もあるのだろうが、まろやかな感覚は皆無だ。しかし、速度が上がるにつれて硬さは和らぎ、フラットなフィールが増す。首都高速に乗るあたりではもう乗り心地など気にしなくなっていたが、それでも“硬かった”という印象だけは残る。
パフォーマンス的には以前より申し分のないものだった。電気モーターによるアシストは効果的で、出足のダッシュはEV的、その先も加速をより強力にそして滑らかに演出する。機械的に生じるわずかな段差を電気が補うという意味で、良くできたストレート6にはこのくらいの電動化が“エンジンを積極的に楽しみたい派”には有効だと改めて思う。
【SPECIFICATION】BMW X6 xDrive35d Mスポーツ
■車両本体価格(税込)=11,980,000円
■全長×全幅×全高=4955×2005×1695mm
■ホイールベース=2975mm
■トレッド=前:1685、後:1695mm
■車両重量=2270kg
■エンジン形式/種類=B57D30B/直6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=—
■圧縮比=—
■総排気量=2992cc
■最高出力=286ps(210kW)/4000rpm
■最大トルク=650Nm(66.3kg-m)/1500-2500rpm
■燃料タンク容量=80L(軽油)
■燃費(WLTC)=13.1km/L
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:275/45R20、後:305/40R29
問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437
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