国産・輸入車を問わず昨今人気のカテゴリーとなっているコンパクトSUV。ドイツ御三家のモデルはそれにプレミアム感が備わっているのが魅力でもある。ここでは最新のX1、マイナーチェンジを受けたGLA、Q3の実力を検証してみた。
X1とGLAの実用性能は高い満足感を提供
CセグメントのSUVは、国内市場でも人気のカテゴリーだ。さらに、X1は2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤーでインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。GLAもマイナーチェンジしたばかりなので、カテゴリーとして注目度が向上しそうである。
X1は、最近のBMWの戦略となるパワー・オブ・チョイスを掲げ、エンジン車は2Lのガソリンとその高性能版とディーゼルを用意。電気自動車としてiX1も揃え、補助金を使えばほぼ同価格帯でエンジン車を含め選択が可能だ。
今回の試乗車は、ガソリンエンジンを積むxDrive20iで、3シリーズなどが積む同系の縦置きユニットに比べ最高出力を20ps上乗せし204psを発揮。発生回転数は5000rpmとなるが、6000rpmに迫るまで伸びのある加速が楽しめる。ただ、トップエンドでエンジン音にメカニカルノイズが重なり硬質な感じになることが気になるところ。
このエンジンは、低回転域で充実したトルクを発揮する。アクセルを少し踏み足せば、操作に即応して市街地はもちろん高速道路でも周囲の流れに先行するくらいの加速がこなせる。ちなみに、7速100km/hのエンジン回転数は1600rpmと低めだ。
また、ディーゼルを積むxDrive20dであれば力強さの充実ぶりが際立つ。しかも、加速の伸びやかさは2Lの直4の場合はガソリンとの差を感じないほど。むしろ、低周波を効かせたエンジン音により迫力さえ感じる。いずれにしろ、両ユニットともにパワー・オブ・チョイスの有力候補だ。
ところで、BMWといえば走り最優先というイメージがある。確かにM系であればその通りだが、他のグレードは快適性も重視。試乗車のxLineは、余計なフリクションがなくスムーズに動くサスペンションを装備。乗り心地のしなやかさが実感でき、ペダル操作やステアリング操作に対するボディの姿勢変化は最小限。惜しいのは、高速域の直進時にフラつくわけではないがステアリングのセンター感が物足りないことだ。
静粛性については、Cセグメントでベストと断言できる。ザラついた路面を通過する際に聞こえるゴーッというロードノイズは、音量が抑制されているだけではなく響かないのでスッキリした印象。BMWではめずらしくタイヤ内の空気振動がノイズとなる空洞共鳴が聞こえることもあるが、耳障りに感じるほどではない。
フェイスリフトを実施したGLAの試乗車は、2Lのディーゼルを積む200dだ。このユニットは、ディーゼルとしては低回転域のトルクを際立たせている感じがしない。だが、力強さが不足しているという意味ではない。それどころか、アクセルを踏み込むと2000rpmを超えてから加速の勢いが増してくる。この盛り上がり感は、GLAの特長となる。
なおかつ、アクセルを踏み続けると4000rpmを超えるまでパワーが持続するため加速の頭打ち感が気にならない。エンジン音もまろやかで、振動を含めディーゼルであることを意識する場面とは無縁でいられる。
1.3Lのガソリンを積む180は、実用性を重視したユニットだ。最高出力こそ136psと控えめだが、最大トルクは200Nmを発揮。自然吸気式エンジンなら2Lクラスに匹敵する性能を得ているだけに、日常的な場面で力強さの不足を感じることがない。
X1と同様に、GLAも快適な乗り味を獲得している。静粛性についても、200dの試乗中にエンジンの騒がしさを感じたことは一度もない。ロードノイズは、音量としてはCセグメントの平均レベルだ。ただ、聞こえてくるのは低周波のノイズだけで他の周波数が重なることがなく、フィルターを通しているかのように雑味を排除され響くこともない。
乗り心地は、X1よりもしなやかで、路面のうねりを通過する際にはフワッという感じの縦揺れが残ることがある。だが、試乗車にはオプションのAMGラインパッケージが装備されていたのでダンパーの減衰力を連続可変制御。走行モードをスポーツにすれば、硬さを感じない範囲で縦揺れを回避。コーナリング中のロール感も抑えられステアリングの手応えが増し、スポーティな走りが楽しめる。
高速域の直進時は、ステアリングがセンターで落ち着いている感覚が得やすい。それでいて、レーンチェンジで切り返す際に手応えの段つきが気になるような違和感を覚えずに済む。高速道路のロングランは、GLAが得意とする場面になるはずだ。
加速が超刺激的な別格扱いのRS Q3
Q3は、CセグメントのSUVではあるものの試乗車は別格扱いのRSだ。2.5Lの直5ターボは最高出力400psを発揮。やはり別格扱いとなるX1のM35iは317ps、GLAの45Sは421psだが、いずれのモデルも、走りは超刺激的だ。ただ、積極的な走りを望まなければ本来の実力が活用できないことも同じだ。
Q3は、1000rpm台のトルクを比べると2Lのディーゼルを積む35TDIと同レベルに感じる。1.4Lのガソリンを積む35TFSIよりは力強さを得ているが、余裕を感じるほどではなく刺激が増すのは2000rpmを超えてからだ。
3000rpm台に達すると、アクセル操作に即応して期待以上の力強さが立ち上がる。同時に、エンジン回転数の上昇に合わせて迫力ある排気音を響かせる。もう少し官能に訴えかけるような音の演出を望みたいところだが、アクセルを踏み続ければ一気にレブリミットの7000rpmを振り切るだけに快感を覚えてしまう。
サスペンションの設定は、同行の2モデルと比べると走行モードがコンフォートでも硬めに感じる。それでも、動きはスムーズなので荒々しくはない。ダイナミックならダンパーの減衰力が高めの領域を維持するが、突き上げなどの不快感とは無縁でいられる。
特長的なのは、X1とGLAを含め駆動方式はフルタイム4WDだったが、高速域の直進路にステアリングセンターの節度感があったのはQ3だけだ。ステアリングに手を軽く添えておけば真っ直ぐに突っ走ってくれそうな感覚は、いかにもクワトロらしい。
その一方では、タイヤは走り優先の21インチを履くだけにロードノイズ抑制などの配慮は十分とはいえない。ゴーッという低周波のノイズだけではなくヒャーッというタイヤ溝内の空気振動によるノイズも重なってくる。積極的な走りではなく日常的な場面での走りの洗練度を望むなら、Q3の35TDIまたは35TFSIがいい。
CセグメントのSUVは、走りだけではなくハッチバックよりも広い室内スペースと荷物スペースが確保できることも人気の理由となる。そのあたりについては、3モデルともに決定的な違いはなく満足度が高い。
【LUGGAGE SPACE】
【PERSONAL CHOICE】BMW・X1
最新モデルだけあり、X1は優れた静粛性や快適な乗り心地など走りの洗練度で同行の2モデルをリード。同一モデルでBEVを含めパワーユニットの選択範囲が広いことも魅力だ。安全装備や運転支援装備の充実度していることも見逃せない。
【SPECIFICATION】MERCEDS-BENZ GLA200d 4MATIC
■車両本体価格(税込)=6,550,000円
■全長×全幅×全高=4445×1850×1605mm
■ホイールベース=2730mm
■車両重量=1760kg
■エンジン種類=直4DOHC16Vディーゼル+ターボ
■排気量=1949cc
■最高出力=150ps(110kW)/3400-4400rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1400-3200rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット、後:4リンク
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:235/55R18
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610
【SPECIFICATION】BMW・X1 xDrive20i xLine
■車両本体価格(税込)=5,860,000円
■全長×全幅×全高=4500×1835×1645mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1640kg
■エンジン種類=直4DOHC16V+ターボ
■排気量=1998cc
■最高出力=204ps(150kW)/5000rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1450-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/55R18
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437
【SPECIFICATION】AUDI・RSQ3
■車両本体価格(税込)=8,970,000円
■全長×全幅×全高=4505×1855×1605mm
■ホイールベース=2680mm
■車両重量=1740kg
■エンジン種類=直5DOHC20V+ターボ
■排気量=2480cc■最高出力=400ps(294kW)/5858-7000rpm
■最大トルク=480Nm(48.9kg-m)/1950-5850rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット、後:ウィッシュボーン
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:255/40R20
問い合わせ先=アウディジャパン TEL0120-598-106