新グレードが加わって硬派度アップ!最初のマイチェンを受けた「初代セリカ」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第35回

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ヴィクトリーのV、GTV登場!

当連載では第24回において、初代セリカLBのカタログをご紹介したが、今回は同じく初代セリカの、クーペの方のカタログをお目にかけることとしよう。

【画像23枚】フルチョイス・システムが複雑怪奇な初代セリカのカタログを見る!

初代のトヨタ・セリカといえば、「ダルマ」という愛称が思い出される。同じように「ダルマ」の愛称で呼ばれる車種には、初代コロナや、日産がノックダウン生産を行ったオースチンA40などがある。「クジラ」の愛称がポピュラーなS60/70型系クラウンも「ダルマ」と呼ぶ人がいるようだ。これらの例からすれば「ダルマ」の名は、ずんぐりとした、丸みの強い、どちらかというと不格好なクルマを指すあだ名のように思われるが、初代セリカはそれとは反対に、とても未来的なスタイリッシュさを持つモデルとして登場したのであった。

そのデビューは1970年12月のことであったが、そのスタイリングの元となったのは、前年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー、EX-1である。EX-1はファストバック・スタイルであるので、パッと見たところではむしろセリカLBに近いのだが、ウェストラインから下のみに注目すると、確かにそのデザインがセリカに活かされていることはハッキリ分かる。今となってはなかなか分かりにくいところだが、発売当時を知る人によれば、市販されたセリカのスタイリングはとんでもなく斬新に感じられたということだ。

機構的なレイアウトは、当時の国産小型車としては一般的なものであったFR。メカニカル・コンポーネンツは、同時に開発されたファミリーカー、カリーナと共有している。サスペンションはフロントがストラット、リアが4リンク式のリジッド。エンジンは全て直列4気筒で、1.4Lと1.6LのOHVがあり、後者にはツインキャブ仕様もあってOHVは合計3種、さらに1.6LのDOHCがあり、全4種類。DOHCはトップグレードである1600GT専用のユニットとなっていた。

この1600GTを唯一の例外として、グレードを設定せずにユーザーが好みの仕様を組み合わせて購入することができるという、フルチョイス・システムが初代セリカの売りである。すなわち、ST/LT/ETの3種の外装と8種の内装、前述のOHVエンジン3種、そして3AT/4MT/5MTの3種のトランスミッションを自由に組み合わせることが可能だった。このシステムは、豊富なオプションからユーザーが自分好みの仕様に仕立てることができた初代マスタングを大いに参考にしたものであり、このあたりが、セリカが日本初のスペシャリティカーであると言われる所以でもある。

表紙をめくって最初の見開きが左右ページとも折り畳みになっており、広げるとフルチョイス・システムの一覧となっている。GTとGTVもここに組み込まれて紹介されているが、この2モデルはフルチョイスの範囲外である。

大ヒットとなった初代セリカだが、1972年8月にはマイナーチェンジを実施。前後デザインがリフレッシュされただけでなく、燃料タンクの位置を改めるという、大きな変更が加えられている。さらに、GTの上を行く硬派なグレードとしてGTVも新設された。エンジンこそ同じ115psの1.6Lツインカム(2T-G)だが、ハードサスペンションとワイドラジアルタイヤ、油温計などを具え、エクステリアにおいてもフルホイールキャップを省略、専用のサイドストライプを奢るなどしたモデルであった。

このあと1973年にはハッチゲートを持つリフトバック(セリカLB)が加わり、SOHCとDOHCの2リッター・エンジンも搭載されるようになった。ハードコアなスポーツカーを持っていなかったトヨタのラインナップ中、最もスポーティな車種として、その後も改良を加えながら1977年まで生産され、大きな成功をおさめて二代目にバトンタッチしたのである。

ファッショナブルカーから本気のスポーツカーへとイメージをスライド
さて、ここでご覧いただいているカタログは1972年9月発行のもの。前述のマイナーチェンジは同年8月なので、それに合わせて作られたものと思ってよいだろう。サイズは244×296mm(縦×横)、ページ数は表紙を含めて全28ページ(折り畳みとなっている箇所がふたつ)。

表紙からして疾走するGTVだけに、どことなく硬派なイメージを強めたカタログで、タイヤ跡が強く残るテストコースで撮影された写真などがその印象を深める。それだけカリスマ的強さを持ったグレードとしてトヨタが用意したのがGTVであったということなのであろう。個人的には、家の近所にまさにイメージカラーのオリーブグリーンのGTVが居て、子供ながらにそれを興味深く眺めていた記憶があるので(その時点ですでに10年ほど前のクルマとなっていた)、特別感というよりは親しみ的感覚の方が強い。

この1972年8月のマイナーチェンジでは、フロントはさほどの変化はなかったが、リアではテールランプにメッキの枠が付くようになった。このリアスタイルは最後まで維持されたので、初代セリカと言えばこのイメージが強いという人も少なくないだろう。筆者の場合もそれで、最初期型のワンテールについては長らくその存在を知らなかったため、漫画『よろしくメカドック』に登場する松桐坊主のセリカも、「このリアスタイルは何だろう?」と長いこと疑問のままであった。このカタログを見るとつい、そんなことを思い出してしまう。

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