まとまり感あるモディファイが絶妙
インパル・マーチ。1990年代初頭のインパル製チューンドカーにおけるボトムエンド……と切り捨ててしまっては少々おこがましいだろう。ヤンチャな末っ子とでも言うか、「山椒は小粒でも」的な存在であった。
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ベースは二代目・日産マーチ(K11型)。この丸くて小さな車に、大ぶりなフロントバンパー、そして取って付けたようなブリスターフェンダーで武装させ、リアにはGr.Bラリーカーを彷彿とさせる巨大なウイングがそびえたつ。これらの要素だけを見ていくと、どうもアンバランスなハリボテ感を想像してしまうが、実際にフルキットを装着した姿を見てみると、下品にならない適度な迫力とまとまり感が際立っていて、とても魅力的である。さらに、ワイドフェンダーに合わせた専用の深リムRSホイールも、そのスタイリングに安定感を与えている。
ちなみにこの車は1993年の東京オートサロンにおいて、ドレスアップカー部門でグランプリを獲得している。当時のカタログを調べるとフロントバンパー、フェンダー4枚、リアウイングのフルキットで28.5万円。価格も大迫力な設定であったと言える。今回は更にオプション設定のフロントグリル、インパル製スポーツシートやステアリングもフルセットにしてモデリングした。
ベースにしたのはフジミ製1/24スケール・プラモデルのマーチG#。後期型に改修されてしまったという噂もあり、もはや希少な存在になってしまった前期型のキットである。フロントバンパーはプラ板やパテを使用して改造していくが、キットのバンパーは別部品で成型されていて作業がしやすい分、ボディとのバランスが取りにくい。よって、常にボディと仮組みを繰り返しながら形状を詰めていくように心がけた。
ボディへのパテ盛りで造形しつつ後付け感を表現したブリフェンがポイント
ブリスターフェンダーは、ノーマルボディの丸さとは全く異なる面構成をした、いわば後付け感がチャームポイントでもある。ボディとの境界をはっきりと表現するため、パテ盛り前に細切りプラ板を使ってフェンダー外周を縁取っていき、その内側にパテを充填していく方法を取った。リアウイングはプラ板で基本形状を切り抜き、三次曲面の脚部はエポキシパテをボディに押し付けるように成形、フィッティングに留意した。
ホイールは幸いにも同タイプがアオシマから別売りで発売されていたが、17インチ径である上、ピアスボルト付きで細部の形状が異なる。今回はそのホイールをスポーク部だけ切り出して使用。別ホイールのリムに合体させることで、マーチ専用のRSホイールを再現している。塗装はインパルのコーポレートカラーであるシルバー。
今回は845S(下の「関連記事」参照のこと)同様に、タミヤのラッカー系LP-11シルバーを使用してみた。インパルのシルバーに対して、色調、メタリック粒子の細かさ等ピッタリであり、扱いやすさも上々で非常に好印象だ。クリアーや溶剤はガイアカラーを併用。特に問題はなかったが、別メーカー同士の混ぜ合わせ等は自己責任で行って頂きたい。
最近の車にはない、元のデザインがシンプルだからこそ際立ってくるエアロチューン。実はかのイチロー選手も当時このインパル・マーチを所有されており、更にエンジンのターボ化等を行うなど、かなりの愛情を注いで大切にされていたようだ。