【海外試乗】 これぞまさしくプレミアムスポーティセダン、BEVも同時にリリース!「BMW 5 シリーズ」

約7年ぶりのフルモデルチェンジとなる8代目新型5シリーズの国際試乗会が開催された。先に登場した7シリーズ同様、ICEモデルとBEVモデルが同時にリリース。ここではBEVモデルのパフォーマンスについての第一報をお伝えしよう。

ライバルと比較して戦略的な価格設定

最初にお断りしておかなければならないのは、BMWの新型5シリーズの国際試乗会へ招かれたものの、試乗できたのはBEVのi5だけだった。皆さんの興味の多くは内燃機搭載(ICE)モデルだというのは容易に想像が付くのだけれど、何卒ご容赦ください。

新型5シリーズの真価を図る上で、永遠のライバルであるメルセデスのEクラスとの比較は避けて通れない。ところがi5の場合、仮想敵をEクラスとするのか、あるいはEQEとするべきなのか迷ってしまう。BMWとメルセデスでBEVに対する戦略がまったく異なるため、致し方ないところではある。ICEと共有できるプラットフォームを使うBMWと、ICEとBEVでそれぞれにプラットフォームを用意したメルセデス。それぞれにメリット/デメリットがあるので、どちらが正確とも言えないのも事実である。

約7年ぶりのフルモデルチェンジとなる8代目新型5シリーズでは全長はついに5mを超えてしまったが、ホイールベースは3mを切る。

ボディサイズを旧型と比較すると、新型は97mm長く32mm幅広く36mm背が高く、ホイールベースは20mm長くなった。これにより、全長は5mを超え、全幅は1900mmに到達している。新型Eクラスの全長は4949mm、全幅は1880mmだから、5シリーズのほうが大きくなってしまった。参考までに、EQEの全長は4955mm、全幅は1905mmである。

7シリーズの雰囲気を共有する5シリーズのインテリア。最新のBMWオペレーション・システム8.5が採用される。

ICEとBEVでプラットフォームを共有する場合、ホイールベースの落とし所をどこにするのかがひとつのポイントとなる。操縦性を考慮すればホイールベースは短いほうがいいが、バッテリー容量(=航続距離)を重視するとホイールベースは長いほうが有利だからだ。メルセデスはおそらくバッテリー容量を重視して、Eクラスの2961mmに対してEQEを3120mmとした。いっぽう新型5シリーズのホイールベースは2995mm。操縦性とバッテリー容量を天秤にかけ、3mを少し切るこの数値に行き着いたのだろう。結果的に、i5のバッテリー容量は81.2kWh、EQEが90.6kWh、最大航続距離はi5 eDrive40が582km、EQE350+が624kmと公表されている。

本革に見えるシート表皮はビーガン仕様。手触りも本革に近い。

通常であれば、海外試乗会の後で日本国内での発表がある。しかしご存知のように新型5シリーズの国内発表はすでに済んでいるので、海外試乗会で「日本仕様の内容は? 価格は?」と取材する手間は省けた。ICEはガソリン/ディーゼルともに48Vのマイルドハイブリッド仕様で、523iエクスクルーシブ(798万円)、523iMスポーツ(868万円)、523d xDrive Mスポーツ(918万円)の3タイプ。BEVのi5はeDrive40エクセレンス(998万円)、eDrive40Mスポーツ(998万円)、そしてM60xDrive(1548万円)の3タイプである。

日本仕様で注目すべきはi5の価格だ。eDrive40とM60xDriveに相当するEQEは、350+が1248万円、AMG534マチック+が1922万円で、i5のほうが圧倒的に安い。半導体の調達問題や円安の影響など、輸入車の価格がズルズルと高額化していくなかで、i5の価格設定は現実的に決して安くはないけれどかなり挑戦的ではある。

BEVといえどもBMWらしい走行性能

試乗会当日、キーの代わりに渡されたのはiPhoneだった。正真正銘のキーレスである。なんでもスマホに取り込めるのは便利だけれど、スマホをなくしたら生活の大半が直ちに止まるし、益々バッテリー残量がしょっちゅう気になってしょうがなくなりそうだ。

キドニーグリル部分がやや前方に突き出たように見えるシャークノーズと、ロングボンネットが特徴的なエクステリアデザイン。M60はグリルがブラックアウトされている。

トリムの隙間に上手に配置したエアコンの吹き出し口やフローティング・センターコンソールなど、インテリアの風景は7シリーズのそれによく似ている。静的質感も高い。日本仕様ではオプション設定になっているけれど、試乗車のシートは本革そっくりのビーガン仕様だった。BMWはサスティナビリティを追求していて、使用される原料や材料は基本的に再利用やリサイクルを積極的に活用。ビーガン・インテリアもその取り組みのひとつだという。サスティナブルとラグジャリーの両立はなかなか難しいとされているけれど、5シリーズのインテリアは高級感の感じられる仕立てになっていた。

リアライトはクロームで上下二分割としながらL字を形成。リバースライトはバンパー内に配置されている。ナンバープレートも7シリーズ同様、トランクリッドに配置。

eDrive40はリアにモーターを置く後輪駆動で、340ps/430Nmを発生する。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアが5リンクで、ICE使用は4輪とも金属ばねだが、i5はリアのみに空気ばねを採用する。試乗車には可変ステアリングレシオのスポーツ・ステアリング、四輪操舵のインテグレーテッド・アクティブ・ステアリング、電子制御式ダンパーが装着されていたが、いずれも日本仕様ではi5に標準装備される機構である。

M60は“ M ”を冠するので、内外装に専用の意匠や装備を揃える。Mスポーツ・ブーストあるいはMローンチコントロールを使うと0→100km/hはわずか3.8秒という俊足を披露する。

FRではなく事実上ポルシェ911などと同じRRとなるこのモデルは、後輪駆動らしいすっきりとした操縦性が味わえる。いっぽうで、前車に近づくと自動的に作動する回生ブレーキのタイミングや介入深度が予想外の場面があって、必要以上の制動Gを何度か体感した。乗り心地に関しても、フロントの金属ばねとリアの空気ばねのバランスがイマイチで、バウンシングからの前後の減衰にわずかながら差違が見られた。
いままでのBMWの味付けからすればどうにも腑に落ちないこれらの事象が、個体差の範疇だと確信したのはM60xDriveに乗り換えて間もなくだった。“M”なので前後にアクティブ・スタビライザーやボディ補強が入っているとはいえ、スムーズな操縦性と快適な乗り心地に「そうそうコレコレ」と思わず口に出してしまったほどだった。

ステアリングを切ると速やかにターンインを開始。その際、ピッチング方向からロール方向に変化するばね上の動きが、緻密にコントロールされているのが分かるものの、アクティブ・スタビライザーなどの電制デバイスの介入が強く感じられるような不自然さはほとんどない。旋回姿勢に落ち着くまでの過渡領域における所作は紛れもなくBMWらしいものだった。

xDriveの前後駆動力配分の妙にも、あらためて感心させられた。フロント261ps/365Nm、リア340ps/430Nm、システム最高出力601ps、最大トルク795Nmという、スポーツカー並みのパワーを持て余すことなく、状況に応じて前後に巧みに振り分ける。4輪に最適なトラクションが常にかかっていることが伝わってくると、ドライバーは安心感を抱くものだ。操縦性も動力性能も、ドライブを続けるうちにBEVであることを忘れてしまう感じは、7シリーズと共通だった。
初代の5シリーズは1972年に登場、50年以上が経過して8代目となった。ミドルサイズのスポーティサルーンという異名は、BEVになっても健在だった。

【SPECIFICATION】BMW i5 eDrive40[i5 M60 xDrive]
■車両本体価格(税込)=9,980,000円[15,480,000円]
■全長/全幅/全高=5060/1900/1515[1505]mm
■ホイールベース=2995mm
■トレッド=前:1620、後1655[前後:1625]mm
■車両重量=2200[2360]kg
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力(前)=340ps(250kW)/8000rpm[261ps(192kW)/8000rpm]
■モーター最高出力(後)=—[340ps(250kW)/8000rpm]
■モーター最大トルク(前)=400Nm(40.8kg-m)/0-5000rpm[400Nm(40.8kg-m)/0-5000rpm]
■モーター最大トルク(後)=—[365Nm(37.2kg-m)/0-5000rpm]
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=70.2kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=500[455]km
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/45R19[前:245/40R20、後:275/35R20]
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437

リポート=渡辺慎太郎 フォト=BMWジャパン ルボラン2023年12月号より転載

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