登場2年目はさらに燃費を改善
フォード・ランチェロは、フォードがかつて数世代にわたってリリースしていたクーペ・ユーティリティ(セダン・ピックアップ)である。クーペ・ユーティリティとは、クーペのように2座席を収めたキャビンの背後に荷台スペースを有するが、通常のピックアップがキャビンとは分離された荷台を持つのに対して、キャビンと荷台が一体構造となった車両のことを指す。セダンデリバリーのバリエーションとも言えるようである。
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ランチェロの初代モデルは1957年型で発表されたもので、下級モデル用のホイールベース116インチのシャシーを用いて設計されていた(上級モデルは118インチのシャシー)。ベースとなるフォードのマイナーチェンジに合わせて1959年型までラインナップされたのち、1960年型でのモデルチェンジではフルサイズではなくなり、コンパクトカーであるファルコンをベースとした二代目モデルに生まれ変わった。この世代の車名は、正確にはファルコン・ランチェロであった。
ファルコンは、1950年代終盤の不況を鑑みたフォードが、より質素で経済的なクルマとしてデビューさせたものである。スタイリングは、フルサイズと共通するU字型を横にしたような側面形が特徴だが、テールフィンはなくヘッドライトもシングルで、シンプルなものとなっていた。ボディはフレームシャシーのフルサイズとは異なり、ユニボディ形式を採用。ホイールベースは109.5インチ(2781mm)、全長は181.2インチ(4602mm)だったが、ワゴンおよびランチェロはリアオーバーハングが延長されているため、全長も約8インチ(200mm)長い。
搭載エンジンは直列6気筒144.3-cid(2.3L)で最高出力90hp、トランスミッションは3速マニュアルが標準でオートマチックはオプション、シャシーは前ウィッシュボーンと後リーフリジッドのサスペンションを具える。こうした外観および機構上の特徴は、ファルコン・ランチェロも同様であった。
ファルコン・ランチェロは基本的にはモノグレードであるが、デラックス・トリム・パッケージが設定されており、これをチョイスすると、メッキの窓枠(ドアサッシ)やテールライト・オーナメント、ホイールカバー、ホワイト仕上げ・ホーンリング付きステアリング、デラックス・シートトリム(シートが黒/白あるいは赤/白のツートンとなる)などが装備された。
デビュー翌年である1961年型のファルコンに加えられた変更は小規模なものであったが、170-cid(2.8L)、101hpのエンジンがオプションとして加わり、ベースの144.3-cidも出力を85hpに改め燃費を向上させていた。こうした変更はランチェロでも同様となる。また、デラックス・トリムは内容をより充実させ、外装の光り物にベッド外周やキャビン背面のモールディングが加わっている。
質素な二世代目ランチェロの中でも、1963年式までのボディを持つ最も小さな初期型は、アメリカ車の歴史に残る質実剛健な名車とも評価され、その価値を示すかのように1980年代までアルゼンチンや南アフリカでノックダウン生産が続いた。
ストックも制作可能に再改修されるより前のキットを使った作例
歴代ランチェロのプラモデルはあまり多くはなく、レベル1/25の1957年型とAMT 1/25の1961年型があるだけである。後者はプロモとして作られたものをキットとしても発売したのが元で、当初はストック状態にも組めるようになっていたのだが、後にカスタムしか組めない仕様となってしまった。しかし、近年ストックのホイールパーツなどが新規に加わり、この状況も改善されたようである。
ここでご覧いただいているのは、この改修が加わる前、2009年の「モデルカーズ」誌に掲載された作例である。カスタム仕様にしか組めないキットをベースにストックへと改めたものだが、これについては以下、作者・周東氏による解説をお読みいただこう。
「このキットは何回か再販されていて比較的入手しやすく、現在ではランチェロのキットとして唯一のものだ。作例で使用したのはキットNo.8062、1998年のメキシコ製。内容はまるでプロモのようにあっさりしたものであるが、ボディやインテリアはカスタマイズされていないのが救いだ。しかしながら、ストック状態とするには若干の加工と部品の調達が必要となる。
ボディはベッドまで含めて一体でモールドされており、形状もこの年式のランチェロの姿をよく捉えている。問題はベッドのフロア部分、パーティングラインが大きくあり、この処理をどうするかだ。一応キットにはトノカバーも付いているので、そのまま組んでカバーをかぶせるなり、荷物を積むなりすればよいのだが、作例では床板を切り取りプラ板で作り直した。床板は1mm厚のプラ板、レール部分は0.5×0.75mmのプラ棒を用いている。
他に、ボディ内側のカスタムパーツを付けるためのガイド穴の部分の肉厚が薄いので、補強の意味で瞬間接着剤などを流し込んでおくのがよいだろう。また、押し出しピン跡が目立つ部分もあるので、これも紙やすり等で削っておいた方が良い。インテリアはシートも一体となったバスタブ形状だ。やや上げ底の感もあるが、今回はそのままとした、ステアリングホイールは太く武骨に見えるので、可能な範囲で細くけずってやるとよい。
ウィンドウは幅が合っていないらしくかなりキツい。ここも現物合わせで慎重に削り合わせを行いたい。また、リアウィンドウ下部も歪みが見られるので、紙やすりやコンパウンドで研磨した方が良い。
エンジンはシェビーのV8が付属しているが、ストックに仕上げるにはフォードの直6が必要となるので今回はオミット。したがって、ボンネットはチリ合わせ後にボディに接着。足周りは、タミヤ1/24ロータス7のタイヤが外径、トレッド幅ともピッタリだったので、これを使用。ホイールとホイールキャップもかなり似た形だったので、併せて流用している。
このホイールを使用するため、アクスルも5mm径のプラ棒に置き換え、前後ともトレッドが56mmになるよう調整した。車高はキットのままだとボディが沈んだ感じになるので、全体で2mmほどボディが持ち上がるようにプラ板をシャシー前後に接着している。丁度シャシー下面とボディ下辺がツライチになるような感じだ。
ボディ色は、カラーコードJの『MONTE CARLO RED』。クレオスのC158スーパーイタリアンレッドに微量の黒を入れたものを、ダークピンクの上にペイント。インテリアはグレー/ブラックのコンビとしたが、正確な色調は不明であった」