新しいビッグカーの時代、その到来を予告
この記事の公開日は2023年6月17日。今から36年前の今日――すなわち1987年6月17日に発売された名車をご存じであろうか? セドリックとしては七代目、グロリアとしては八代目となる、Y31型系セドリック/グロリアである。
【画像20枚】懐かしいけど、セダンは最近まで見覚えあるような?なY31を見る!
Y31型系は先代Y30同様に4ドアのハードトップとセダンをラインナップ、このほかにワゴン/バンがあるがこれはモデルチェンジされず、WY30/VY30が継続生産となっていた。ボディサイズは5ナンバー枠いっぱいの全長4690mm/全幅1695mmを基本に、3ナンバーモデルは大型のバンパーやサイドモールを装着することで差別化。3ナンバー専用ボディは翌年1月発売の初代シーマ(派生車種であることを示すため、車名にはセドリック/グロリアの名が冠されていた)で実現することとなる。また、セドリックとグロリアではグリルなど細部のデザインが異なるのみで、基本的には同一のモデルである、という点は従来同様だった。
このY31については、デビュー前から「今度のセドグロはすごいらしいぞ」と自動車業界内でも前評判が立っていたと言われているが、登場当時のインパクトはたしかに大きなものであった。従来はとにかく重厚感を第一にデザインされてきたものがガラリと変わり、低く抑えて絞り込んだノーズを特徴とする柔らかなスタイリングに変化。リアはハイデッキで、それまでの水平基調スタイルとはかなり印象を異にする。ハードトップは従来同様のピラーレスボディ、セダンはプレスドアを採用していたのも特徴だ。
エンジンは先代同様にV型6気筒のVG型がメインで、3L版はターボのVG30ET(195ps)とVG30E(160㎰)の2種。2Lは新たに登場したツインカム(+セラミックターボ)のVG20DET(185ps)とVG20E(125ps)の2種。そして2.8LディーゼルのRD28(94ps)もあり、オーナードライバー向けモデルのエンジンは合計5種類となる(他にLPG仕様のRB20やCA20が存在)。トランスミッションにはフルレンジ電子制御オートマチック(E-AT)を採用、サスペンションはリアがセミトレーリングアームに替わり四輪独立懸架へと進化した(フロントはストラット)。また最上級モデルのブロアムVIPには電子制御エアサスペンションも設定されている。
「激変」の最たるものは、2Lモデルに設定されたグランツーリスモと呼ばれるモデルであろう。走りを前面に押し出したそのスタイルは衝撃的なものであった。フロントにはフォグランプを組み込んだエアダム型バンパーを装備、フードマスコットも省略される。もちろん足周りも固められており、2Lツインカムターボとの組み合わせによる走りは強烈だった。ベースとなるグランツーリスモと上級モデルのグランツーリスモSVがあり、後者はVG20DET搭載車のみに設定された。
全体のグレード構成について述べると、最上級モデルのブロアムVIPは3Lのターボとノンターボ双方に存在、ブロアムはノンターボのみ。2Lの最上級モデルはツインカムターボのブロアムで、先代までSGLなどの名が使われてきた中間グレードはクラシック系となり、ベーシックなクラシックと上級モデルのクラシックSVが設定された。このほかに前述のグランツーリスモ系があるが、これはセダンにはなくハードトップのみのモデルであった。逆にセダンのみのグレードとしては、営業車用となるオリジナル(CA20搭載)が存在する。ここまで述べてきた内容は全て、セドリック/グロリアで共通だ。
好評・好調の中でグレード追加などを繰り返す
Y31は専門家からの評価も高く、好調なセールスを記録。ただし、強烈なグランツーリスモと、ワイドボディのシーマに挟まれて、3Lのブロアム系は存在感が薄れてしまったようだが……。リリース後も細かく変更が行われ、2LブロアムのVG20E搭載車やセダンのグランツーリスモSVを追加。デビュー2年後のマイナーチェンジでは、当時世界初の電子制御5速オートマチック(5E-AT)を採用。さらにVG20DETにはインタークーラーを装備(最高出力210ps)、これを搭載する2Lブロアムには大型バンパーなどが装備され、3Lモデルと同じ外観となるなどしている。
マイチェンの後も細かなグレード追加や限定車の発売が続いたが、1991年6月にはフルモデルチェンジを実施。しかし、セダンはビッグマイナーチェンジ(リアピラーが太くなりオペラウィンドウを廃止)を行い、Y31のまま継続生産されることとなる。このセダンはつい最近までタクシーとして使用される例が多かったので(今も現役の車両ももちろんあることだろう)、記憶に新しい方も少なくないはずだ。