I.DE.AによるデザインのこじゃれたSUV
この記事の公開日は2023年6月7日。今から29年前の今日――すなわち1994年6月7日に発売されたクルマをご存じであろうか? 日産のSUV(当時の言葉で言えばクロカン四駆、RV)、ミストラルである。
【画像17枚】今見てもスタイリッシュ!なミストラルの姿を確認する
ミストラルは欧州日産で開発され、スペインの日産モトール・イベリカ(NMISA)で生産されていたテラノⅡを、輸入・販売した車種であった。このテラノⅡは、欧州フォードにもマーベリックの名でOEM供給され、これと合わせて欧州の小型四駆市場においてトップブランドともなった人気車種であったという。
デザインはI.DE.Aが担当しており、そのスマートなスタイリングは、日産のテラノを含む当時の国内クロカン四駆の中にあってひときわ異彩をはなつものであった。シャシーはテラノのフレームなどがベースとなってはいるが、欧州市場に向けて専用の設計がなされている。エンジンはテラノと同じ2.7L ディーゼルターボのTD27BTを搭載、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン(トーションバー使用)、リアが5リンクコイル。
ボディはフルドア構造の採用などにより静粛性が高く、100km/h走行時で66dbという優れた数値を実現。最小回転半径もクラストップの5.4mと、扱いやすさが特徴であった。シートは3列・7人乗りで、2、3列目シートは多彩なアレンジが可能。グレードはタイプXとタイプSの2種があり、当時の希望小売価格は前者が279万円、後者が261万円。また同日に、オーテックジャパンから、両グレードをベースとしたキャンピングカーも発売されている。
ショート版を追加し、マイチェンも実施
以後の変遷を簡単に追っておくと、1996年2月には、ホイールベースが200mm短い2ドアショートType Rを発売。こちらもエンジンはTD27BTである。翌1997年の1月にはマイナーチェンジが行われ、丸型ヘッドライトを装備した個性的な顔つきに変化。2ドアショートには大型フェンダーを装着するなど細かな変更も多く、インテリアもシートやドアトリムのクロスが改められるなどしている。エンジンは燃料噴射装置が電子制御化されてTD27BETiに進化、最高出力も100psから130㎰へとアップした。
「欧州生まれのピュア・ヨーロピアン・オールローダー」とのキャッチも誇らしげにリリースされたミストラルであったが、セールスは振るわず1999年2月にひっそりと販売終了。押し出し感の強さや迫力が求められた当時のクロカン四駆の中にあって、そのスマートなスタイリングはやはりアピール力に欠けたのであろうか。CMでも前面に押し出されていたお洒落さが、却ってアダとなった印象である。