長らくイタリア共和国大統領の公用車として使用されてきた「ランチア・フラミニア」は、ランチアのその後のデザインに影響を与えたモデルのうちの一台
2023年6月2日(金)、イタリア共和国大統領セルジョ・マッタレッラ氏は、大統領専用車「ランチア・フラミニア」に乗って、首都・ローマで「共和国記念日」の祝賀パレードを行った。このフラミニアは、60年以上にわたってイタリア共和国大統領の公用車として使用されてきた一台だ。
共和国記念日は、1946年にそれまでの王政を廃止し、共和制となることを国民投票によって決定し、共和国が誕生したことを記念して行われるものだ。伝統に従って、フラミニアに乗ったイタリア共和国大統領は、フォリ・インペリアリ通りなどローマ市街の象徴的な場所を通る軍事パレードを開始した。
フラミニアは、イタリアの創造性とエレガンスの象徴として世界中で親しまれており、ランチアの歴史の中では、以降の車体デザイン、新しいデザイン言語である「ランチア・プーラ」に影響を与えた9つのモデルのうちのひとつでもある。
このフラミニアは1961年以来、イタリア共和国大統領のオフィシャルカーとして使用されており、1957年の「ジュネーブ・モーターショー」で発表された初代は、2.5L V6エンジンを搭載した高級フラッグシップで、プレミアムなインテリアとエアロダイナミクス、持続可能性、流動的なボリュームからなる流線型のフォルムにより、当時の他クルマにはなかった魅力を備えていた。
【写真6枚】イタリアの創造性とエレガンスの象徴「ランチア・フラミニア」
1961年、ピニン・ファリーナはロングホイールベースの「プレジデンシャル・カブリオレ」を製作した。ホイールベースの寸法をセンチメートルで表した愛称「335」と呼ばれる。または「プレジデンシアーレ (Presidenziale)」、もしくは官邸の愛称「キリナーレ (Quirinale)」とも呼ばれる。
ランドーレット(フロントシートは屋根付き、リアシート部分はオープントップになっているスタイル)で前席にハードルーフ、後席にオープントップを備えた典型的な公用車のボディワークで、わずか4モデルしか製造されなかったが、いずれも専用のフロア、閣僚用の青いカラーリング、格調高い黒のコノリー革張り、インターホン、後席5席を装備していた。
この新しいオフィシャルカーで最初に迎えられたVIPは、あのエリザベス2世だという。その後、アメリカやフランスの大統領、たとえばジョン・F・ケネディ氏、シャルル・ド・ゴール氏など多くの政治家、国家元首、君主を含む著名な人物が続き、世界中で「イタリアの大使」となった。