悲しき名車の一生、その終焉をプラモで偲ぶ!AMT製「1969年型シボレー・コルベア・モンザ」【モデルカーズ】

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さらに美しく、完成度を高めた二代目だったが…

「名車」とひとことで言っても、いくつかのタイプの名車がある。華々しく賞賛に包まれた名車、後世になって評価の高まる名車、限られた層にのみカルト的な人気を博する名車……。そのどれにも当てはまるのではないかと思われるのが、シボレー・コルベアだ。

【画像24枚】哀愁漂う名車の姿を細部まで噛みしめる!

コルベアは、1960年型から1969年型まで生産された、シボレーのコンパクトカーである。1950年代、ビッグ3が手掛ける乗用車はほぼ全てがフルサイズ・モデルであり、小さなボディサイズの車種は独立系のメーカーに見られるのみであった。しかし当時、大きく派手になりすぎたアメリカ車への反動からか、フォルクスワーゲンなど欧州製小型車のシェアが拡大を見せてきた。そこでビッグ3もコンパクトカー市場へ乗り出すこととなり、1960年型で揃って参入することとなったのである。すなわちクライスラー(プリマス)のヴァリアント、フォードのファルコン、そしてGM(シボレー)のコルベアがそれであった。

ヴァリアントとファルコンが、機構的にはフルサイズの縮小版と言って良い保守的な内容であったのに対し、コルベアは革新的なメカニズムの塊であった。空冷水平対向エンジン(6気筒)を搭載するRR車――それはまさに、フォルクスワーゲンからの影響を実感させるものである。このようにフルサイズ・モデルと全く違う成り立ちは新たな購買層を惹きつけ、他社のコンパクトのように自社の既存モデルと競合することなく、セールス的にも非常に成功を収めた。バケットシートを装備したスポーティなコルベア・モンザが特に人気を呼び、マスタングの商品コンセプトに影響を与えたとも言われる。

初代モデルは細部を変更しながら1964年型まで続き、1965年型で二代目へとモデルチェンジ。世界規模でフォロワーを生んだフラットデッキスタイルは、柔らかなコークボトルラインへと変化したが、これが最も目に付く大きな違いであろう。続く数年間のアメリカン・カーデザインをリードする存在であった点は初代と同様だ。

サイドウィンドウに曲面ガラスが採用されたのも新しいポイントで、機構面では、リアサスペンションがスイングアクスルから、トレーリングアームを用いた完全な独立懸架へと進化している。ボディ形式は4ドア、2ドアともにセンターピラーのないハードトップとなり、それぞれスポーツセダン、スポーツクーペと呼ばれる。ボディサイズは2インチ幅広く、3インチ長くなったが、ホイールベースは108インチ(2743mm)で変わっていない。コンバーチブルは継続したがワゴンが消滅し、派生モデルのワンボックス(コルバン/グリーンブライア)およびトラックもこの年に終了。

しかし、コルベアの販売台数は落ち続けた。有名なラルフ・ネーダーによる欠陥車キャンペーンがその主な原因である。そこで指摘されている問題は初代のものであり、二代目ではすでに解決されていたのだが、GMはコルベアをフェイドアウトさせることに決め、モデルライフ途中からは広報活動も行われなくなっていた。

4ドアは1967年型を最後に消滅し、ラストとなる1969年型のラインナップはコルベア500(スポーツクーペのみ)、コルベア・モンザ(クーペとコンバーチブル)という非常に寂しいものであった。エンジンは水平対向6気筒の164-cid(2.7L)のみ、最高出力95hp、110hp、140hpと3種のバリエーションがあるのは最初の1965年型から変わらないが、当初存在した180hpのターボエンジンは、搭載車を設定していたコルベア・コルサと合わせ、1966年型を最後に廃止されている。1969年モデルの総生産台数は約6000台と言われており、最後に製造されたのはオリンピックゴールドのモンザ、シリアル番号105379W706000であった。

ネーダーの告発通りコルベアが欠陥車であったのかは意見が分かれるが、多くの事故の原因は、RR車の特徴的な操縦性にアメリカ人が不慣れであったためとも言われる。NHTSA(運輸省・道路交通安全局)の報告書でも、同様の機構を持つ車種と比較して特に危険とは言えないと結論づけられ、コルベアの名誉回復はなされた形だが、これはすでに車種消滅後の話であった。コルベアの自動車史における重要性は後年になって高く評価されるようになり、また熱心なファンも根強く存在していて、最後の1969年モデルなどは今ではコレクターズアイテムとして珍重されているのである。

良好な内容を持つキットをさらに追加工作でグレードアップ
この二代目コルベアは当時、AMTが1/25スケールでプラモデル化した。実車と同じく最初は1965年型としてリリースされた所謂アニュアルモデルで、毎年改修され1969年型まで辿り着いている(尤も、実車の変更はかなり細かい部分に限られる)。ここでお見せしているのは、この1969年型コルベアのキットを制作したものだ。以下、作者・周東氏の解説をお読みいただこう。

「AMT社の1969年型シボレー・コルベア・モンザは初版が1969年、今から50年ほど前に発売されたキットだが、初版パッケージを復刻したものや、ファニーカー仕様になっているものなど、何度か再販されている。今回使用したキットは2004年に再販されたものだ(No.38159)。モールド色はライトグレイ、プラは若干柔らかめ。オプションパーツが色々付属しており、ストックの他カスタムやラリー仕様が作れ、さらに(説明書では触れられていないが)コンバーチブルにもできるようだ。

ボディは形状をよく捉えたなかなかのもの。パーティングラインはリアピラー根元付近に若干目立つが、修正は簡単にできる。レインドロップモールは一部細くなっていて、ラインが均一でない。作例では、0.4×0.75mmプラ棒を用いて作り直している。リアデッキリッドは分割ラインが違っているような感じだったので、ボディ側とのチリ合わせを兼ねて修正し、筋彫りを加えた。

ワイパーはボディに一体モールドとなっており、立体感がイマイチ。ここはモールドを削り、ジャンクパーツのワイパーを取り付けた。ドアハンドルも同じ理由からジャンクパーツと交換している。また、スカットル部分のスジ彫りが全くないので、これも追加した。

シャシーは簡単な一枚もので、特に手を加える必要もないようだ。ファイアウォールは中央部分に四角いパーツが付くだけで、中途半端な状態。ここはプラ板を用いて作り直した方が良いだろう。足周りは、フロントはシャシー側の孔にシャフトを通すやり方で、上下2ヶ所の孔が開いている。リアはミッションを貫通し、トレーリングアームを介して組み上げる仕組み。作例ではキットのままとしたが、車高を調整する場合ちょっと厄介な構造だ。エンジンは全体的に、今時のキットと比べるとあっさりとした感じだが、大きく省略されている所はない。シリンダーバレル等がメッキパーツとなっていて、これは剥離して塗装した方が良いだろう。

インテリアはコンバーチブル用のパーツとなっている。実際にコンバーチブルとして作る場合はリアシートサイドを修正する必要があるが、これはシート幅の調整など、かなり手間がかかる作業となる。フロントシートは裾の部分が成形の関係で台座状となっているので、気になる場合はプラ材で修正しておくと良いだろう」

作例制作=周東光広/フォト=服部佳洋 modelcars vol.292より再構成のうえ転載

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