GTと同じセミトレ式リアサスを採用
日産スカイラインについて考えるとき、6気筒エンジン搭載のGT系が主流だったという印象を、「いやいや、そうではなかった」と慌てて打ち消す人は少なくないだろう。もっとも、今となってはその区別を知る人も多くはないかもしれないが……。それはともかく、元々1.5L 4気筒のS50の鼻先を伸ばし、無理矢理6気筒を詰め込んだ派生車として初代GT(S54)が生まれたことを踏まえると、実はスカイラインの本流は4気筒だった、という見方もできるだろう。
【画像49枚】軽快かつスポーティなTI-E・Sとその制作工程を見る!
この4気筒スカイラインが、6気筒GT系よりも短いボディをまとっていた最後の世代――それが1977年登場の五代目・C210型系、所謂ジャパンである。このコーナーでは、以前にもジャパンGTのキットを使ってTI化した4ドアの作例を紹介しているが、ここでお目にかけている2ドアの作例は、それとはまた異なるもので、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の285号(2020年)で発表された2ドアTI-E・Sである。以下、その際の解説(作者・森山氏によるもの)をお読みいただこう。
「毎年恒例となりましたるスカイライン特集、今回は『GT-Rをメインに』と言うような話だったことから、私が作りたいのとなると……これがなかなか思い浮かばず。ということで視点を変えて、GT-Rといえば走りのグレード“赤バッジ”の象徴ですから、それなら赤バッジを与えられた車種で誰も選ばなさそうなの……なんて、そんなのあるのと言われれば、実はあるんですよね、しかも4気筒モデルで。
五代目・ジャパンになって、4気筒モデルはTI(ツーリング・インターナショナル)として編制され、従来のようなファミリー向けだけでなく、「GTでは大きすぎる」というユーザー層に向け、GTと同じグレード展開がなされました。すなわち、ベースグレード(ただのGTと同じくただのTI)、装備を充実させた「-L」タイプ、更に豪華装備のトップグレード「-X」タイプ(途中追加)、そしてスポーティな「-S」タイプの4グレードで、セダン/HTともに設定。TIエンブレムもGTのそれに倣って色分けされ、Sタイプには赤バッジがあてがわれたのです。
このSタイプのTIには、4輪ディスクブレーキとリアスタビライザー付き強化サスペンション、そしてリアワイパーを装備。1600と1800のバリエーション中、1800EGI(インジェクション)エンジン車にのみ設定されたものの、動力性能的には他グレードと変わりなく、もちろんスポーツイメージとしてはGTの方が強力であることもあって、販売面で厳しかったようです。
そうした状況に忸怩たる思いは開発陣も抱いていたようで、マイナーチェンジ翌年の6月、GTにターボが追加された流れで、TIにも2Lモデルが設定されました。これはZ18Eと同じく直列4気筒OHC(インジェクション)であるZ20E(120ps)を搭載したもので、リアサスペンションがGT系と同じセミトレとなり、後輪ディスクブレーキも装備されるのが特徴。グレードはTI-E・SとTI-Eの2種で、後者も後輪セミトレ/ディスクブレーキを具えています(これに伴い1800のTI-E・Sは廃止)。これでTIも高い走行性能を手に入れた訳ですが、残念ながら4気筒車=ファミリー仕様と言うイメージは拭いきることができなかったようです。
とは言え、GTとほぼ遜色のない動力性能を持ち、はるかに軽くホイールベースが短い事から回頭性に富み、ハンドリング面で優れていたことから、隠れた名車とも言えるのではないでしょうか? 今回はそんな2000TI-E・Sを制作いたしました。
ノーズだけでなく横幅も詰める!
実はTIそのものは新車登場当時にLSとアリイからHTで1/24プラモ化されていました(ボディはGTと共通だったりする……)。しかし、いずれも現在入手困難。今回は現在入手可能なアオシマ前期型をベースに制作しています。このキット、元はイマイから後期ターボGTとしてリリースされたもので、同社廃業後に金型がアオシマへ移管、お色直しで後期GT限定車などとして展開され、さらに前後グリルや純正アルミを付けて前期型としてもリリース、現在は『ザ★モデルカー』シリーズから販売中です。
当時のほとんどの自動車キットに当てはまることですが、ボディの横幅が広く採られており、数あるジャパンのキットで1/24の実寸に近かったのは東京マルイだけ。近年のキット化にはフジミ製セダンがありますが、これは実寸通りです。なので、私が以前作ったTIセダン(『モデルカーズ』227号掲載)と並べるには気が引け、またシャシーをフジミから流用する都合もあって、横幅を詰めることとしました。
ですのでTIへの改造だけでなく、普通にGTを作るに際しても「横幅が気になる」と言う方や、シャシー周りをフジミに交換してリアルに作りたいと思う方の参考になればと思います。もちろんフロントノーズも長さを詰めており、TI自体は私の前述セダンだけでなく、北澤先生も後期TI-Lを制作されていて(下の『関連記事』参照)内容的に重複してしまいそうですが、作者による個性の違いを楽しんで頂けるよう、極力別の方法で作業を行いました。
ボディカラーはブルーですが、実はこの後期型用ブルーをメタリックと思いこんでおり、以前制作しました東京マルイのターボもメタリックのブルーで塗っていたものの、今回調べてみると、前期ではSタイプ専用色だった明るいソリッドブルーそのものでした。しかも、アトラスなどの商用車用ブルーと同じ色だったようです。
今回も時間に追われながらの突貫作業、何とか形にできました。デカールを作成していただきましたSMP24様にはこの場を借りてお礼申し上げます。今回のこの制作、皆様にとって何かしらのヒントが見つかれば幸いです」