弾丸フォルムのテンロク・スポーツ!タミヤ製プラモ「ワンダーシビック」をSi化する・後編【モデルカーズ】

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ホンダらしい合理性とスポーツ指向の結合

タミヤ製プラモデルのワンダーシビックについて、再現されているグレードが25i(実車デビュー当初のトップグレード)であること、またこれを改造してSiとした作品については、前編の記事(下の「関連記事」参照)ですでに述べた。ここでは、実車のワンダーシビック、つまり三代目シビックについて、もうすこし掘り下げてお伝えしてみよう。

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ホンダの小型車シビックは1973年に初代がデビュー。前身とも言えるホンダ1300/145では3ボックス・スタイルのセダンとクーペが基本となっていたが、シビックでは2ボックス・スタイルを採用し、シンプルなスタイルと相俟って新鮮な印象を与えた。しかし、1979年に登場した二代目は完全なキープコンセプトモデルで、ノッチバックの4ドア・セダンを加えるなどの変化はあったものの、全体にとても地味なイメージであり、不振にあえぐこととなる。それだけに、三代目へのモデルチェンジには大きな期待がかかっていたのである。

シビックと、その兄弟車であるバラード(二代目シビックの途中から加わった)のフルモデルチェンジは1983年9月に行われた。また、これに先行して、バラードをベースとしたスポーティな3ドア・ハッチバッククーペのバラード・スポーツCR-Xが同年7月にデビューしている。バラードのラインナップがこのCR-Xと4ドア・セダンの2種であったのに対し、シビックは3ドア・ハッチバックをメインに、4ドア・セダンと5ドア・ワゴン/バン(前者はシャトル、後者はプロと名乗った)の3種からなる。

そのスタイルはロー&ワイド感を強調した、非常にエッジの利いたもので、特に3ドアは、スパッと切り落とされたようなリアエンドが特徴的であった。この処理はAMCグレムリン(1970年)なども思い起こさせるものではあったが、ホイールベースを長く採り、エンジンなどのスペースはできるだけ小さくして、室内空間を最大まで確保しているところが現代的である。こうしたパッケージングを、ホンダではMM思想(マンマキシマム・メカミニマム)に基づくものとしていた。

一方セダンはそれほど奇をてらった部分はないが、リアデッキを高くしてトランク容量を稼いでいたのが特筆される。またワゴン/バンであるシャトル/プロでは一変して背高スタイルを採用、これもまたスペース効率を考えてのものであるのは勿論で、このようにシリーズ全体で非常に合理的な設計がなされていたのが特徴である。

エンジンは当初はSOHCのみで、1.3Lと1.5Lのそれぞれシングルキャブ仕様、そして1.5Lの電子制御インジェクション仕様の3種を用意。セダンには1.3Lは搭載されなかった。サスペンションは、フロントはストラットだがスプリングをトーションバーとすることで、ノーズを低く抑えることに成功している。リアはトレーリングアームとビームアクスルによる車軸式で、それまでのストラットに比べると技術的には後退したような印象だが、これも車内スペースの確保とステアリング性能の向上に貢献していた。

DOHCエンジンを搭載したSiが発売されたのはデビュー翌年である1984年、11月のこと。このエンジンは1.6LのZC型で、電子制御インジェクションのPGM-FIと組み合わせられ最高出力135psを発揮した。25iの1.5L SOHCと比べて、35psも高出力となる。また、このエンジンのカムカバー避けのため、ボンネットにパワーバルジが設けられたのが、Siの外観上での特徴ともなった。Siについては、全日本ツーリングカー選手権(JTC)での活躍も印象深いが、これに関しては、JTC仕様の作例を採り上げた記事(下の「関連記事」参照)もご覧いただきたい。

Siの追加と時を同じくして、シャトルには4WDモデルが追加されている。これはパートタイム方式の四輪駆動で、エンジンは1.5Lのシングルキャブが組み合わせられていた。また、1985年3月には、セダンにもSiが加わった。ハッチバックとは異なり、こちらはパワーバルジを持たないが、これはセダンのノーズが元々ハッチバックより高く設計されていたためであろう。同年9月にはマイナーチェンジで細部の小変更を実施、1986年9月にはシャトル4WDの四輪駆動機構をフルタイム方式に変更し、1987年9月にフルモデルチェンジされている。

タミヤらしさ光る良作キット
三代目シビック/二代目バラードは、現在でもモデルカーの題材としては人気があり、新たなミニカーなどもリリースされているが、プラモデルではタミヤが1/24スケール・キット化しているのみである。シビックはSi追加より以前に製品化されたため、当初のトップグレードである25iを再現。ホイールも社外アルミとなるのが特徴である。後にレース仕様としてSiもキットとなったが、ボンネットのパワーバルジはボディとは別部品で、当該箇所に取り付け孔を開けて接着するようになっていた。

シビックとCR-Xのいずれも、エンジン再現は省略されたプロポーションモデルで、インテリアもバスタブ式となる。構成としてはそのように簡素化されていたのだが、シビックとCR-Xでシャシーを作り分けていたり、そのシャシーもエンジン部分の周囲が抜けた成型となっていたり(以降一般的となったが当時はまだ珍しい抜き方だった)と、タミヤらしい凝った部分が楽しませてくれる。ボディもイメージをよく捉えたもので、今の目で見ても遜色のない名作キットと言ってよいだろう。

作例制作=飯塚健一/フォト=服部佳洋 modelcars vol.280より再構成のうえ転載

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