ノーマルのままのGTの方が最近では珍重されるが……
国産旧車の中でも飛び抜けた人気を誇る1台と言えるのが、スカイラインGT-Rだろう。前者について、ここで指しているのはKPGC10、つまり、「ハコスカ」の愛称で親しまれる三代目スカイラインの、2ドア・ハードトップGT-Rのことだ。ハコスカGT-Rには、ほぼ同じ外観のスカイラインGTがあるために、GTをベースとしたR仕様というのも、多く見られる存在である。しかしそれについて述べる前に、三代目スカイラインについてすこし振り返っておこう。
【画像47枚】カリカリにチューンされたであろうR仕様とその制作工程を見る!
三代目スカイラインとなるC10型系は、1968年8月にデビューした。当初は直4 1.5Lエンジン搭載モデルのみ、4ドア・セダンとバン/エステートの2種類のボディという構成である。直6 2LエンジンのL20を搭載した2000GTが追加されたのは2ヶ月遅れてのことであった。GTは6気筒エンジンを搭載するため、フロントノーズが延長されている。そして翌1969年2月、DOHCエンジンのS20型を搭載した2000GT-Rを発売。S20は直列6気筒の2L DOHCにミクニ製ソレックス・キャブを3連装したもので、GT-Rはレース出場を主目的としたモデルであった。
1970年10月のマイナーチェンジでは、新たなボディとして2ドア・ハードトップを追加。4気筒モデルと6気筒モデルの、どちらにもこのボディは用意されたのだが、このときGT-Rはセダンを廃止しハードトップのみとなっている。ホイールベースが70mm短縮されていることにより、レースでの戦闘力も向上していたのである。前ストラット/後ろセミトレ(4気筒モデルはリーフリジッド)のサスペンションなどに変更はない。
この2ドアGT-Rの外観上最も大きな特徴は、後輪に太いタイヤを装着した場合に対応するためのオーバーフェンダーが装着されていたことである。さらに細かく見ると、専用のバッジ類はもちろん、簡略化されメッシュが貼られたフロントグリル、ガーニッシュなしのリアエンドが特徴だ。GTの方は逆に装飾が多く、サイドのレインモールやリア窓枠、フェンダーミラーがメッキとなり、エンジンフード先端中央にもクロームのモールが付き、サイドシルにもプロテクトモールが装着される。ガラスもGT-Rでは無色透明なのに対し、GTでは青ガラスである。なお、L型搭載のGTには1971年9月に、ツインキャブ装着の豪華版モデルとしてGT-Xが追加されている。
当然ながら2ドアGT-Rの武闘派なイメージは広く好まれ、GTやGT-XをベースにR用グリルや後輪オーバーフェンダーを装着するカスタマイズは、長らくハコスカのドレスアップ手法の定番であった(その反動で、近年ではフルノーマル状態を維持したGTが高く評価されるようになってきたようだ)。交換が容易ではないガラスは、本物とR仕様を識別するポイントとして知られている。R仕様とされた個体には、エンジンはL型ながら本気のチューニングを施されたものが多く、またフロントにもオーバーフェンダーを装着した車両も少なくない。
GT-XよりGTという想定で作るのがお手軽!
さて、ここでお目にかけている作品は、GT-Rを再現したプラモデルにL型エンジンのパーツを搭載し、R仕様のGTとしたものである。1/24スケールのハコスカ2ドアGT-Rは、タミヤ、フジミ、アオシマ(旧イマイ金型)の三者が現在入手しやすいところだが、エンジン搭載の容易さから、作例のベースにはタミヤをチョイスしている(タミヤのみエンジン再現キットであるため)。以下、作者・小田島氏のコメントをお読みいただこう。
「作例はノーマルのGT-Rではなく、カリカリのチューンを施したR仕様。巷の実車では本物のGT-RよりもよほどウヨウヨいるR仕様ですが、模型ではわざわざこれを再現する人もあまり居ないようなので、ちょっと新鮮かもしれませんね。さて、ハコスカの各グレードや装備についてはほとんど知らなかったので色々勉強しました。L型エンジンは様々な日産車に搭載されていたため、簡単に載せ換えができるイメージでしたが、実際にはオイルパンの形状やオイルレベルゲージの位置など、細部に違いがあるようです。
つまり、新車時にどの車種に搭載されていたかによって、微妙に違うのですね。これは初めて知りました。そのあたりも考慮しつつ、フジミのS30ZのL24をハコスカに載せてみました。イメージとしては、L28を載せてメカチューンを施した個体としています。L型搭載のハコスカにはGTとGT-Xがありますが、リアシートのパターンを変えずに済むこともあり、ただのGTをベースにした車両ということにいたしました。
前述の通り、こうした実車はあちこちに居りますので、読者の皆さんの中にもオーナーさんや、あるいは家族や友人知人がオーナーさんである方もいらっしゃるかもしれませんね。そうした実車を再現する際に、今回の作例がお役に立てば幸いです」