お…お前はいったい誰!?お馴染み感ゼロな1980年代サブコンパクトをMPC製プラモ「フォードEXP」で知る!【モデルカーズ】

全ての画像を見る

FFながらロングノーズの2シータークーペ

フォルクスワーゲンやルノーなどへの対抗として、1960年前後のアメリカの自動車メーカーは、フォード・ファルコンやシボレー・コルベア、プリマス・バリアントやスチュードベーカー・ラーク、ランブラー・アメリカンなどの、所謂コンパクトカーを送り出してきたが、1970年代に入ると、欧州製あるいは日本製小型車に本格的に応戦すべく、さらに小さめのボディサイズの車種を投入するようになる。いわゆる、サブコンパクトカーの登場である。

【画像22枚】正体不明感の強いフォードEXPのディテールをあれこれ見てみる!

フォードのピントや、GMのシボレー・ベガなどが、そうしたサブコンパクトの代表例であり、独立系メーカーとしてまだ健在であったAMCも、同様なモデルとしてグレムリンを投入している。一方、クライスラーはまだ自社製のサブコンパクトを用意せず、ヒルマンや三菱の車種を販売網に乗せることで対応していた。また、GMがベガよりさらに小さなサイズの”スモールカー”としてデビューさせたシェベットは、GM傘下オペルのカデットCをアメリカ向けに仕立て直したもの(GMワールドカー構想の一環)であった。これら1970年代の車種の大半は、いかにもアメリカ車らしいクセの強いスタイリングが特徴だったが、1980年代に入るとそれらは直線基調のものへと変化、国籍不明感を強めていく。

フォード・ピント(1970年デビュー)の後継車として、1981年型で登場したフォード・エスコートなどはその好例と言えるが、そのエスコートをベースにしたスポーティな2ドア・クーペとして生まれたのがEXPである。エスコートはフォード初のFF車であったが、むろんEXPもFF方式を踏襲。なお、エスコートのマーキュリー版としてマーキュリー・リンクスがあり、それをベースとしたクーペ(つまりEXPのマーキュリー版)としてマーキュリー・リンクスも存在した。

1981年4月に1982年型として発売されたフォードEXPは、エスコートが欧州版と似た印象の外観であるのと異なり、微かにアメリカ的な味わいを感じさせるルックスの持ち主となっている。機構面ではエスコートと変わりなくホイールベース94.2インチ(2393mm)、前後ともストラット式サスペンションのシャシーに、1.6L 4気筒SOHCエンジンを搭載。前述のマーキュリーLN7とはその大部分が共通であるが、平面的なリアウィンドウのEXPに対し、LN7のリアグラスは大きくラウンドした形状(バブルバックと呼ばれた)となっている。

マーキュリーLN7は1983年型で生産終了し、このリアウィンドウの形状はEXPに受け継がれた。この変更のあった1984年型ではターボも追加されている。1986年型ではフロント周りの形状がエスコートとほぼ同じ、常識的なデザイン(かすかにスラントしたボクシーな形状)になり、排気量は1.9Lにアップした(90hpと106hpの2仕様があり)が、1988年型を最後に生産終了となっている。なお、このEXPの後継車が、日本でも馴染みの深い(?)フォード・プローブである。

基本は悪くないキットなので細部の完成度を詰めてみた
フォードEXPのプラモデルは、MPCから1/25スケールで、1982年型(No.0818)と1983年型(No.0835)が出ていた。現在ではどちらも絶版キットだが、ここでご覧いただいているのは、1982年型のキットを制作したものである。キットはMPCの標準的な内容で、オプションとしてエアロパーツが付き、ホイールが2種付属している。全体的に少しダルい印象のパーツで、小さなバリも多い。若干プラスチックが脆い感じがするので、取り扱いに注意が必要だ。

ボディはこのプアーな印象の実車をよく捉えている。問題は、リアピラーの格子状のモールドが甘いことくらいだろう。一部消えかかっている所もあるので、対処が必要であった。作例ではモールドを削り取り、Pカッターで格子状のパターンを彫って、この溝に0.3mmのプラ板の細切りを植え込んでから、高さが0.3mm程度になるように整えている。

前後バランスパネルは塗装前に接着しているが、前部パネルのターンシグナルの所に隙間があったので、プラ板で塞いでいる。フロントバンパーの上のスリット部分は、ドリルとデザインナイフで開口した。ボンネットは前端部分が荒れていてチリも合っていなかったので、四辺をヤスリで整え、プラ板を接着しチリ合わせを行っている。テールライト周りはキットのままだとナンバーポケットの所までライトがあるのだが、実車カタログ等で確認すると、ここにバックライトがあるようだ。作例では、ライトを切り詰めバックライト部分をプラ板とジャンクパーツより制作している。モールドされたプレートも大きめだったので削り取った。

ボディサイドのモールディングはキットでは再現されていないが、カタログを見ると標準装備となっているので、0.3mmプラ板で自作した。塗装後に貼り付けているが、もう少し薄い方が良かったかもしれない。インテリアは少し深さが足りないような感じであるが、特に直す必要も無く簡単に出来上がる。エンジン、シャシーも特に問題となる所は無いが、全体的に華奢なので取り扱いには注意が必要だ。

ボディカラーはコード3Kの「PASTEL BLUE」とした。クレオスのMr.カラーGX1クールホワイトとC65インディブルーに、GX2ウイノーブラックを微量混ぜている。インテリアはブラックトリムとしたので、C33とC92の2種類のブラックを用いている。レギュレータもこのクルマでは黒となる。

作例制作=周東光広/フォト=羽田 洋 modelcars vol.194より再構成のうえ転載

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!