ディテールがスペシャル性を際立たせるプロトタイプ
1967年に発売されたトヨタ2000GTは、我が国初の本格的なGTカーだ。ロングノーズ・ショートデッキのボディの内側には、ロータス・エランもかくやと思われるバックボーンフレーム・シャシーがあり、サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン、ブレーキは前後ともディスクと、その内容はまさに当時最新のスポーツカーのものであった。
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搭載されるエンジンは、車名の通り2L(排気量1988cc)のDOHC、3M型。これはクラウンに搭載されていた6気筒SOHCのM型をベースにヘッド周りをツインカムへと改めたユニットであった。ソレックス製キャブレターを3連装し、最高出力150ps、最大トルク18.0kg-mを発揮。これにより、重さ1.1トン少々のボディを最高速度215km/hで走らせた。このエンジンの設計にあたっては、開発協力にあたったヤマハによる部分が非常に大きかったともいう。
もうひとつ、ヤマハの協力ならではのものがゴージャスなインテリアだ。ウォールナット(後期型ではローズウッド)を使用した本木目のダッシュボード/ステアリングには、同社が楽器の製造で培ったノウハウが活かされていた。2000GTは、1967年5月に発売され、1969年8月のマイナーチェンジを経て1970年まで販売されたが、非常にコストのかかる車両であったため、何台売れても赤字であったと言われている。
2000GTは市販に先立ち東京モーターショーで発表されたが、これは発売前年ではなく前々年にあたる1965年のこと。ここで出展された車両については、長らく「試作1号車である」とされてきたが、実は試作2号車であるという。試作1号車は1965年8月に完成し、組み立てを行ったヤマハからトヨタへ納品された。その後、翌年の日本グランプリ出場に向けたテスト走行を行っていたのだが、その際に事故を起こし炎上。しかし修復され、1966年10月のスピードトライアルに使用されている。
とは言え、この2台の特徴(市販バージョンと比較して)はおおむね共通している。ボディ形状においてひと目で分かるのは、フロントフェンダーの盛り上がりが高く、ボディラインにあまり溶け込んでいないところだ。ホイールがワイヤースポークタイプであるのも、試作車ならではのエレガントな特徴。現在残されている写真のうち、テストコースで撮影された白黒写真が、おそらく試作1号車を写したものと思われる。
意外なことに、あのキットが試作車に近いかも……?
当時も今も、国産車の中では圧倒的な人気を誇るトヨタ2000GTだけに、プラモデル化は数多い。しかし1/24スケールに限れば、前期型についてはハセガワが、後期型は最近リリースされたばかりのアオシマが、それぞれ決定版であると言ってもよいだろう。ここでお目にかけているのは、ハセガワの前期型キットをベースに、モーターショーに出展された試作2号車を再現したものである。以下、作者・吉田氏の解説をお読みいただこう。
「各部に改造を施して試作車特有の部分を再現していく訳だが、一見、量産型とはさほど変わらない印象を受けるものの、相違箇所は意外と多い。比較的判りやすいのはリトラクタブル・ヘッドライトのカバーの形状で、量産型の三角形のオムスビ形状に対し、この試作車ではU字型になっている。そのほか、ドアノブやワイパー、インパネやホイール等が異なる。
それらのような判りやすい部分に関しては改造もメドが立ち易いのだが、注意深く観察しないと解らない程度の微妙な違いに関しては、その差異を掴むのに時間を要し、少々苦労してしまった。例えば、フロントフェンダー頂上部が、ボディの見切り性を考慮してか市販車よりも高かったり、フロントグリルやテールランプ枠、エアスリット、リヤエンドパネルなどの形状等が、まったく違う形状だったりする。
ハセガワの2000GTはプロポーションも部品の合いも非常に良好であり、数ある2000GTのキットの中では間違いなくベストキットであろう。しかし、今回制作してみて解ったのだが、試作車はニチモのトヨタ2000GTに似ている。ひょっとしてニチモの2000GTは、試作車をイメージしてモデル化されたのでは? と思えるほどだ。ゆえに、試作車を再現する際には ニチモのトヨタ2000GTをベースにした方が早いかもしれない」