ボディの薄さ感から細部まで徹底改修
1980年代のホンダが放った名車、二代目プレリュード。これをフルディテールモデルとして再現したタミヤの名作キットをベースに、DOHCエンジン搭載のSiへと改修した作品については、前編の記事(下の関連記事参照)ですでにご紹介した。ここではさらにその詳細をお伝えするので、以下、作者・飯塚氏による解説をお読みいただきたい。
【画像43枚】見逃しなくSi化されたプレリュードとその制作工程を見る!
「日本のスペシャリティーカーの代名詞でもあるホンダ・プレリュード。1978年登場の初代から2代目にモデルチェンジしたのが1982年、大幅にアップデートされたその低く優美なデザインは、当時としては抜群に垢抜けて見えたものだった。当初はSOHC 1800ccのみだったエンジンも、1985年のマイナーチェンジで待望のDOHC 2000ccが与えられ、エレガントさにスポーティな実力も加わったことで、このクルマは一層魅力的なものへと進化した。
当時、タミヤからは前期型XXがキット化されており、エンジンから脚周りまで精巧に再現されたその内容は、今から30年以上前の製品とは思えないほど濃密であった。作例ではそのキットを改造し、後期型トップグレードの2.0Siを制作した。ボディ全体のプロポーションは当然ながら前期型XXと大差ないが、逆に細部の意匠がXXとはだいぶ異なり、フロントおよびリアバンパー、フロントグリル周り、テールレンズ/リアガーニッシュ、ボンネット等の形状変更と言った、目立たず地味な作業の積み重ねが必要となる。
特に、この時代のクルマはエッジの利いたデザインが主流であるため、改造箇所がダルくなると全体のバランスを壊す。面出し作業などでは、意図的にエッジを立て気味に造形するよう留意した。さらに、このキットの美点であり、また逆にある種の欠点でもある『実物より薄く見える』というプロポーションであるが、どうやらボディ下部(サイドモールより下)の絞り込みを強めたデフォルメによるものと気づいた。
そもそも模型とは、斜め上から見ることが多いものだ。すると絞り込み過ぎたボディ下半分は隠れてしまい、ドアの上半分しか視界に入らず、その結果『ボディの厚みが薄い』という印象を持たれてしまうのであろう。今回はサイドモール下端に深くスジボリを入れてプラを薄くしたのち、ボディ下半分を外側に向けて広げ、斜め上からも見える部分を増やすことで、そうした印象をいくらか緩和させることができたと思う。
ヘッドカバー他も自作でエンジンルームまでSiに!
次にエンジンだが、キットの部品を使ってDOHC(B20A)を再現した。新造箇所はヘッドカバーのみにとどまらず、インテークパイプからサージタンク、インマニにまで及んだが、プラ板やランナーの切れ端を熱して曲げたりして、それらしく作り込んでいった。模型界においてもトヨタや日産のエンジンは人気があるが、ホンダのエンジンはあまり模型化されないので、根っからのホンダファンである筆者の密かなこだわりである(笑)。
また、ファクトリーストック仕様での制作における難関は、純正ホイールの再現であろう。今回は、純正オプションのホイールを他キットのパーツからの加工で再現した。さらに、オプション設定であったリアスポイラーも自作し、ボディカラーはSi専用色のクレモナオリーブで塗装している。元々ブロンズカラーに着色されているクリアーパーツ類と相まって、バブル前夜の、ホンダが最も輝いていた頃の確信犯的なカッコよさが、伝わってくるだろうか」