ラグジュアリー系フェラーリかと思いきや「フェラーリ・ローマ」は硬派なピュアFRスーパースポーツだった!【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

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わかりやすく例えるならば“812スーパーファストJr.”

着々とラインアップの拡大を進めるフェラーリ。先ごろ公開された初の4ドア4シーターのプロサングエもさることながら、V8エンジンをフロントに搭載する2+2のポルトフィーノに加え、ローマまで揃えるとは今のフェラーリはひと昔前と違い、かなり欲張りになったものだと思う。V12を積む2+2のルッソに8気筒モデルが加わった時にも同じような印象をもったが、まさかその後も続くとは想像もしていなかった。

フロントはボリュームのあるフェンダーラインとアダプティブマトリックスLEDヘッドライトが特徴だ。

今回、ここで取り上げるのは、その「ローマ」。V型8気筒ツインターボを前方に搭載するFRの2+2クーペである。2008年に発表されたカリフォルニアの流れを汲むポルトフィーノがポルトフィーノMへと進化したことでもわかるように、ローマとポルトフィーノMは事実上の姉妹車と言って差し支えない。筆者としては、この2車の違いに深い興味を抱いていた。クーペも兼ねるリトラクタブルハードトップを与えられたポルトフィーノがあるのに、何故ローマをラインアップに加えたのか? と。 そんな繊細に考えるカスタマーがこのクラスに居るのだろうか、と疑問が湧くばかり。こういった欲張りモードになった時のメーカーのプレゼンは信用しない筆者としては、その狙いの真相を知りたいばかりだ。

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シャープなコンビネーションランプが他モデルと差別化が図られているリアビュー。なだらかに収束するルーフラインにせり上がったフェンダーなど、”流麗”という表現がしっくりくる美しい。

まず、デザイン。フェラーリ曰く、1960年代のグランドツーリング・フェラーリから着想を得たと言うが、確かにクラシカルでグラマラス。それでいて新鮮さも覚える。ポルトフィーノMとの差をつけようと意図的にそうした可能性もあるが、個人的にはこちらのほうが好感をもてるし、ヘッドライト周りやリアのテールランプも控えめで、全体的に他に類を見ないデザインアプローチで惹かれるものがある。

フェラーリ最新のインフォテイメントシステムが備わるコクピットは、センターコンソールで運転席と助手席をを隔てるデュアルコクピットのコンセプトを進化させたデザインで、新たに8.4インチの縦型ディスプレイが採用されている。

一方、コクピットも含めたインテリアは対照的だ。ポルトフィーノMの操作系がそれまでの流れを汲むのに対し、ローマはタッチ式を多用した新世代のデジタル式を採用、SF90などと共通するインターフェイスが揃う(個人的にはスポーツモデルの場合、物理スイッチが望ましいと思ってはいるが)。センターコンソールに設けられた8.4インチのタッチスクリーンパネルも大きく見やすく、大胆に左右が仕切られたデザインも新しいフェラーリらしさ感じさせて、エクステリアとは真逆のアプローチでかえってユニークだと思う。

メーターは16インチの高解像度ディスプレイを採用。ステアリングには静電式タッチパッドとスイッチを装備するなど、物理的操作が軽減されている。センターディスプレイは、オーディオやシートなどの設定が可能で、往年のシフトゲートを模したセレクターも配置されている。

では、実際の走りはどうだろうか? ポルトフィーノMとの違いはあるのかが気になる。何故なら、フロントに積まれる3.9L V型8気筒ツインターボエンジンは、最高出力620ps、最大トルク760Nmと両車はまったく同じスペックをもつからだ。さすがにクーペとオープンモデルの差で、乾燥重量で73kgほどローマのほうが軽いとはいえ、せめてスペックくらいはある程度の差をもってキャラクターの差を見せてほしかったというのが本音。

フロントミッドに搭載される3.9L V8ツインターボエンジンは、最高出力620ps、最大トルク760Nmを発生。新開発の8速DCTを組み合わせ、0→100km/h加速は3.4秒をマークする。

しかし、マネッティーノをスポーツモードに入れて軽く攻め始めると、ポルトフィーノMとの差が明確になった。特にローマのハンドリングはクイック極まりなく、まさにFRスポーツらしさが際立つ。当初はそのコンセプトからしてイメージ的にもGT(グランドツアラー)を意識したモデルかと思っていたが、かなり刺激に溢れた走りを見せる。本来なら同じ環境で同日にポルトフィーノMと比較したかったが、記憶と印象から連想すると、ローマは意図的にもスポーツ性能を強調していると思われる。

新たに5ポジションとされたマネッティーノにより、様々なドライビングスタイルや路面状況にも対応しつつ、快適なドライブを提供してくれる。

トラクション性能もわずかながら異なるようで、車重や前後重量配分の差なのだろう、コーナーからの立ち上がりは素早く、コントロール性に優れている気がする。“気がする”というのは、試乗当日がウェット路面で正解には断言できないからだが、そのぶん滑りやすく、挙動が分かりやすいということもあって、その一面を垣間見ることができた。

タイヤはフロント245/35ZR20、リア285/35R20のミシュラン・パイロットスポーツ4Sが装着される。

エンジンのレスポンスは凄まじく、ターボによる効果もあるから全域に渡ってトルクフル。レッドゾーンまで気持ちよく一気に吹け上がる。フェラーリもターボエンジンにだいぶ慣れてきたのか、ネガティブな印象は一切ない。自然吸気エンジンほどではないものの、胸がすくようなフィーリングをもつのはフェラーリらしく魅力的だ。

トランク容量は272Lで、リアシートを倒すと345Lに拡大可能(オプション)。

乗り心地は十分に快適と言える範囲だが、ポルトフィーノMよりは若干ながら硬い印象を受けた。しかし、それよりも車両安定性の高さが際立った。後に調べたところ、ポルトフィーノ比でダウンフォースは250km/h時で95kg増加しているというからさすがだ。リアウインドウの最後方にデザインを崩さずに位置するリアスポイラーに加えて、フロントのアンダーボディにはボルテックスジェネレーターによって流速を高めるなど、そのアプローチも最新かつフェラーリならでは。超高速域ではさらなる効果が期待できるのは間違いないだろう。

FRのフェラーリといえば、他にルッソなども現在はラインアップされているが、筆者が思うにローマを分かりやすく例えると、“812スーパーファストJr.”といった印象。高いスポーツ性を望む向きにとってはミッドシップレイアウトを採るF8トリブートや296GTBのほうが好まれるかもしれないが、大胆かつ刺激的な味わいと、自らが操るというある種の快感が得られるという面においてはローマのほうに軍配が上がる。ポルトフィーノMよりも硬派なピュアFRスーパースポーツだと思う。

【Specification】FERRARI ROMA/フェラーリ・ローマ
■車両本体価格=27,560,000円(税込)
■全長×全幅×全高=4656×1971×1301mm
■ホイールベース=2670mm
■トレッド=前1652、後1679mm
■車両重量=1472kg
■エンジン種類=V8DOHC32V+ターボ
■内径×行程=86.5×82.0mm
■総排気量=3855cc
■圧縮比=9.5
■最高出力=620ps(456kW)/5750~7500rpm
■最大トルク=760Nm(35.7kg-m)/3000-5750rpm
■燃料タンク容量=80L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前245/35ZR208(8J)、後285/35ZR20(10J)

公式サイト https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-roma

フォト=篠原晃一/K.Shinohara

この記事を書いた人

野口優

1967年生まれ。東京都出身。小学生の頃に経験した70年代のスーパーカーブームをきっかけにクルマが好きになり、いつかは自動車雑誌に携わりたいと想い、1993年に輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。経験を重ねて1999年には三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務。2008年から同誌の編集長に就任し、2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。フリーランスとしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動している。

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野口優
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2022/12/09 06:30

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