マスタングの「中の人」とは俺のことだ!AMT製プラモで「1960年型フォード・ファルコン」を知る!【モデルカーズ】

全ての画像を見る

フォードらしいオーソドックスな造りのコンパクト

大きなクルマばかりと思われがちな(近年はそうでもないかもしれないが)アメリカでも、必要最低限の大きさしか持たない経済的な自動車は常に必要とされており、消費者のそうした要望に応えてきたのは、カイザーやナッシュといった、ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)以外のメーカーであった。

【画像13枚】見事に仕上がったファルコンのディテールとそのサイズ感を見る!

戦後のアメリカにはフォルクスワーゲンやルノー、あるいはフィアットなどのヨーロッパ製小型車も少なからぬ台数が輸入され、1950年代半ばには、無視できない規模の市場を形成していた。こうした状況を踏まえて、ビッグスリーは1960年、申し合わせたようにコンパクトカーをデビューさせたのである。リアエンジンでフラットなスタイルのシボレー・コルベア(GM)、室内スペースを優先した独特なデザインのバリアント(クライスラー)に対し、フォードのファルコンは、フルサイズをそのまま縮小したようなオーソドックスな造りとなっていた。

ホイールベースは、同年フォードのフルサイズが119インチ(3023mm)であるのに対し、109.5インチ(2781mm)。全長は181.2インチ(4602mm)で、これだけ見れば日本の5ナンバー・サイズに収まる(さすがに幅は少々広い)。スタイリングには、フルサイズと共通するU字型を横にしたような側面形が採用されたが、テールフィンはなくヘッドライトもシングルで、シンプルなものとなっている。ボディはフレームシャシーのフルサイズとは異なり、ユニボディ形式を採用。

搭載エンジンは直列6気筒144-cid(2.3L)で最高出力90hp、シャシーは前ウィッシュボーンと後リーフリジッドのサスペンションを具える。グレードは単一(オプションでデラックス・パッケージがあった)で、ボディ形式は2ドアと4ドアのセダン、2ドアと4ドアのワゴン、ピックアップ(ランチェロのネーミングが与えられていた)があり、ワゴンはオーバーハングが延長された分8インチ(200mm)全長が長くなっている。

T型あるいはA型フォードの再来と評され、セールス面では大変な成功を収めたファルコンだが、シンプルな自動車が年々複雑なものになっていくのは世の常で、1961年型では170-cid(2.8L)、101hpのエンジンが加わっている。ベースの144エンジンは出力を85hpに改め燃費を向上、さらにコルベア・モンツァへの対抗策として、バケットシート装備のファルコン・フューチュラを設定。1962年型ではフロント周りを若干スクエアな形状に変更し、シーズン途中でフューチュラにリアピラーの太い専用キャビンを与えている。1963年型では新たなボディ形式としてコンバーチブルが加わった。

1964年型ではボディ下半分をさらに角ばった形に変更。またこの年はシーズン半ばで、このファルコンのシャシーをベースとした新型車、マスタングが登場していることも記憶しておきたい。元祖スペシャリティカーであるマスタングも、ファルコンがあってこそ生まれたモデルなのである。こののち1966年型ではフルチェンジでボディサイズを拡大、1970年型ではインターミディエイトに属するフェアレーン/トリノの最廉価モデルとなり、この年式を最後に、ファルコンの名はアメリカ本国のモデルとしては消えてしまった。

1961年型キットをベースに、パーツ交換などで年式を変更
さて、さすがに自動車立国アメリカというべきか、ファルコンをはじめとする1960年代コンパクトカーもちゃんとプラモデル化されている。とは言えこれは、例によってプロモーショナルモデル(営業用ツールとしての模型)をキットにしたもので、当時のアニュアルキットとして特別なものではない。重要な戦略モデルであるコンパクトカーにプロモが用意されていたのは当然のことであろう。

そのプラモデルであるが、ファルコンは1960年にAMT/SMPから、1/25スケールの「COMPACT CAR CUSTOM KIT」シリーズの一作として登場。このシリーズにはコルベアおよびバリアントも含まれていた。翌年には金型改修で1961年型に改められるとともに、ランチェロ、マーキュリー・コメット、ポンティアック・テンペストが追加されている。

ここでお目にかけているのはこのAMT製プラモデルを制作した1960年型ファルコンだが、使用したのは1961年型のキットだ。主な改修箇所はサイドモールの除去とエンブレムの変更、そしてフロントグリルをレジン製の複製パーツ(モデルハウス製)に変更したこと。一見簡単そうな改修に思えるが、さすがに古いキットだけあって、ワンピースボディの型ズレや成型不良が見られ、年式の変更よりも基本となるボディの修正に多くの時間を費やした。特にA、Cピラーの付け根やトランクリッドの段差を消すには全体のフォルムに合わせる必要がある。

また、ルーフ左右のレインドロップモールには、プラ素材の劣化によると思われる欠けが生じており、プラ材やパテで再生することになった。キットのテールランプは全く違う形をしていたので、自作している。シャシーや足周りは特に手を加えなくても問題はない。ただし、ルームミラーのみ流用パーツに変更。バスタブ状のインテリアも、床の部分にある突き出しピンの跡を修正するにとどめておいた。

ボディカラーは当時の純正色から「Belmont Blue」(1225)と「Corinthian White」(1238)によるツートンを再現。ブルーはクレオスのC65インディブルーとC322フタロシアニンブルーを混ぜたものにC8シルバーを加えた。ホワイトはC1ホワイト、C69グランプリホワイト、C316ホワイトFS17875から調合。この2色で塗り分けたのち、スーパークリア―Ⅱでコート、研ぎ出しを施している。

作例制作=周東光広/フォト=羽田 洋 modelcars vol.116より再構成のうえ転載

関連中古車物件情報

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!