M2らしいキャラクターは初代モデルよりも濃密!?
今年で創立50周年を迎えたBMW M社にとって、まさにそのクライマックスといえるのが、第2世代となる新しいM2を世に送り出すことではなかっただろうか。’73年の2002ターボ以来、2ドアクーペ、後輪駆動、直列6気筒エンジンと、BMW伝統となるコンパクトスポーツのDNAを受け継ぐ最新M2。BMWファナティックならずとも、もう、血が騒ぐ!
ストレート6を搭載した、後輪駆動のコンパクト2ドアクーペ。これがアルティメイト・ドライブを叶えるスポーツモデルの最後の姿なのか? こうした言葉は数年前から飛び交ってきたが、それも仕方はあるまい。FRの2ドアコンパクトクーペは、もはや絶滅危惧種のような存在だったからだ。
2011年に登場したM2はそれでも進化し続け、初代のピークパワーは340ps、’15年には370ps、そして’18年にはコンペティションで410psにまでアップ。さらに限定の最終バージョン、M2CSは450psに到達した。
そして今回、逆境に反旗を翻し世代交代を遂げた新しいM2(G87)は、最新の3L直6ツインターボ、M専用のS58ユニットを搭載。最高出力は460ps/6,250rpm、最大トルクは550Nm/2,650-5,870rpmで、高回転域で官能的なサウンドを発することは実証済みだ。
駆動方式はFRのみで、M3/M4とは異なり、4WDは存在しない。トランスミッションは標準がZF製の8速AT、オプションで6速MTも用意され、前者を介しての0↓100km/h加速は4.1秒(後者は4.3秒)、最高速度は250km/hに制限されるものの、オプションで285km/hまで引き上げることも可能だ。
【写真12枚】よりシャープでスポーティなハンドリングを発揮する新型M2。
やや小柄ながら均整の取れたアスリートを思わせるエクステリアは、従来モデル以上にM2のスポーティなキャラクターを表現。水平グリッドを持つキドニーグリルもサイズは控えめで、個人的にはM3/M4よりも好ましく思える。
スリーサイズは全長4,580mm、全幅1,887mm、全高1,403mmと、従来モデルに対してわずかに大きく成長。ホイールベースも2,747mmに延ばされ、高速域でのより優れたスタビリティ確保に貢献してくれるはずだ。一方、1,725kgに増加した車両重量は必然で、CLARアーキテクチャーにオーバーサイズ&ビッグパワーのストレート6を搭載するべく、一層の剛性確保が必要になったからだ。ちなみに、前後重量配分はBMWの定石通り50:50となる。
シャシーはスポーティな走りを主眼に開発されたが、同時に従来モデルよりも十分な快適性が期待できる。前後サスペンションはM専用チューンの可変ダンパーが標準装備で、リア・アクティブMディファレンシャルのロッキングファクターは100%。 そのリアアクスルはサイズも形状もほぼM3/M4からのコンバートで、適正にレイアウトするべくボディ剛性は標準の2シリーズクーペに対して大幅に引き上げられている。
ホイールはフロントが19インチ、リアが20インチと、M3/M4のエントリーモデルより大きなサイズが採用されているが、それは新型M2がよりシャープでスポーティなハンドリングを発揮することを象徴している。ドリフトモードを含むMトラクションコントロールは10段階に調整可能だ。
ドイツ本国での価格は19%の付加価値税込みで7万2,800ユーロ(約1060万円)と、M3より1万3,000ユーロ安価で、BMW内の序列では妥当な設定といえる。しかし、日本市場を考えると、4ドアのメルセデスAMGやアウディRSと競合するにはやや高めか? 果たして、円安にもめげずBMWジャパンが思いきった価格設定をしてくるのかどうか。2023年4月の発売開始が楽しみだ。
リポート=キムラ・オフィス フォト=BMW M GmbH report : Kimura Office photo : BMW M GmbH