パトロールからサファリへ、華麗なる変身
1980年代は、日本におけるSUV(Sport Utility Vehicle)の創生期であったと言うことができるだろう。それ以前のオフロード車は、機能性や耐久性を重視した実用一点張りなモデルが多く、レジャー用の乗り物として使うには、あまり一般的ではなかった。1970年代後半からのレジャーブームの高まりを受けて、トラックやバンの枠に留まらない四輪駆動車が開発され、それらが1980年代前半に続々と登場したのである。日産のサファリは、そうした車種の代表例と言えるだろう。
【画像39枚】『西部警察』の面影もないグランロードと、その制作工程を見る!
初代サファリ(160型系)のデビューは1980年6月のこと、それまでの日産パトロールの後継車として送り出されたものであった。国外ではパトロールの名を使い続けたのだが、ここでは国内モデルに絞り、また消防車仕様などは除外して述べていこう。それまでのパトロールが、あくまでジープタイプの軍用車から発展したもの(スタイリング的にはランドローバーをイメージさせる)であったのに対し、この新型車サファリは、レジャーユースを想定した「多目的乗貨両用車」、新しいタイプの4輪駆動車として開発されたものである。ただし、乗用登録となる仕様は最後まで設定されなかった。
パトロールのボディは3種類あり、小型車枠いっぱいのボディサイズである4ドアのバン、それよりホイールベースが60mm以上短いショートボディ・2ドアのハードトップ、そしてそのハイルーフ・タイプが存在。それぞれにDXとADの2種類のグレードが設定され、合計6種が用意されていた。ADの方がパワステを装備するなど、豪華版となる。エンジンは直6OHV 3.25LディーゼルのSD33型1種のみで、最高出力は95㎰。
2年後の1982年8月にはマイナーチェンジを実施、オートロックフリーランニングハブとハロゲンヘッドランプおよびヘッドランプウォッシャーの採用、室内のフルトリム化など(ADのみ)が行われている。またこのとき、バンの名称はエクストラバンに変更されたようだ。さらにハードトップ標準ルーフには、前向きリアシート付ADと、AD背面スペアタイヤ車を新設定。後者には電動ウインチと機械式ウインチ、大型牽引フックがオプションで用意されていた。
さらなるマイナーチェンジを行い、グリルのメッキ化と角型2灯ライトの採用でガラリとイメージチェンジしたのは、1983年9月のことである。この角型ランプはADのみの装備で、ヘッドランプワイパーも国産四駆として初めて採用された。機構面では、120㎰にパワーアップしたSD33Tディーゼルターボ搭載車も設定され、ミッションを5速化。AD車はリアサスペンションがソフトなものに改められている(ハードトップ・ハイルーフ除く)。エクストラバンにはハイルーフを追加(ADとターボADのみ)、そのルーフ先端にはブロンズガラス窓の”スタールーフ”が装着されていたのも特徴で、ハイルーフターボADには電動式サンルーフまで装備されていた。
1985年10月のマイナーチェンジでは、それまでグレーの部分が残っていたフロントグリルをオールメッキ化し、大型メッキドアミラーを採用するなど、外観をさらに派手に装うこととなった。AD系はサスペンションシートやヒーターシート(オプション)、傾斜計、高度計を装備し、より豪華に。またこのとき、アウトドア志向の高まりにあわせた「本格的オフロード4WD」として、グランロードと呼ばれるモデルをエクストラバン・ハイルーフに設定している。これは31×10.5R15のワイドタイヤとオーバーフェンダーを装備していたため、登録は1ナンバー。加えて、大型サイドステップや機械式ウインチなども備えていた。
そして、1986年11月には全車にフロント合わせガラスを採用するなどの一部改良を行った後、1987年11月のモデルチェンジでY60型系へ移行している。エンジンやサスペンションなどは新開発だが、ボディパネルをよく見ると分かるように、その大部分は160型系からのキャリーオーバーであった。この二代目サファリは1997年まで生産されている。
窓は切り開き、グリルはプラ板で作り、ホイールは『マッドマックス』の……
さて、ここでお目にかけているのは、1985年に追加された豪華モデル、グランロードを1/24スケールで再現したプラモデル完成品である。ただし、グランロードをそのまま作れるプラモデルというのは存在しない。初代サファリと言えばあまりにもポピュラーなプラモデル、アオシマ製『西部警察』サファリ4WDをベースに、ノーマル化とハイルーフ化を行ったのがこの作例なのである。
『西部警察』のサファリはルーフが途中からハイルーフとなり、その天井はスライド式となっているのが特徴で、さらに車内にはコンピュータや放水銃の配管、各種ギミックが装着されている。アオシマ製プラモデルではそれらが逐一再現されており、「ノーマル状態にも組めます」などということにはなっていない。車体後半のウィンドウも潰されているのだが、作例はそれらをひとつひとつノーマル状態に戻し、ゴージャスなグランロードとして仕立てた。それらの工作については、製作途中の写真に付したキャプションをご参照頂きたい。