50年前のクルマが今なお未来的に見える…!! エブロ製プラモで「シトロエンDS21」を味わいつくす【モデルカーズ】

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ステア連動ライトが特徴の後期型”猫目”

シトロエンが誇る歴史的名車・DSは、1955年に、それまでのトラクシオン・アヴァンの後継的モデルという位置づけの元、DS19として登場した。今なお斬新なルックスのボディの内側には革新的・未来的な要素が目白押しで、それはまさに、自動車の世界におけるひとつの革命だったのである。

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その最大の特徴はやはり、サスペンションからブレーキ、ミッション(セミオートマチック)、パワステまでを油圧でコントロールするハイドロニューマチック・システムであろう。1.9Lのエンジンと、それを縦置きにしたFF機構はキャリーオーバーであったが、特に油圧によるサスペンションの乗り心地は快適極まりないものとして評判となったのである。ラジエターグリルを持たず、尖ったノーズからリアエンドまで流線型で構築された、今見てもなお革新的なスタイルのボディには、FRPやアルミといった(その頃の)新素材が多用されていた。

DSは1955年から1975年まで、およそ20年間の長きにわたり生産されたが、その生涯は1967年のマイナーチェンジを境に、大きく前期型と後期型に分けられる。後期型の最も顕著な識別点であるガラスカバー付き4灯式ヘッドライトは、機械式可動機構を内蔵しており、外側2灯はリアサスペンションに連動して光軸の水平を維持、内側2灯はステアリングに連動して旋回方向を照らすという、ユニークなものだった。

当初のパワーユニットは75psの1.9L OHV 4気筒だったが、1965年秋には新開発の2.1Lに換装され(DS21)、1968年には2L(DS20)が、1972年には2.3L(DS23)が追加された。1975年には2.3Lがインジェクション化されて130psに達し、オートルートの覇者たる動力性能を得るに至っている。ハイドロニューマティック・システムのみならず、直進時に一本スポークが斜めになるステアリングホイールや、ボタン式ブレーキペダルなど、操作系にも特異性が見られるDSだが、ダッシュボードのデザインは1970年代に入ると格段にモダナイズされ、若干ながら「普通のクルマ」に近づいたのである。

独特のパーツ構成には、相応しい塗装・組み立て方法で対応!
DSのプラモデルは、長らくエレールの1/16と1/43のみで、1/24スケールでのキット化が期待され続けてきたが、その声に応えたのは我が国のエブロであった。まずDS19が2015年に発売され、次にDS21が2019年に送り出されている。エブロのDS21は1972年頃のパラス(豪華版モデル)を再現したもので、品名は「DS21」だがDS23としても制作可能。パーツは旧来のDS19のものを一部流用しているが、前期型と後期型ではプロポーションは不変ながらディテールは大幅に変更されているため、内外装やエンジンの補器類、排気系などが新たに作り直されており、DS19とはほぼ別個のキットになっている。

的確な設計と合わせ精度の高さから、部品点数の割に作りにくさはさほど無いキットだが、エンジン再現に伴い開閉するフロントフードに加えて、左右前ドアも開閉し、ルーフも別体であるため、パネルごとの色味がズレないよう、塗装の手順を工夫することが必要だ。また、実車同様に先端が内側に沈み込んで開くドアをスムーズに開閉させ、かつプロポーションに破綻が生じないようピタリと閉じさせることも、制作上のキモとなる。作例では、ネオジム磁石を利用して確実に閉じられるように細工してみた。

ヘッドライトの内側2灯は、ステアリング連動とまでいかないものの、ライトポッドの首振り機構が再現されている。可動域は非常に小さく、左右を連動させるタイロッドの剛性も不足しているようで、いまひとつスムーズに動かない。またサスペンションも一応、油圧で保持された走行状態と、機関停止の「伏せ」状態、ふたつの車高を再現出来る構造になっているが、可動式というわけではない。作例は時計ネジを仕込んでサスペンションを両状態で固定出来るようにしてみた。

自動車技術史上のエポックとして語られる名車シトロエンDSが前期/後期ともに1/24プラモデルで揃えられることになったのは嬉しいかぎりだ。少々高価なキットではあり、前期型はもはや絶版であるが、エンスー系モデラーに長く愛される逸品であることは間違いない。

作例制作=北澤志朗/フォト=服部佳洋 modelcars vol.278より再構成のうえ転載

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