国産市販車初のターボ搭載モデル、それが430
グロリアは、今はもう消えてしまった車名であるが、日本を代表する高級車のひとつであった。プリンス・スカイラインの上級版、言わば派生モデルとして生まれたグロリアは、2代目から専用のボディを与えられ、プリンスの先進技術をアピールする存在に変身。しかしそのモデルライフ途中でプリンスは日産に吸収合併され、徐々にセドリックの兄弟車となっていったのである。
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1967年に登場した3代目グロリア(A30型系)ではそれでも、縦目のデザインが印象的な独自のボディを持ち、エンジンもプリンス直系のG7型を搭載していた。しかし、見えないところで部品の共用化は進められており、マイナーチェンジではエンジンを日産のL型に変更、続く4代目(230型系)では細部が異なるだけの完全な兄弟車となったのだ。
6代目となる430型系グロリアは1979年にデビュー、1983年まで生産・販売された。先代となる330型が、いかにも1970年代的な抑揚が強く丸みのあるボディスタイルを特徴としたのに対し、430型では直線基調のクリーンなものへと一気に変化。ボディ形式は4ドア・セダンと4ドア・ハードトップがあり、これは先代から引き継がれた形だが、2ドア・ハードトップは新規車種レパードにその地位を譲るように消滅している。さらにもうひとつ、バン/ワゴンもあった。
430型で特筆すべきは、国産市販車初のターボエンジン搭載車がラインナップされたことである。これはモデルチェンジ翌年の1980年に追加されたもので、お馴染みのL型2Lエンジンにターボチャージャーを装着したL20ETを搭載。日産では高性能よりむしろ省エネ・高効率をアピールしていた。これより後、日産に限らず国内様々なメーカーからターボ車が続々と登場、1980年代はターボの時代となったものである。430の人気の高さは、このターボのインパクトによるところが大きいだろう。
ボディ形状修正、さらにジャック・ニクラス バージョンを再現!
さて、そんな430型グロリア/セドリックのプラモデルだが、1/24スケール、それも4ドア・ハードトップに限って述べると、ニチモ、フジミ、アオシマの3社からリリースされており、そのうちアオシマは現在も購入可能、フジミも再販が多いので入手はさほど難しくない。だがこの2社の430のどちらがよいかとなると、意見の分かれるところであろう。アオシマは比較的正確な形だが、ボディラインの取り方が硬く、またトランクが短い。
一方、フジミは実車の流麗さがよく捉えられているのだが、幅が広く、また全体的に平べったい。なお、この造形は意図的なもの(当時流行した”ノッポ”の逆を行くスタイルを狙った)で、決してエラーと呼ぶべきものではないのだが、いずれにしろ平たいことは事実である。そこで、ここでお見せしている作例は、ボディの横幅を詰め、上下は逆に伸ばすなどして、実車のプロポーションにできるだけ近づけたものだ。さらに、デカールを自作するなどして、キットとしては発売されていないジャック・ニクラス バージョンとしている。
ジャック・ニクラス バージョンとは、ターボ搭載モデルにおいて、後期型のグロリアのみに用意されていた特別エディションだ。これは、当時宣伝キャラクターを務めたニクラス(あの”帝王”と呼ばれたプロゴルファーである)の名を冠したもので、前期型にあったSGL‐Fタイプ(セドリック/グロリアともに設定)の発展形でもあった。
トレードマークはグレー系ツートンのボディカラー(単色の他のカラーもあり)、ボディ各部にニクラスのサインが入り、フロントグリルにはサインとグロリアの鶴型エンブレムを組み合わせたバッジを装着。ターボS用のアルミホイールとスタールーフ(固定式グラスルーフ)も具え、インテリアはアメリカ製のグレンチェック地で仕立てられている。このように、普通のグロリアとはひと味違ったスペシャリティ感から、ジャック・ニクラス バージョンは熱い注目を集めたのだ。
作例の再現ぶりから、当時のグロリア、ひいてはジャック・ニクラス バージョンが湛えていたダンディズムを味わって頂けるだろう。さらに、制作過程についても工程写真のキャプションをじっくりとお読み頂ければ幸いだ。