築40年以上も経過した建物を生かす! エコで家族思いなガレージ生活の情熱
ニッサン・スカイラインに魅せられ、人生をクルマとともに歩むようなAさんのガレージ。クルマとの想い出が込められた超和風の母屋、そのテイストを損なわないようリノベーションがされたガレージである。ガレージに収まった2台の愛機は、ハコスカGT-R!
レーシングカーであるプリンスR380のエンジンをデチューンした、DOHCエンジン、S20を搭載した当時の最強モデルである。近年では、世界的なジャパニーズクラシックカーの人気から、数千万のプライスタグが付くことも珍しくない。いくら出してもほしい! というコレクターが世界中に存在するのだ。
ガレージに収まるのは1969年式と1970年式のスカイライン
ともにレストアが施され、まるで新車のように輝いている。Aさんがスカイラインにこだわるのには、幼年時代に父親のスカイラインの助手席で過ごした時間が影響しているのだそうだ。クルマ趣味を20年以上謳歌してきたAさんは、先祖代々受け継いできた約1,200坪の敷地に3つのガレージを所有している。今回ご紹介するのは、2011年3月に竣工を終えた3つめのもので、日産をテーマにリノベートしたガレージだ。
築40年の古家をガレージに!
リノベーションを行ったきっかけは、祖父母が寝室として使っていた母屋の部屋が、祖父母の他界で空いたこと。壁面の白壁、瓦屋根を生かし、築40年以上も経過した建物を生かしたまま土台などを打ち直す方法を選んだ。施工を担当したのは、地元・岐阜県でAさんと同じカークラブに所属、同じくスカイラインGT-Rをドライブする、創業80年を迎える「大脇建築」大脇さん。
一度は、寝室部分を壊してしまって新たに似たようなデザインのガレージを建てようと検討もしたが、やはり思い出と愛着のある家、コストがかかったとしてもリノベートする方法を選んだ。
一番のネックだったのは、躯体を壊したときに大きな間口となってしまうガレージの開口部分を造ることで、躯体が地震などに耐えられるかどうかだった。そこで採用したのが、鉄筋を入れて筋交いも追加して強化する工法。梁をジャッキアップさせて鉄筋を入れる作業は、専門の業者でもかなり慎重に行なう作業だったが、元々の柱や梁にキズをつけることなく補強できることが最大のメリットだ。
そして補強した鉄筋は、見た目にはわからないように木材で柱を覆ってしまうことで、元々の母屋の雰囲気を壊さないよう配慮した。土台もコンクリートを打ち直し、オイル染みが浸透しないABC商会のカラクリートを採用するなど、工夫をこらした。
ガレージの横でコーヒーを飲む!
また、ガレージの横に配置したのは、クルマを見ながらコーヒーが楽しめるような趣味の部屋。パイン材を多用して自然塗料を使うことで、優しい木目の部屋が設けられた。ガラスは6mm厚で特注されたもの。で、じっくりとクルマを愛でることができる。ガレージの扉はやはり趣味でべレットを操る「村上建具店」村上さんが担当。杉材を使ってサイズに合わせた、引き違いのガレージ扉を製作している。
そしてガレージのアプローチに敷き詰められた枕木は、施主のAさんも手伝って施工。壁のペイントもハケを使って仕事を終え、食事後の時間を使ってAさんが塗装したという。コストのことも気にしてのDIYの作業となったが、仲間たちとクルマをガレージで整備することを苦としないAさんにとっては、手を動かすことでガレージの愛着が湧くことがわかっていたからだ。
春、躯体が完成したのと同時に、Aさんがコレクションしていたアイテムがガレージ内に追加され、昭和の雰囲気を感じさせるノスタルジックなガレージが出来上がっていった。Aさんのコレクションはクルマだけにとどまらず、クルマの誕生した当時、1970年や1971年のカタログにはじまり、モデルカー、プラモデル、そしてNOSパーツなどスカイラインのあらゆるものを時間をかけてコレクションしてきたツワモノだ。
愛車は、ガレージに収まったハコスカだけではなく、R32 GT-RやR34GT-Rなどスカイラインをドライブすることが好きで、過去に時間をかけてスワップミートを駆け巡った情熱は人一倍である。
「今ではインターネットが発達して、入手することも簡単になったけど昔は大変だった」。
この言葉からもコレクションをしてきた努力の重みが感じられる。そして完成したニッサンをテーマにしたガレージはこれからも進化するに違いない。
◆PLANNING DATA
所在地:岐阜県
施 主:Aさん
竣 工:2011年3月
構 造:木造在来工法
外壁/内壁:土壁/杉材
ガレージ面積:約60平米
愛 車:
1969年ニッサン・スカイラインGT-R、1970年ニッサン・スカイラインGT-R
1967年ホンダ・Z50M、1982年ホンダ・CBX400F
1971年ホンダ・ミニトレイルK2、1969年ホンダ・ミニトレイルK1
1969年ホンダ・Z50A、1971年ホンダ・Z50Z
◆OWNER’S CHECK
・一番気にいっているところは?
40年前の梁が露出していい雰囲気になった。母屋から直接行ける、DVDを鑑賞しながらくつろげる趣味部屋は、とても快適な空間となった。
・ちょっと失敗したところは?
当初、GT-Rを3台入れる予定で計画をしたが、柱を残したために3台を置くにはどうしても狭くなってしまった。今、考えれば柱を取ればよかったかも。
・次の夢はなんですか?
ハコスカGT-R のパーツ、ホビー、書籍などいろいろなものを展示するミュージアムを設立したい。
・読者へのアドバイスを!
どんなクルマをどんな演出で引き立てるのかを決めて、自分の思ったとおりに造るのかがポイントでしょう。
◆リフォーム:大脇建築
岐阜県中津川市苗木4814 TEL:0573-67-2064