設計・建築オール自分、の驚異のガレージは、施工なんと30日のスピード物件!
細かなこだわり、技が散りばめられたそのガレージは、1人で建てた想い出のスペース。その工夫と技を、『GarageLife』読者に特別に教えていただいた。
とあるイベント会場で、今から60年以上前に製造された1956年式フォルクスワーゲン・タイプ1のコンバーチブルのオーナー・Tさんにインタビューしたことがあった。保管方法を聞いたときに「自分で建てたガレージで保管しています」とさらりと話す。編集部はどのようなガレージを建てたのかが非常に気になり、写真をその場で見せていただいたが、”自分で建てた”とは思えないほどの完成度の高さであった。
取材させていただいたTさんの本職は大工さんだ。職人ではあるが、ガレージ専門というわけではなく、住宅や店舗を手掛けるのが本業。休みを使って建てたのが今回のこの木造ガレージである。はじめから材木がカットされ、順番に組み立てるキットガレージではなく、自宅の庭の寸法に合わせて設計した木造ガレージだ。
クルマから割り出した広さ、そしてリビングから計算した位置に設計図を描いて、工夫をして今から4年前に1人で建築。1人というのが、また筆者を驚かせたポイントでもある。
「休みが友人と合わないこと、そして一人のほうが苦労もあるけど自分のペースでできるので」と語るが、骨組みの構造や屋根に材料を運ぶなど苦労したに違いない。
約4か月、実質30日で完成させた!
ガレージを建てるきっかけは、コンバーチブルを購入し保管したいということが大きなきっかけ。当時はキットガレージを購入して建てることも考えたが、VWクラブ「BUG MAX」のメンバーたちに、自分でできる機会はないから挑戦してみたらと諭され、約4か月計30日を費やして完成させた。
地面の土間だけは、専門の職人に依頼。敷地を掘り下げ、砕石を敷き詰めコンクリートを流し、湿気対策のための防湿シートを敷き詰めた。そして住宅の2×4の木材をあらかじめ指定した場所に建てることになる。問題は1人で水平を出し、微調整が必要なことだ。
ここで活躍するのが脚立足場とレーザー水平器、そして木材を固定するクランプだ。9本の柱を床に仮置きし、対角線上に水引で測定し水平を出すことに時間を費やした。この水平こそネジレを防止しする需要なポイント。水平が出たところで柱に渡す2×4材の梁をノミで欠き込みし、補強として金物を使って固定していく作業をしていく。
屋根材はご家族の協力で運ぶ
躯体の柱が決まると屋根の作業。この作業は材料を上げることが最大のネック。大きな屋根に使うパネルと、フランス製の屋根材はお母さまが下で支え、Tさんが屋根の上で受け取るという方法で行われた。ユニックなどは使わず、すべてがDIY による作業。もちろん木材を貼り終え、防水シートを貼り終えてしまえばあとは大工としての作業は終えた気分であるが、ここからが工夫の宝庫であった。
あらかじめ決めていた窓の位置に7mmのアクリル板を使った窓をはめ込み、観音開きの木製ドアなどコストをかけずに、腕を振るった。また、電気の配線をあらかじめ考慮して「BUG MAX」の友人、斎藤さんがお手伝い。内装の壁面は凹凸をつけて奥行きを表現している。
職人らしいこだわりは、内壁を貼るときに使った真鍮の釘。頭が小さいものを使うことにより、ライトで照らした際に光り方に差が出ることを考慮したという。そして柱の角はすべてカンナにより角を取り、丸みをつくることでケガの防止のほか、ライトで照らしたときの陰影を意識しての作業を施した。
現場からの廃材を利用したことで土間を含めてのコストはおよそ50万円。もちろん、工賃はすべてTさんだから実現できたこと。細かいこだわりが輝く、こだわりのガレージはクラシックなクルマのほか、コレクションが眠るお宝箱となった。今ではVW仲間が遊びに来てバーベキューを楽しみ、時間を気にせずクルマの整備をする場所となって重宝している。作業は大変であったが、「大切なクルマを安心して維持するスペースとなりました」と、Tさんは充実した毎日を送っている。