3年ぶりの”通常開催”となったホビーの祭典
静岡市内の「ツインメッセ静岡」で5月11日(水)から15日(日)にかけて、国内外多くの模型メーカーの新製品が一堂に会する日本最大級の模型イベント、「静岡ホビーショー」が開催された。今年は3年ぶりに一般入場者を入れての開催となり、会場は再会を待ちわびていた多くの模型ファン、関係者で賑わった。
この静岡ホビーショーは、日本全国はもとより海外からも多くの模型関係者やファンが訪れる毎年恒例のイベントであるが、コロナ禍の影響で2020年は中止、一昨年は業者のみ入場という形で開催されたので、一般来場者が入れる通常の形態でのイベントとしては、実に3年ぶりの開催となった。
プレスデイは事前申請が必要、一般公開日も来場は予約制として一般入場者数の上限を設けるなど、いまだコロナ対策に細心の注意を払いつつも久しぶりの”通常開催”となったホビーの祭典。プラモデル、ミニカー、ラジコンにフィギュアなど、様々なジャンルの模型が持つそれぞれの魅力に、改めて触れることのできたイベントであった。
以下では展示ブースの中で筆者が特に気になったものをダイジェストで紹介したい。
タミヤ
お馴染みタミヤのブースでは、スケールモデルからミニ四駆、ラジコンまで、幅広いジャンルで新作がリリースされたが、古くからの模型ファンにとってはやはり歴代のF1マシーンのプラモデルのリニューアル再販が注目だろう。ティレルP34と003、ルノーRE20ターボは1/12ビッグスケール。1/20グランプリコレクションシリーズからはティレルP34が登場。いずれのキットも、新規のエッチングパーツなどの追加でアップデート化されているのも嬉しいポイント。
京商
ミニカーやラジコンの分野で、やはり日本を代表するホビー・メーカーである京商。今回のショーでも多くの新作が展示された。1/18の同社オリジナルのダイキャストミニカーでは歴代ランボルギーニなどのスーパースポーツからBMW2002のようなロードカー、さらにセリカ、インプレッサ、デルタなど、WRCで活躍したラリーカーまで、多くの新作と、開発中の試作モデルが展示された。また、同社が「SAMURAI」ブランドで展開するレジン製ミニカーでも、IMSAで活躍した300ZXがリリースされている。
自社製品と同時に、海外ブランド・ミニカーの輸入も手がける京商。近代ミニカー界隆盛の起爆剤となったドイツのミニチャンプス、世界に先駆けて1/18スケールを手がけ、ミニカーのスタンダードな縮尺の一つとして定着させたブラーゴなども、同社の取り扱うブランドの一例。
メイクアップ
東京は青山のメイクアップは、プロの作家が手がける一品モノや、ごく少量生産のハンドメイドのミニカーなど、いわゆる「スペシャル・モデル」と呼ばれる分野の模型の取り扱いに関しては、日本における草分け的存在。そんな知る人ぞ知る同社は、その老舗としての知見を生かし自社ブランドで高品質の少量生産モデルを数多く手がける。そして、その製品はいずれも世界中のコレクターの垂涎の的となっているのだ。今回のショーでも、カウンタックのプロトやGRヤリスをはじめ、多くの新作が展示された。
イグニッションモデル
由緒正しいヒストリック・レーシングマシーンやラリーカーから、派手なカスタムが施された最新のスーパーカーまで、ユニークなラインナップで多くのファンから支持される静岡のモデルカー・メーカー、イグニッションモデル。こちらは人気漫画「頭文字D」劇中車のRX-7。ミニカーと同スケールでフィギュアも付属させる手法も、最近の同社製品によく見られる”遊び心”だ。
エニフ
神奈川のKIDBOXは、老舗模型専門店であると同時に、オリジナルのミニカー・ブランドを展開する「模型メーカー」でもある。同社ブースに展示されたのは、ENIF(エニフ)ブランドからリリースされた1/43 ブルーバードUの2000GT。同門のスカイライン2000GTの人気にあやかって生まれた6気筒・ロングノーズの610ブル。KIDBOXシバタ社長のオタク趣味全開(笑)の意欲作。
オートアート
欧米、オーストラリア、そして日本と世界中の拠点でワールドワイドに製品展開を行うオートアート。同社のミニカーは、剛性感の高い金属シャシー・骨格に、シャープなディテール表現に優れるABS樹脂製のボディを組み合わせた「コンポジットダイキャスト」と呼ばれる、他に例を見ないユニークなアプローチで生産される。人気漫画「サーキットの狼」の劇中車、’73カレラとヨーロッパも、その独自の技術で作られた新作。
ホビージャパン
長い歴史を誇る総合模型雑誌として知られるホビージャパンは、もともと創刊時にはミニカー・コレクターのための情報誌として生まれた経緯を持つ。そんな同社の伝統を感じさせる、ホビージャパンが手がけるオリジナル・ミニカー。ミニカーのスケールとしては世界的な標準とされる1/43のほか、昨今は手軽なサイズと価格からファンが増えている一回り小さな1/64スケールの分野でも積極的な展開を見せている。
国際貿易
世界各国の模型や玩具の輸入・販売を手がける国際貿易は、戦前からの長い歴史を誇る老舗だ。フランスのノレブをはじめ、今なお多くの海外ブランドを取り扱う一方で、一時期は休刊となっていたコレクター向けの小冊子「ミニカーマガジン」の権利を取得、ウェブ媒体として復刊させるなど、業界全体やファンを見据えた動きにも老舗としての矜持を感じる。
テクノモデル
こちらはイタリアのスペシャルモデル、テクノモデルの1/18スケールのポルシェ910とフェラーリ712。ごく少量がハンドメイドで生産される、上質な仕上がりが好ましいレジン製モデル。
CMR
マカオを拠点とする新興ブランド、CMRの新作は1971年のデイトナに出場したスノコカラーと、同じく’71年のル・マンに参戦したノースアメリカン・レーシングチームのフェラーリ512M。
トミーテック
Nゲージの鉄道模型をはじめとするマニアックな製品群で知られるトミーテック。同社の1/64ミニカーは、様々なシチュエーションを再現したフィギュアや小道具が付属する「ジオコレ64」という新シリーズが大人気。SNSで”映える”ことも人気の秘密とか。また、マニア受けする車種選定で話題のチョロQ zeroシリーズには、前輪がステアしたりキャンバーがつけられる新シリーズが加わることに。
ハセガワ
1/24のカーモデルの分野で大いに気を吐いているハセガワ。今回もスカイラインGT-R(KPGC110)の1/24プラモデルの新作を発表、カーモデラーから大きな注目を集めた。また、同社が輸入を手がけるICMは、ウクライナのプラモデル・メーカー。幸いスタッフは全員無事とのことだが、当然現地では模型を楽しむどころではないはず。祈・平和。
エブロ
弊社発行のモデル・カーズ誌でもコラムを連載している模型設計者・木谷真人氏率いる模型メーカー、エブロ。会場ブースには1/20のティレル005、1/24シトロエン2CVフルゴネットAZUの新作プラモデル、そして同社が得意とする1/43スーパーGTマシーンの新作ミニカーでは、早くも日産ZスーパーGT GT500の試作モデルがディスプレイされていた。
アオシマ
やはり静岡の老舗模型メーカー、アオシマ。同社は通常のプラモデルと並行して、ボディが塗装済みで年少者でも簡単に作れる「楽プラ」と呼ばれるシリーズを展開。模型人口の裾野を広げる事にも力を入れている。また、マカオを拠点とするプラモデル・メーカー、ヌヌ、ビーマックス製品の輸入販売、共同企画などを手がけるのも同社だ。
プラッツ
こちらは模型用の素材から完成モデルまで、国内外の様々な製品を取り扱うプラッツのブースに展示された「オートモービル」シリーズと銘打った1/32スケールの塗装済み・接着剤不要のRX-7のプラモデルと、1/50ダイキャスト・ミニカー、日野プロフィアのバリエーション。