4月28日夕刻、フランス大使館大使公邸において、新型『DS 4』が日本で初お披露目となった。プレミアムCセグメントに投入する、全く新しいモデルとなる。
全く新しいと聞いて”?”となった方もいるだろう。そう、DS 4には先代が存在するからだ。最初は『シトロエンDS4』のように、シトロエン内のサブネームとして21世紀に復活したDSの名称。その後2014年にDSとしてブランドが独立したことで主にグリルのデザインを変えて、現在の『DS 4』のように呼ばれることになった。つまり、DS 4を”全く新しい”と書いたのは、DS用に新開発された、そもそものスタートが違うモデルだからである(下の写真が『シトロエンDS4』と『DS 4』。グリルの違いに注目)。
21世紀のDSは当初”元シトロエン”の『DS 3』、『DS 4』、『DS 5』でスタート。DS専用モデルは2018年の『DS 7』まで待つ必要があった。その後『DS 3クロスバック』と2車種体制が続いたが、今年日本にも導入されたフラッグシップセダン『DS 9』が追加され、今回この『DS 4』が4車種目となり、実はこれが大本命となる。
というのも、ここから3年間の日本におけるDS販売のうち、約半数をこのDS 4にしたいそうなのだ。ちなみに2021年のDS日本販売台数が889台で、これはDS 3クロスバックとDS 7の数字だから、DS 9はそれほど台数が見込めないとしても、DS 4だけで年間1000台以上を見込んでいると思われる。
同門プジョー308とプラットフォームを共有
ではDS 4がどんなクルマなのかを見ていこう。
まずボディサイズは
■全⻑×全幅×全高=4415×1830×1495mm
■ホイールベース=2680mm
となり、同じCセグメントの同門シトロエンC4(写真左下)が
■全長×全幅×全高=4375×1800×1530mm
■ホイールベース=2665mm
なので、C4よりひと回り大きく低いことになる。実はプラットフォーム自体も、C4がB~Cセグメントのシティカー用であるCMPなのに対し、こちらはEMP2と、上級車種用のものを使用している。
では同じEMP2プラットフォームを使用する新型プジョー308(写真右下)のほうといえば
■全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
■ホイールベース=2680mm
とほぼほぼ近い数値。しかし実車の印象はDS 4のほうが伸びやかなスタイルを持っている印象だ。ちなみに308もDS 4もEMP2のV3と呼ばれる進化版を採用していて、剛性強化や軽量化を実現しているとのこと。
DS 4のスタイリングの元になっているのは、2020年2月に発表された『DSエアロスポーツラウンジ』と呼ばれるこちらのコンセプト。見比べるとほぼそのイメージを踏襲していることがわかる。
まず決めたのはフォルム、プロポーションだという。我々への説明では”グローバルプロポーション”という言い方をしていた。そこはあくまで流麗に仕上げ、そして機能的な部品はエッジの効いた形で仕上げ、細部にはDSのモチーフであるダイヤモンドの模様を各部にあしらっている。
これはDS全体に言えるものだが、キーワードは”サヴォア・フェール(匠の技)”で、前後ライトまわりや特に室内デザインの作りこみは、DS 4のハイライトとも言える部分だ。またテクノロジー面でも、『DSエア』と呼ばれる吹き出し口を最小限にしたエアコン、『DSクリーンキャビン』と呼ばれる自動で車内を浄化する機能、日本語も対応したボイスコントロールシステム『DSアイリス・システム』、ショートカットを6つまで登録できる手元の5インチタッチモニター『DSスマートタッチ』など、室内に注目点は多い。430リッターのトランク容量を確保したことで、使い勝手を考慮しているのもフランス車らしい部分だ。
パワートレインは1.2L 3気筒ガソリン(130ps)、1.5L 4気筒ディーゼル(130ps)、1.6L 4気筒ガソリン(180ps)+モーター(110ps)となるPHEVの3種類で、いずれも8速A/Tを組み合わせる。
いずれのパワートレインにも『RIVOLI』というグレードがそれぞれ、価格449万円、469万円、572万円で用意され、1.2リッターガソリンにだけ受注生産で『TROCADERO』と呼ばれる、装備を抑えた仕様が398万円で用意される。ちなみにグレード名はいずれもパリの地区名となっている。50台限定となるファーストエディション、『LA PREMIERE (ラ プルミエール)』も514~642万円で用意されているので注目だ。
商品力の高いDS 4は大いにチャンスあり
輸入元のステランティス・ジャパンは、デザイン面での圧倒的な特徴だけでなく、改良を受けたEMP2プラットフォーム、様々なテクノロジー、熟成したパワートレイン、そして何よりも比較的リーズナブルな価格面など総合的にみて、DS 4は勝負できると自信を見せる。
こちら往年の『シトロエンDS』は偉大なクルマで個人的に尊敬もしているが、世界的に見れば圧倒的なネームバリューがあるかと言えばそうではなく、またDS専用モデル『DS 7』が登場して4年と日が浅いということもあり、DSはまだまだニッチなブランドだ。販売する現場の苦労も容易に想像できる。
ただ聞くところによると、ファッション業界や建築関係など、デザインに敏感な感度の高いユーザーに受け入れられ始めており、さらに日本の輸入車市場でもフォルクスワーゲン・ゴルフなど群雄割拠のボリュームゾーンであるCセグメントに商品力の高いDS 4が登場したことは、大いにチャンスあり、と見ているわけだ。
事実そのへんのドイツ車勢に対して食傷気味な雰囲気も感じられ、電動化という流れもある中で、新たなものを求めるユーザー層は少なくないと思う。そこにDS 4が付け込むチャンスは大いにある。
さて、最後にDS 4が気になっている方へダメ押しをしておくと、『DSアクティブスキャンサスペンション』と呼ばれる、路面の凹凸を前後カメラでハイスピードスキャンしサスペンション制御するシステムにおいて、今回スキャナの映像解析度が10ミリ四方単位→5ミリ四方単位と向上しており、制御が大幅に進化したとのこと。つまりDSの持ち味であるフラット感のある乗り心地がさらに向上したのである。
機会があればそのあたりも試乗記でご紹介したいが、知れば知るほど、よさそうな予感しかしないDS 4。日本での売れ行きに注目したい。