イタリア版・羊の皮を被った狼
アルファロメオの「ジュリア」と言えば現在のラインナップにもある名前だが、これを2代目とすると、初代にあたるのが、1960~1970年代のいわゆる105系/115系である。この初代ジュリアでは、やはりジウジアーロのデザインによる2ドア・クーペがポピュラーであると思われるが、4ドア・セダン(ベルリーナ)ももちろん無視できない存在だ。
ジュリア・クーペのデビューは1963年であるが、ベルリーナはその前年の1962年に登場している。先代となるジュリエッタが1950年代の匂いの濃いスタイリングであったのに対し、ジュリアはフラットかつスクエアな近代的なボディが特徴で、その開発には風洞なども用いられ、空力面でも優れたものであったという。
最初に登場したのはジュリアTIというモデルで、1.6Lの直列4気筒DOHC(出力92ps)を搭載、5速のトランスミッションが組み合わされていた。当時の常識からすればセダンとしては非常に贅沢なメカニズムが投入されていたことが分かるだろう。1964年には廉価版として1.3Lのジュリア1300TIを追加している。
さらに1965年には1.6Lの強力モデル、ジュリア・スーパーをリリース。エンジンはウェーバーのキャブレーターを2基装着することで98psにパワーアップ。こうしてスポーティなセダンとしての名声を確立したベルリーナのジュリアであるが、このジュリア・スーパーは、コンペティション・バージョンのデチューン版という性格も持ち合わせている。
そのコンペティション・バージョンというのは、1963-1964年に生産されたジュリアTIスーパーであった。エンジンは圧縮比の引き上げやウェーバー45DCOEキャブレターの装着で112psへとパワーアップ、ボディは軽量化され内側ヘッドライトはエアインテークに変更、ホイールは4.5Jのアロイホイールを装着している。
ジュリアTIスーパーはホモロゲーション獲得のため501台が生産され、現在ではコレクターズアイテムと化している。モデラ―であればぜひともプラモデルで作ってみたい1台であるが、ベースのノーマルなジュリアともども、キット化はなされていない。非常に残念な状況であるが、ここでお見せしているのは1/24スケールのレジンキットの完成品である。
レジンキットとは、大メーカーによるプラモデルとは違い、小規模なメーカーがほぼ手作りでリリースするもので、素材には主に無発泡ウレタンが使われている。このジュリアTIスーパーは、かつてトイクラフト ベルグが発売したキットだ。残念ながらもはや気軽に入手できる製品ではないが、以下、制作過程をご紹介しよう。
注意深く作ればレジンキットもこわくない!
レジンキットはまずパーツを洗浄し、表面の離型剤を落とす。続いて気泡や欠けの処理を行なうが、このキットではフロントエプロンやサイドシルなどに穴があるので、瞬間接着剤と硬化スプレーで埋めた。シャシーと一体のマフラーは位置が奥まっているのでポリパテで長さを延長。ボディとシャシーを合わせると、シャシーがはみ出してチラ見えする箇所があるので、シャシーを削り込んでいく。ボディとシャシーをカッチリ合わせられるモールドがないのでナノブロックを接着し、固定と取り外しが容易にできるよう改めた。
ホイールに穴を開けシャフトを通し仮組みして車高などを確認。車高が高く前輪の車軸が後ろにずれている印象だ。前輪シャフトの通る位置を1mm前方にずらし、前後とも溝を2mm深く彫り込んで車高を下げた。前後バンパー取り付けの穴をボディに開ける(軽くモールドされている)が、微かにでもずれると取り付けが水平でなくなるので注意深く作業。プラサフで下地を作りガイアのExホワイト+純色シアン+ブラックで塗装、クリアーコート後1500番ペーパーで研ぎ出し、ホルツの液体コンパウンドで磨いた。
ホワイトメタルの部品は真鍮ブラシで白い粉を落とし棒ヤスリ等でパーティングラインを削って成形、グレータイプのプライマーサーフェーサーを吹いた後で塗装する。ホイールは裏側を黒く塗装、表側をシルバーで塗る。ダッシュボードはメーターのデカールを他キットから流用して仕上げた(キットにはデカールが含まれない)。ボディ内側にはドアノブやレギュレーターがモールドされていたが、塗装を容易にするため削り落としたので、プラ板等で自作。テールレンズなどはメタル部品なので型想いで型を取り複製した。
ウィンドウはレジンキットならではのバキューム成型品。ボディの取り付け部に合わせて注意深く切り出して使用するが、サイドウィンドウはこれを使わず、塩ビのシートを使用。エッチングの窓枠に合わせて切り出し、エッチングとボディの間に接着した。