貴重な絶版プラモデル、ニチモ製「バイオレットターボ」をシャープにアップデート!【モデルカーズ】

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日産のターボ技術史において重要な役割を果たしたバイオレット

初代バイオレットのターボ、いわゆるバイオレット・ターボ(ターボ・バイオレット)である。もはや聞きなれない車名となってしまったバイオレットだが、日産がこの車種をデビューさせたのは1973年のこと。それまでのブルーバードがモデルチェンジでブルーバードUとなり(1971年)、車格も少々上級へ移行したことを受けて、サニーとブルーバードUの隙間を埋めるために開発されたという訳である。ブルーバードUデビュー後も、その先代にあたる510型ブルーバードが併売されていたのだが、バイオレットはそのポジションを引き継いだ形であり、エンジンやドライブトレインも510型のそれを踏襲したものとなっていた。


直線基調のスタイリングが特徴だった510型とは打って変わって、曲線が絡み合う複雑なボディラインを「ストリームライン」の名でアピールしたバイオレットだったが、セダンにもファストバック形状を採用したことが災いして視界の悪さなどが不評を呼び、販売的には成功とは言えなかった。ボディのバリエーションは2ドアと4ドアのセダン、2ドアのハードトップ、そしてライトバンがあり、搭載エンジンは1400cc、1600cc、1800ccのL型四気筒。三世代続いた後にバイオレットリベルタ、そしてリベルタビラへと変化していったのだが、二代目バイオレットの兄弟車としてオースターが生まれ、そしてプリメーラがその地位を継承したことを考えると、プリメーラのルーツとしても捉えることができるだろう。

510ブルーバード同様にモータースポーツでも活躍した初代バイオレット(710型)だが、ラリーでの活動もさることながら、ひときわ異彩を放ったのが、本題のバイオレットターボである。市販車にターボが搭載されるようになる以前、日産は510ブルーバードやバイオレットにターボエンジンを積んで海外レースに出場し、ターボ技術を熟成させていった。そういった意味でこのバイオレットは、日産のターボ史に欠くことの出来ない存在である。

搭載エンジンは、L18に4バルブDOHCヘッドを組み合わせ、ターボと電子制御インジェクションで武装したもので、最高出力は300psに達していたと言われている。このバイオレットターボの輝かしい戦績としては、1974年、マレーシアで開催されたセランゴール・グランプリに出場した3台のうち、高橋国光ドライブの123号車が勝ち取った総合優勝が挙げられる。ここでお見せしているニチモ製プラモデルは、そのものズバリこの個体を再現したものだ。発売はかなり古く1970年代後半から1980年代前半あたりと思われ、のちにはレースカーではなく街道レーサーとして、様々なオプションパーツを加えてリリースされたりしていた。ニチモのプラモデル撤退により、現在は絶版である。

組みやすくプロポーションも良い好キット!
作者曰く「とにかく設計が絶妙で、接着剤不要のスナップキットながら、部品のフィッティングが大昔のキットとは思えないほどに良い」とのこと、丁寧に塗り分けを施せば充分な見栄えに仕上がるが、今回はディスプレイモデルとしての制作なので、モーターライズ機構ゆえディテールを少々犠牲にしている部分を中心に、若干の加工や改修を行っている。フロント周りは仮組みしてみるとグリルが前方へ飛び出した感じで、ボディそのものも上から下まで絶壁な印象のため、フロントパネル~エアダムを2つに分けて切り離し、下すぼまり感とくびれが生まれるように再接合。高さも2mmほど詰め、グリルの取り付けを少し奥まらせている。テールレンズはガーニッシュと一体の黒いプラパーツのため、クリアーレジンで複製して透明パーツ化した。複製に使用した素材はいずれも100均で買えるものである。

設計の古いモーターライズキットのため、シャシー中央には電池収納部が陣取っているが、室内再現の邪魔なので削除。キットのコクピットは電池を避けるために上げ底パーツとなっているので、外周部分を中間でスライスし、前後隔壁と側面をプラ板で10mmほど嵩上げ。フロアを下に移動し、シートは切断せずにそのまま上部をプラ棒で嵩上げした。

ゴロッと丸っこいボディに過剰なディテールを盛り込んだスタイリングから、好き嫌いが強く分かれるであろう初代バイオレットだが、こうしてレーシングマシーンとして武装した姿は、文句なく格好良い。実車のルーフには何か文字が書かれていたようだが、キットでは再現されておらず、資料からも明確にはできなかった。作例ではそれをドライバー名と推測し、「高橋」としている。

作例制作=吉田 優/フォト=服部佳洋 modelcars vol.265より再構成のうえ転載

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