ホンダの伝統ともいえるコンパクトカー、シビックが11代目へとフルモデルチェンジした。モダンな印象となったエクステリアに、レトロ感と最新のインフォテイメントシステムが備わったインテリア。さらに走りでは静粛性と快適性を向上しつつ、スポーティな味付けのハンドリング性能も魅力のモデルだ。
この乗り味をどう判断するかで……!?
11代目となるシビックが登場した。ホンダはこれを「Z世代に向けた爽快シビック」だと語るが、確かにある意味この新型は、若さへのリトマス試験紙のような5ドアハッチバックだと筆者は感じた。
先代で1世代ぶりに日本市場へカムバックしたシビックは、その販売実績からセダンを諦め、日本市場をこの5ドアハッチで展開する。今回試乗したのは上級グレードの「EX」で、ベーシックな「LX」との違いは主に快適装備。ホンダセンシングやエアバッグといった安全装備、18インチタイヤは標準装備となっている。
さらに面白いのは、CVTと6速MTの価格が同じこと。CVTのお値段が据え置きなのか、MTがコスト高なのかはわからない。それでも先代で約3割のオーナーが6速MTを選んだ傾向は途切れず、新型となっても受注段階でMT比率が4割を越えたという。
そんな新型シビックを走らせてまず感じるのは、静粛性の高さだ。いわゆるタウンスピード、クリープから2000rpmで走る領域にかけての振動が、とても高いレベルで押さえ込まれている。
これにはクランクシャフトとオイルパンの剛性を引き上げた効果が大きいようだ。またボディ側ではフロントアンダーパネルを補強し、リアトレーリングアームの取り付け剛性を向上させた。さらに
各ピラーには発泡ウレタンを充填し、タイヤの内側にまで消音機能を仕込ませる念の入れようは、後発する「e:HEV」でEV並みの走りを実現する布石だろうか。
ボディサイズは全長で先代+30mm、全幅で同等、全高で+5mmと、またひと回り大きくなった。もはやシビックならぬ”C〜BIG”になってしまった感は否めないが、これでも北米では立派なコンパクトカーなのだろう。
しかしそんなボディでも運転すると大きさを意識させないのは、フロントフードの左右後端を25mm、Aピラーを50mm後退させた視界の良さがひとつ。そして操舵に対して的確にレスポンスする、ハンドリングの良さが理由だ。
フロントのゲインがやたらと高いわけではない。しかしその操舵感は、どっしりとたくましい。足下にはグッドイヤー・イーグルF1を奢るが、これをきちんと履きこなしている。こうして得られるフロントエンドのリニアさに対して、トレッドを拡大したリアのマリチリンクは見事な仕事をする。
試乗車はCVTだったが、エンジンとの協調性も見事だった。アクセル開度の小さな領域からターボはその過給圧をスムーズに立ち上げ、これに滑り感なく追従する。パドル制御にDCTやロックアップの高いトルコンATほどのメリハリ感はないけれど、エンジン出力に対してはトルクバンドをうまくキープできているから、そこにまどろっこしさは感じない。6速MT比で30kg重くはなってるが、むしろフロント荷重が効いて乗り味がしっとりしている。新型シビックの6速MTは節度感が高く、操作していてとても気持ちがいい。ただシフトアップ時の回転落ちがやや鈍い部分を考えると、CVTを積極的に選ぶのもアリである。
総じて新型シビックは、かなりピュアな5ドアハッチに仕上がった。これでエンジンパワーがもう少しあったら、”SiR”と呼びたくなる出来映えである。
ただしその乗り心地は、それなりに引き締まっている。特に伸び側減衰力が高めで、段差や路面のうねりは少し弱い。そしてこの乗り味を許容できるか否かで、あなたの若さがわかると思う。そもそも論で言うと可変ダンパーがあればよいのだが、ともかくホンダはこの乗り味を忖度せず割り切った。自分がまだまだ若さを保てているかどうか、ぜひ新型シビックを試乗して確かめてみて欲しい。
【Specification】ホンダ シビックEX
■全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm
■トレッド(前/後)=1535/1565mm
■ホイールベース=2735mm
■車両重量=1370kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1496cc
■最高出力=182ps(134kW)/6000rpm
■最大トルク=240Nm(24.5kg-m)/1700- 4500rpm
■トランスミッション=CVT
■燃料タンク容量=47L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=16.3km/L
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=235/40R18
■車両本体価格(税込)=3,539,800円
公式ページ https://www.honda.co.jp/CIVIC/