“スタイリッシュなフォルクスワーゲン”、アルテオンの新たな選択肢としてシューティングブレークが登場。その最大の見せ場は、既存のファストバック以上に個性的なスタイリングだが果たして全体の出来映えは? 早速中身をチェックしてみよう。
独自性という点ではファストバックを凌ぐ!
かつては〝一品モノ〞に類する贅沢なクルマの称号だったシューティングブレークだが、現在は少し敷居が低くなってスタイリング重視のワゴンを指す言葉になっている。そんな現況で判断するなら、このアルテオンの新作には確かにそう名乗る資格がある。
そのディメンションは、既存のファストバックとまったく同じ。だが実車を前にすると、水平基調のルーフが数値以上にクルマを長く、伸びやかに見せていることに驚かされる。スタイリング重視のクルマで必須となる、良い意味での〝毒気〞は間違いなくファストバック版以上。この見ためで衝動買いするワゴン好きがいても、何ら不思議はない。もちろん、毒気があるということは支持者とともにアンチを生み出す恐れもあるのだが、見ため重視のクルマならそれぐらいでちょうどいい。
なお、グラスエリアとリア回りを除いた外観はファストバックと共通。シューティングブレークの登場を機にフロントマスクは手直しされ、ライトユニットと連携して点灯するラジエターグリル下部のLEDファイバーケーブルをはじめ、適度な案配でデコラティブな要素がプラスされた。
また、基本レイアウトこそ変わっていないがインテリアもアップデート。インパネは横方向の拡がりを強調する造形となり、トリム類の質感が向上。スイッチ回りも静電式のタッチ操作部が増加したほか、30色のカラーが選べるアンビエントライトも標準で備わる。さらに、最高210km/hまでが作動範囲となるトラベルアシストを筆頭に運転支援系装備も充実。新型車らしいデジタル感の演出や、安全性向上にも余念がない。
このシューティングブレーク、ファストバックともに日本仕様のパワートレインは2Lのガソリンターボ+7速DCT。駆動方式が4WDのみとなる点も含めて従来型と同様だが、動力性能はミドル級ワゴン/ファストバックとして申し分ない。日常域で扱いやすいのは当然として、深くアクセルを踏み込む領域では良質なガソリンユニットらしい力感と吹け上がりの伸びを実現。それだけに、乗り手がその気になればスポーティに振る舞うことも苦にしない。ただしプレミアムを自認するブランド産と比較しても遜色がない見ため品質や、前述したシューティングブレークならではの佇まいを考慮すると、個人的には音や振動面であと一歩の洗練度を望みたくなるのもまた事実だ。
そうした傾向は、シャシー回りについても当てはまる。操縦性は、長いホイールベース+4WDという構成から察せられる通り安定性の高さが印象的。ことさら刺激的ではないものの、乗り手の意向にはしっかり応えるので機能面の不満はない。また、試乗車は35扁平の20インチという戦闘的サイズのタイヤを装着していたがライド感をはじめとする快適性も許容できる範囲内。つまり、特にケチを付けるような部分はないわけだが、せっかく見る者の情緒を刺激し得る姿カタチをしているのだから、それに相応しい「何か」も欲しいというのが率直なところになる。
とはいえ、クルマとしての完成度が高いことは紛れもない事実。「フォルクスワーゲンのいいところ、ぜんぶ。」とはアルテオン導入当初のキャッチコピーだが、シューティングブレークもその謳い文句を体現する出来映えだ。
【specification】フォルクスワーゲン アルテオン シューティングブレークTSI 4モーションRライン アドバンス
■車両本体価格(税込)=6,446,000円
■全長×全幅×全高=4870/1875/1445mm
■ホイールベース=2835mm
■トレッド=前1585、後1575mm
■車両重量=1720kg
■エンジン型式/種類=DNU/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=82.5×92.8mm
■総排気量=1984cc
■圧縮比=11.6
■最高出力=272ps(200kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/2000-5400rpm
■燃料タンク容量=66L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後4リンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前245/35R20(8J)後245/35R20(8J)
公式ページ https://www.volkswagen.co.jp/ja/models/arteon-shooting-brake.html
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