スパ24時間レースの取材に行ったら愛車がまさかのパンク! 果たして無事に帰れるのか?【池ノ内ミドリのジャーマン日記】

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人生初のパンクに一時はパニックになってしまいましたが……

8月の夏真っ盛りのドイツでここ最近は30℃以上の日が続いていますが、今年は涼しい日が多く、ただでさえ短いヨーロッパの夏がもっと短く感じます。
私は暑さが苦手な上、ドイツの一般家庭にはエアコンが備わっておらず、暑い日は水浴びと扇風機でしのぐしかないので涼しい夏は大歓迎です。

ドライバーの目線からはほぼ垂直に見えるという有名なオールージュ

アウディチームのピット前は毎年めちゃくちゃカッコいい!

来年デビューのアウディR8 LMSウルトラ GT3はワールドプレミア。

様々な自動車メーカーの展示を観るのも楽しい!

7月の末から2週間の間、隣国のベルギーへレース取材旅行に出ていたのですが、まずはスパ・フランコルシャンサーキットへ。ニュルブルクリンクとル・マンと並び、ヨーロッパ三大24時間レースのひとつとしても有名なスパ24時間レースへ向かいました。

オールージュのコーナーの名前の由来になった、本物のオールージュ。コーナーの真下に流れていて、その名の通り鉄分を多く含んだ赤い水が流れている。

サーキット前ののガソリンスタンドの駐車場の格スペースには往年のF1ドライバーの名が!(パンク前の楽しいドライブを満喫していた日)。

現地の気温は15℃前後というとても快適な毎日で、愛車のエアコンは高速道路を走行する以外はオフのままでした。爽やかというか多少肌寒い夏のベルギーを、ペンションからサーキットの片道25km程を毎朝楽しくドライブをしていましたのですが、ナイトセッションが終了後にディア関係者用の駐車場に戻り、さて夜も遅いのでペンションに戻る途中で何かテイクアウトをして帰ろうかな~とお腹を空かせて愛車のエンジンをかけたところ……、なんと、空気圧の警告が出ているではありませんか!

サーキットの前のガソリンスタンド。グッズもたくさん売ってます。

しかし、運よくも駐車場の前がガソリンスタンドでしたので、空気圧を測りに入りました。
まずは右の前輪・後輪、ちょっと空気圧が低いなと程度で、足らない分を少し追加。続いて左の前輪、はいはい、OKね。後輪……おやや? 何度も空気を補充しますが一向に入りません。夜も遅い位中、スマホのライトを便りにタイヤをじっくり見てみると、大きなネジらしき物が刺さっているではありませんか!

痛恨の太い釘。

え~~~っ、なんで今頃⁉ とパニックです。人生でクルマのパンクは初めて。BMWのコネクトドライブから電話しますが、夜も遅いのでBMWのサービスも来られません、との事。取り敢えず、クルマを駐車してタクシーで宿に向かってください、との事だったのですが、スパ・フランコルシャンサーキットの近辺はとても田舎。クルマは一人に一台というような地域ですので、タクシーなんか滅多に走ってはいません。閉店準備のガソリンスタンドのお姉さん(フランス語しか話せない)に、私のド下手な英語でタクシーを呼んでください、とお願いするも、ん?という顔をされます。
そんな時、ベルギーの有名レーシングチームのメカニックの男性が、「どうしたの?」と英語で話しかけてくれて、パンクして困っていてタクシーで宿まで帰りたい旨を話すと、タクシー会社を調べて電話をあちこちにしてくれたのですが、残念ながら営業終了ばかり。
すると彼が「よし、キミを宿まで送ってあげるから心配しないで!」と。なんてことでしょう。本当に涙が出る程に嬉しかったです。ランフラットだったらよかったのですが、そうではありませんのでもう完全に空気が抜けてホイールがガラゴロ鳴るタイヤを引きずって、メディア駐車場へ再び停めに行き、お仕事帰りのメカニックの彼に片道25kmを載せて頂きました。タクシーに載ったら結構高そうです。下りる時に、「これでお茶でも飲んでね」とおばちゃん根性で何度もお札を手渡そうとしたのですが、「要らないよ」と何度もあちらも返してこられるので、また今度別で必ずお礼をさせてね!と別れました。それから、残念ながら人でごった返すサーキットで見つけ出す事はできなかったのですが、所属するレーシングチームは分かっているので、関係者を通してお礼をまずお伝えして、後日ドイツの自宅に戻ってから、日本のお箸のセットをお贈りしました。

まるでバイク用かと思う程に細い緊急用タイヤ。マックス80km/hしか出せません。

さて、パンク翌日は24時間レースのスタート日で、私にとっても最も多忙な日でもありますが、パンクを放置していたらこの日も宿に自力で帰る事はできませんので、BMWに昨夜予約したサービスカーに朝から来て貰い、バイク用かと思うような細い仮タイヤを付けて貰いました。ベルギーの最寄のBMWよりもドイツからの方が近かったため、国境を越えて応急処置にお越し頂きました。仮タイヤのデポジット金100€(約13000円)をお支払いし、最高80㎞/しか出せないタイヤで数日過ごしました。一本だけ細いタイヤなので安定が悪くて走り難かったですが、タイヤが付いているだけマシです(笑)。

はるばるドイツから国境を超えてベルギーまでお越し頂いたBMW Servicemobil。

レースが終わった翌日に、ブリュッセル近郊でBMWディーラーを経営している友人に電話をし、後輪のタイヤ2本を注文。スパから約140㎞の道のりを、高速道路はトラックの後ろを時速80㎞で走行。ベルギーの高速道路の最高速度は120㎞なので、まだ速度差はさほど大きくありませんが、ドイツの速度無制限の区域だったらめちゃくちゃ怖かったと思います。
さて、それまで履いていたミシュランのパイロットスーパースポーツは翌日にあいにく在庫がなく他のメーカーになると言われたので、ミシュランが入荷するまで待ちます!とお願いし、指定日時に行くとあっという間に交換終了。グリップが良くなって走りやすくなりました。後輪駆動で1本だけ新しいタイヤというのもバランスが悪いので思い切って2本を新品に履き替えました。

友人であるバートさんの経営するディーラーにピットイン。

恐らく日本国内でパンクしてもパニックになりそうな私ですが、初パンクを外国で経験、それも夜遅くだったのでわちゃわちゃしてしまいました(苦笑)。ベルギーはドイツ語を話す方々も多いので、なんとか乗り切れましたが、これがイタリアやフランス、スペイン、ポルトガルなんかで起きたらそれこそ大パニックになりそうです。ちなみに、愛車のコネクトドライブからコンタクトを取ると、外国にいてもドイツ語のコールセンターに繋がりますので、それがやや安心なところでしょうか。

ベルギーの道はアスファルトが結構つぎはぎだらけの所も多くあり、ビックリするくらいの大きな穴が開いている事あります。(以前にその穴に気付くのが遅れてバンパーの下の部分を擦りました。

アントワープの街の横断歩道は虹色でカワイイ。

ところで、私は日本のJAFにあたるADAC(ドイツ自動車連盟)の欧州全般をカバーできる会員になっています。ドイツ国内のみのカバーよりも若干会費はお高いのですが、諸外国にも基本的に自走で行く私には安心料というところでしょうか。今回はたまたまBMWのサービスに電話をしたのですが、ADACに電話をして対処をして頂くという事も可能でした。ただ、BMWですとセンターで私の愛車がいる位置を把握してくださっていますが、ADACの場合は自分で正確な現住所を申し伝える必要があり、外国ではなかなかその土地の言語の発音ができなかったりするんだろうな、と後になって思いました。

アントワープの美しい中心地。

ベルギー国旗カラーの犬。

タイヤが新しくなり、次のサーキットでの取材までに少し時間がありましたので、アントワープまでドライブをして念願のアレを観てきました!日本人にはお馴染みのラララ~ラララ~♪の主題歌が有名なフランダースの犬の舞台となった聖母大聖堂を目指しました。
ベルギーに関わらず、都市部の駐車料金はお高いものです。インターネットで探し、市内に大きな無料駐車場がある事が分かりましたので、そこに停められればラッキーですが、高速道路からアントワープ市内に向かう環状線ですでに大渋滞でイヤな予感。渋滞を抜けて市内に入ると、一方通行だらけです。郊外のP+R(パーク&ライド)を利用しなかった事をちょっと後悔しましたが、無料駐車場に無事に駐車できました。

ネロとパトラッシュの像。

歩いて旧市街へ入り、歩いているとオシャレな雑貨屋さんやセレクトショップが目に入りましたが、まずはフランダースの犬! 大聖堂はあいにく工事中でしたが、中には無事に入る事ができました。荘厳で美しく、両壁面のステンドグラスが圧巻です。ネロとパトラッシュが天国に召した悲しい物語ですが、聖母大聖堂に飾られている念願のルーベンスの絵を観る事ができたのは大感激でした。

ネロが見たルーベンスの絵。

聖母大聖堂の中央。ネロとパトラッシュが物語の中では天に召した場所。

ネロとパトラッシュ。友情の物語として石碑に刻まれる。

聖母大聖堂の前には『ネロとパトラッシュ 友情の物語』としての日本語の石碑やネロとパトラッシュの石像もありました。
日本人ならほぼ知らない人はいないと言ってもよい名作の『フランダースの犬』ですが、私の周りのベルギー人の友人らは誰も知りませんでした!アントワープに出掛ける時には、宿の方に「これからフランダースの犬の舞台になったアントワープに行くんです」って言ったのですが、はて?という感じでした。日本のアニメが好きで、子供の頃から観ていたという従業員の方にもフランダースの犬のアニメの画像を見せたのですが、「ハイジとタッチは似ているけど、この物語は知らないな~」と。イギリス人作家の作品だからかも知れませんが……。

ベルギーの国民的スナックのフリッツ(フライドポテト)はあちらこちらに売っています。美味しい!

聖母大聖堂を見学した後は、街をぶらぶらしてみたのですが、もうなんだかすっかりルーベンスの絵で満足してしまって、さらっとお散歩をして宿に戻りました。旧市街は古代・中世の建物が多く残り、まるでおとぎの国のようなかわいらしさです。街のあちこちのレストランでは名物の『ムール貝あります』的な看板が多く出ていましたが、以前にやはり7月のレースの帰りにベルギー人の友人にムール貝を食べに行こうと誘ったところ、ムール貝はberが付く月(9~12月)に食べるもんだ、と教えて頂きましたので、それ以来はその教えを守って旬の時期に食べるようにしています。

キオスクには数多くの種類のビール。

クルマで毎日移動していたせいか、せっかくのビールの国のベルギーに2週間もいたのに一度も飲む事なく帰国してしまいました。恐らく今年はもう行く事はないかと思いますので、来年は色んなフルーツビールを飲むのを楽しみにしたいと思います。

この記事を書いた人

池ノ内 ミドリ

武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。

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