ゴルフIIIカブリオ(前期型)1992~98年
ゴルフIIIの上陸から半年後にIボディのカブリオ最終型が発売され、その約1年半後にカブリオとしては2世代目となるIIIのカブリオが上陸。カルマン社によるコーチワークは継続されるがボディ、シャシーともに一新され、エンジンも1984ccの2E型を搭載。厚めのフェンダーアーチモールの装着により登録は3ナンバーとなる。
14年ぶりのフルチェンジ。ようやく2代目が登場
’92年4月にゴルフIIIのデリバリーが始まった時点では、カブリオはラインナップされていない。その6カ月後、’93年モデルが発表されたときに復活するが、相変わらず旧来のIボディ+2H型エンジンと、ルックスだけでなく中身も「クラシック」。すっかり変わってしまったゴルフIIIに対して、伝統の丸目4灯ヘッドランプを残したカブリオにシンパシーを感じる人も少なくなかったようだが……。価格も361万円と安くはなかったが、370万円のVR6の登場によりゴルフ最高価格車の座を明け渡している。
だが、このIボディのカブリオはこれが最後となり、’94年3月にはついにIIIボディのカブリオが上陸。14年を超える長いモデルサイクルの間にIボディのカブリオは国内でも約4300台がデリバリーされたが、ここで2代目カブリオへとバトンタッチされることになる。依然としてカルマンによるコーチワークは継承され、補強に効くセンターロールバーを残すスタイルも踏襲。エンジンはGLiと同じ2Lの2E型が搭載され、トランスミッションも4速ATへと進化している。
サイドシルやフロア、バルクヘッドなどの補強に加え、スカットルシェイクを防ぐ防振ウエイトがリアに装着され、快適性は飛躍的に向上。さらにボディの一新によって室内も広くなり、リアシートのニースペースは前後方向に78mmも広がっている。トランクスペースも幌をたたんだ状態で270Lと、先代に比べて50L増量されており、トランクスルー機構を備えるなど使い勝手も大幅に向上。幌も6層式となって防音性や耐候性が確保され、雨の多い日本での日常使用にも十分耐えるオープンカーへと進化している。なお、基本ボディは日本の5ナンバーサイズに収まっていたゴルフIIIだが、このカブリオとGTI、VR6は樹脂製のフェンダーアーチモールを装着していたことで車幅が1710mmとなり、3ナンバー登録となっている。
ボディカラーもクラシックラインで設定されたグリーンパールやブルーパールが標準で設定され、一方で価格は353万円のGTIより安い348万円までダウン。オープンボディのゴルフを望んでいた人には嬉しい設定となる。
その後、’95年モデルではエンジンが2Lのままながら、燃料噴射システムが同時噴射のデジファントからシーケンシャル噴射のジーモスへと進化。エンジン型式もADY型となって低速でのフィーリングや燃費が向上している。’96年モデルでは他のゴルフIIIに合わせてアンテナをショートタイプへチェンジ。カブリオの場合は屋根(幌)に付けるわけにはいかないので左フロントフェンダーにセットされ、合わせてオーディオも変更。さらにシートヒーターが標準装備となっている。
’97年モデルではエンジンがさらにリファインされAGG型へ進化。内部のチューニングで低速域でのレスポンスも向上し、III用のエンジンとしてほぼ完成域に達する。そしてIIIのカブリオの最終型となる’98年モデルではリアブレーキがディスクとなり、キーは偽造しにくい内溝式に変更。パワーウインドーも挟み込み防止機構付きとなり、価格は329万5000円と最安値を更新している。
このIII時代の特別限定車で興味深いのが、’96年に設定されている「カブリオ・ボン・ジョヴィ」と「青いカブリオ・ボン・ジョヴィ」だろう。VGJ(フォルクスワーゲン・グループジャパン)がロックバンド、ボン・ジョヴィのジャパンツアーの冠スポンサーとなった記念の特別仕様車だが、6連奏CDチェンジャーとBONJOVIステッカーが付く程度だった「ボン・ジョヴィ」に対して、「青いボン・ジョヴィ」は本革シートやBBSホイールなどが標準装備されている。2モデル合わせて700台と台数は少なくないが、中古車市場でもなかなか見つからないレア車でもある。
もう1台、’97年に発売された「ブラック&シルバー」は’98年モデルを先取りした装備(リアディスクブレーキなど)を与えられた限定仕様で、センターピラーにはカルマンの紋章エンブレムが付けられている。台数は300台(シルバー200台、ブラック100台)と少なかったが、今も中古車専門店でときどき目にすることができる。