テネシー工場にEV生産ラインを整備。市場の動向に応えてガソリン車生産ラインも残す選択に
中国でも2035年までにすべての自動車の電動化を目指す方向性が示され、実現するかどうかは未知数ながら、世界的な電動化の波は強まる一方だ。一方でアメリカではトランプ政権化でシェールオイルの採掘が進み、内燃機関の優勢が続いている。政治的な要素も絡むだけに、10年程度でどこまで電動化が進むか予想しにくいが、自動車メーカーはどちらにも対応できる体制を整えておかなければならず、電動化への投資も進めざるを得ない状況となっている。
米国の最大メーカーであるゼネラルモーターズ(GM)も例外ではなく、米国テネシー州スプリングヒルの組み立て工場を電気自動車(EV)の生産拠点へ転換すると発表。新たなEV専用プラットフォームを開発し、ホンダへの供給なども決めているGMはEVシフトを鮮明にしているが、これでスプリングヒル工場はデトロイトのハムトラミック工場、オリオンタウンシップの工場に続く3番目のEV工場となる。キャデラック・リリックなどのEVを生産するこの工場には20億ドルの投資がなされる予定で、EVシフトをより強化する考えだ。
一方で需要が高く、利益率の高いピックアップトラックや大型SUVの生産拡大にも余念がない。CO2 規制に消極的だったトランプ政権の影響もあり、米国では大型ガソリン車の需要は衰えず、GMもシボレー・シルバラード、GMCシエラ、シボレー・タホ、サバーバン、キャデラック・エスカレードなどの生産工場にも投資。燃費向上を図ったガソリン車の生産にも力を入れていく構えだ。
米国内では電動化車両の普及は緒についたばかりで需要はさほど高まっておらず、需要の高い最新ガソリン車の供給は欠かせない。一方で巨大市場の中国での電動化進展、欧州でのCO2 規制を考えると、電動化のノウハウを蓄えておく必要がある。GMもそういった状況に対応すべく、両方向作戦で生産増強を図る考えのようだが、底力のあるメーカーだけに日欧メーカーとは違った電動化をどう進めてくるのか興味深いところ。ピックアップトラックの電動化などで保守的といわれる米国ユーザーの心をつかむことになるのか。今後の動きに注目したい。
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