去る8月に富士スピードウェイで開催されたレイズ・ワールドツアーで、純正ホイールとレイズ製ホイールとを同一条件下で走らせて比較検証した。GRスープラのステアリングを握った山野哲也選手にその違いを訊いた。
ホイールの性能差が挙動に与える影響とは?
「ピットロードを出て、スロットルを踏みながら本コースへと舵を切る。その時から如実に“違い”を伝えてくるんです。それは決してサーキットドライブでしか感じ取れないものではない。例えば高速道路のレーンチェンジとか、タイヤの限界まで使わないシチュエーションでも鮮明にわかります」
富士の本コースで実施された同乗走行。山野選手を始めプロドライバーが集い、あらゆるジャンルのデモカーを走らせた。GRスープラでは純正ホイールとの比較も実施した。
山野哲也選手は、落ち着いた語り口調で説明しながら、しかしGRスープラを限界近くまで攻め続けた。富士スピードウェイで開催されたレイズワールドツアーでの一幕だ。毎年、レイズのブランド訴求のため、海外で開催されてきた製品展示会だが、今年はコロナ渦の影響を受けて日本での開催となった。しかし、場所が富士スピードウェイとあれば企業理念に“コンセプト・イズ・レーシング”を掲げるレイズにとっては、むしろ相応しい場所だと思えた。この日は新製品発表や展示のかたわらで、全国各地から集ったチューニングカーの本コース走行が実施された。山野選手がステアリングを握るGRスープラは、純正ホイールとレイズ製ホイール(ボルクレーシングG025)とをその場で履き替え、同幅サイズという条件下で、動きや感触を比較するという粋な試みだった。筆者はこれに同乗する機会に恵まれた。
上が純正18インチ、下が同幅1インチアップ19インチのボルクレーシングG025。純正も鍛造品で高性能だが、G025はそれを凌ぐ性能を持っていた。タイヤはF:255、R:275サイズ。
冒頭のコメントにある“違い”を掘り下げると「まずは軽さ。操舵を開始してからクルマが動き始めるまでに重さを感じさせず、まるでクルマ自体が軽くなったかのよう。クリッピングポイントに向けて切り込んでいくようなときも、操舵に対して忠実に動いてくれる」という。これが軽量ホイールであることの恩恵なのか。
「もちろん“軽さ”の効果は絶大です。しかし、それだけではありません。その上に成り立つ剛性の高さこそ、軽やかで意のままの動きを実現していると思います。時差を感じさせることなく反応してくれるとは、まさにこのこと」
エンジニア達が純正ホイールとG025とを交換してくれる。比較の公開は、レイズが己の製品に持つ自信の表れだ。
優れたホイールは“時差”を感じさせない。と、事あるたびに山野選手は述べていた。それを一番感じるのは、富士で一番の高速コーナーとなる100Rだという。
「操舵してからのフロントの反応に時差がないのに加え、リア側の出方や戻り方も同じ。つまりアンダーやオーバーが出たとき、それに対処する操作に対して素早く忠実に反応してくれる。つまり、とても乗りやすく使いやすいクルマへと変わったということです」
この感触を裏付けるワンシーンは、走行を終えたピットにもあった。純正ホイールでの連続走行時は、ピットに帰ってくるとブレーキからもうもうと白煙を上げていた。しかしG025に履き替えたら、ほぼ同じペースと周回数だったも関わらず、白煙の量が明らかに減ったのだ。ブレーキに対する負担が減っている証であり、山野選手いわく「厳密にアタックをしてクルマの限界を探れば、ブレーキングポイントはもっと奥になっていくはず」と言っていた。
山野哲也選手はスーパーGTからジムカーナまで幅広いジャンルで優勝経験が豊富なレーシングドライバー。彼の走りをレイズは30年以上も支えた。彼自身、レイズには絶大な信頼を置いており、共に過ごすコダワリの愛車にも必ずレイズを取り入れてきた。
ホイールだけでクルマの性能は明らかに変わる。その性能を高めるだけの製品力は、ボルクレーシングG025を始めレイズ製ホイールにはしっかりと内包されていた。それをプロドライバーの手腕を持って証明してみせたのだ。
「GRスープラで厳密なタイムアタックをするとしたら、富士であれば1秒以上は短縮できるでしょう」と、締めくくった山野選手の言葉がとても印象的だった。
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