※この記事は2008年12月に発売された「VW GOLF FAN Vol.18」から転載したものです。
パフォーマンスだけではなく環境性能も考慮した210ps
今度のゴルフGTIに関しては、VWの動きはなかなかにして素早い。パリ・サロンで本家ゴルフVIをショーデビューさせたと思ったら、それと同時にGTIコンセプトカーを登場させてきたのだ。しかも写真の通り、完成度はほぼ市販レベル。そう、ゴルフVI・GTIが公道を走り出す日へのカウントダウンは、すでに始まっているのだ!!
その成功はすでに約束されている!?
それは5年前、ゴルフVが発表されたフランクフルト・モーターショーの時と同じである。VWは最新型であるゴルフのワールドプレミアが行なわれたパリ・サロンの会場で、早くもコンセプトながらGTIの概要を惜しげもなく公開したのだ。
普通のメーカーだったら、あるいは車種だったら、新型車を隅に追いやるようなこんな発表はまずしない。しかし、これはゴルフ。それしきのことでインパクトが薄れてしまうようなタマではない。GTIもそう。いまその姿を公開したところで、簡単に興味が失われてしまうようなモデルではないはずだし、そこには自信もあるのだろう。「GTI is BACK.」を高らかに宣言した現行GTIの大成功も、その強力な裏付けとなっているのは明らかである。
では、新しいゴルフGTIは一体どのように進化したのか。その自信の根拠は何なのか。ゴルフの試乗で得た印象と、今回明かされた概要から、占ってみたい。
まず触れなければいけないのは、その外観だ。そのインパクトの大きさは、現行GTIの時にも負けていないように思う。
フロントマスクからはワッペングリルが一代限りで姿を消した。代わりに採用されたのは、ゴルフW12コンセプトで暗示されていた横一文字のハニカムグリル。ブラックをベースに上下に赤いトリミングが施され、中央部に大きなVWマークを戴くデザインは、初代GTIを彷彿とさせるものだ。ヘッドランプは、ベゼルをブラック塗装として凄味をプラス。バンパー下側にも大きな開口部が設けられ、やはりハニカムグリルがはめ込まれるが、これは左右のエアインレット、そしてフォグランプまで連なるカタチとされ、ワイド感を強調している。
現行GTIのフロントフェイスがこれだけ受け入れられているだけに、敢えて戻さなくても……という気もしなくはない。しかし、ベースとなるゴルフが精神的な意味で原点回帰を果たしていることを考えれば、それが表面的な意匠に反映されるのは不思議なことではない。というより、GTIはあくまでゴルフの一ラインナップであり、その象徴。共通の精神性を持たせんとするのは当然だろう。
その他の部分も、案外あっさりとした仕立てだ。リアバンパーは中央部をディフューザーのように抉った形状で、その両脇からはクローム仕上げのテールパイプが顔を覗かせる。サイドスカートもそれに倣った形状。目立つのはルーフエンドの大型スポイラーくらいだ。しかし、サイドモールが廃されたこともあって全体にスッキリした分、逆にメッセージ性はグンと強まっているともいえる。
インテリアの仕立てもGTIの文法通りである。ステアリングはDシェイプの専用リムを使ったものとされ、シート地は専用のチェック柄に。もちろんクオリティの大幅な向上は、GTIも一緒だ。加えて、ダッシュボード上面とフロントウインドーの間にあった段差がなくなり、ボンネットまで貫く前方視界がスッキリしたことも見逃せない。文章や写真だけでは解りづらいかもしれないが、実際にドライバーズシートに座ってみれば、これだけで俄然、クルマとの一体感が高まっていることに気付くはずだ。
もちろん、GTIを名乗る以上、走りは何より重要な要素である。キーワードである「ピュアなダイナミクス」という言葉は解釈が難しいが、スペックや装備からは高いパフォーマンス、ダイナミクス性能を、より洗練されたカタチで体験できるものに仕上げる、という方向性を見出すことができる。