欧州の電動化、徐々に進む

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増加傾向を保って7月は新車の18%が電動化車両に。VWはID.4の生産も開始

欧州の新CO2規制(燃費規制)が一段と厳しくなる2021年が迫り、徐々にではあるがEU(欧州連合)内での電動化車両の比率が高まってきている。新規制は、現在各メーカー平均(企業平均値)で120g/kmを超えているCO2排出量を、95g/km以下としないと罰金が課せられるという厳しいもので、その罰金は95g/kmを1g/km超えるごとに95ユーロ(約1万1900円)× 販売台数と小さくない。メーカーによっては1000億円レベルの罰金となる可能性もあり、経営に大打撃を与えかねない。

ザクセン州のツヴィッカウ工場で生産されるフォルクワーゲン ID.3。ID.4もこの工場で生産される。

95g/kmという数値は日本での燃費に換算すると20~22km/L程度なので、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車ならクリアはさほど難しくはない。だがハイブリッド車の普及率が35%を超えている日本ならいざ知らず、ガソリン車やディーゼル車がまだ主流で、電動化車両はまだプレミアムクラスというのが実情の欧州では高いハードルとなる。
このところドイツメーカーを始め、欧州メーカーが48Vマイルドハイブリッド車やPHV車に力を入れているのもそのためで、フォルクスワーゲン(VW)のID.3やID.4の投入もそういった背景がある。ダイムラーやBMWも販売台数における電動化比率がいかに高まったかをリリースなどで強調しており、追い込みの時期を迎えて電動化傾向は急進している。ちなみにこの規制はあくまでも企業平均値にかかるので、EVなどCO2排出量の小さいクルマをたくさん売れば、人気のSUVなどガソリンを食う大排気量車のぶんを相殺できるという側面もある。そのため、各社ともまずはCO2排出量の少ないクルマを台数が稼げる小型車クラスに投入する方向で動いている。ホンダの新型EV、ホンダeが欧州では価格もやや低く設定し、年間1万台と日本の10倍売ろうとしているのも、この規制に対応するためだ。
英国の調査会社であるJATOダイナミクスによると、今年上半期(1~6月)のEU圏内21カ国の乗用車のCO2排出量は、1台当たり118.5g/kmとなり、規制値の95g/kmとの隔たりは小さくない。燃費がいいとはいえないSUV人気の高まりなどが影響しており、規制をクリアするには電動化が欠かせないとしている。国別でも販売台数の多いドイツや英国でCO2 排出量が増加しており、年明けまでに規制値達成なるかどうか難しい面もある。
一方で新車販売に占める電動車の割合は、今年1月の13%から、4月には17%、7月には18%と徐々にだが高まっており、台数でも7月は前年同期比31%増の約23万台と過去最高を更新。その半分が48Vマイルドハイブリッドも含むハイブリッド車で、ハイブリッド首位はトヨタCH-R、PHVはフォード・クーガとここでもSUV人気が高く、PHV2位はメルセデス・ベンツAクラス、3位ボルボXC40、4位BMW3シリーズとプレミアム系も電動車増加に貢献している。EVはまだまだ少ないが、VWのID.3の登場で台数は増え、さらにツヴィッカウ工場で生産の始まったSUV、ID.4の追加で普及が早まる可能性は高い。何社かは罰金を払うことになるのか、あるいは新型コロナによる経済停滞により猶予期間が設けられるのか、そのあたりはまだ不透明ながら、欧州における電動化の流れが今年から来年にかけて加速することは間違いないだろう。

ルボラン2020年11月号より転載

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