日常のパートナーという視点からコンパクトカーに求められる要件を挙げるなら、あらゆるシーンでストレスを感じさせないというのが第一ではないだろうか。それは取り回しを苦にしないサイズ感であったり、ごく自然に手が届く操作系であったり、素直な身のこなしであったり。最新のスイフトはすべてを兼ね備える。
舌の肥えたユーザをも納得させる質の高いパフォーマンス
今回の記事では1.2L直4エンジンに小型モーターを組み合わせたハイブリッドRSを試乗に連れ出した。
外観でいいなと思ったのが上質で大人っぽい雰囲気だ。赤いコンパクトカーというと、とかく可愛らしい方向に振れがちだが、深みのあるバーニングレッドパールメタリックと新設されたブラックルーフの組み合わせが表情をキリッと引き締めている。従来よりも立体感を強めたフロントグリルや、ブラックをベースに切削加工を施したアルミホイールもそんな印象を強めている理由。スイフトはもともと「走り姿」がとても美しいクルマだが、ハイブリッドRSの上質感は街角にポンと置いただけでもはっきりと伝わってくる。お洒落な街に似合うというよりも、街をお洒落にする力がある、という表現すら使いたくなる出来映えだ。
3855×1695×1500mmというボディサイズはどこにでもスッと停められ、乗り降りしやすく、機動性に富んでいるが、質感や存在感は犠牲になっていない。こうした持ち味は、たとえば大柄な輸入SUVを所有されている方のセカンドカーとして遺憾なく発揮されるだろう。いくらコンパクトで扱いやすくとも、クォリティの面で舌の肥えたユーザーを納得させられなければ、それは「我慢」とか「割り切り」の選択になってしまうからだ。
同じことが走りにも言える。スイフトの走りを象徴するのはスイフト・スポーツだが、なかなかどうしてハイブリッドRSも負けてない。スイフト・スポーツから「スポーツ」を引いたのではなく、スイフト・スポーツで培った高いボディ剛性やしっかりしたハンドリングといった優れた基本性能を、快適性や安心感に振り向けたという印象。その証拠に、発進直後のタイヤがひと転がりした瞬間からサスペンションがきれいに動いている感触が伝わってくる。高精度な計測器でも読み取れないこの独特の感触を人間は敏感に感じとり、気持ちいいとか質感が高いと認識するわけだが、開発者がもっとも苦労する部分でもある。
最近ではずいぶん謎が解けてきて、ボディ剛性とダンパーの動き始めの特性が鍵だということがわかってきたが、そこを磨き上げるには徹底的に走り込んでチューニングを重ねていくしかない。逆に言うと、この部分がよくできているクルマには、高いボディ剛性と精度の高いダンパーと開発陣の汗と努力が備わっているということ。これは「走り始めの感触がいいクルマは飛ばしても例外なくいい」という僕の経験値とも合致する。
実際、ハイブリッドRSは街中の低速域から高速道路にいたるまで、あらゆる速度域で「芯のあるしなやかさ」と「厚みのある軽快感」を味わわせてくれる。ポンポン跳ねたりガツンという衝撃を伝えてくるような薄っぺらさを感じさせることは皆無。頼もしい直進安定性や滑らかで正確なステアリングも好印象だった。有り体に言うなら、コンパクトカーのレベルを超えた乗り味、ということになる。
1.2L 4気筒エンジンに小型モーターとCVTを組み合わせたパワートレインもいい。巧みな変速制御によりCVTの癖は上手に封じ込められているし、パワーフィールも上々。なにより常用域での静粛性と滑らかさが、クルマ全体のキャラクターと見事にマッチしている。
スイフト・ハイブリッドRS。質の高いコンパクトカーをご所望なら、ぜひとも購入候補に入れておくべき一台である。
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