【国内試乗】「BMW M8グランクーペ/クーペ」正真正銘、これが最強の「M」

まさにエキサイティング、コーナーでMの本領を発揮

ダンパーの減衰力を連続可変制御するアダプティブMサスペンションは、コンフォートにしたままでもアクセルを踏み込むと同時にリアが沈むといったボディのムダな動きが抑えられている。ホイールベースがクーペよりも200mm長いグランクーペは、よりフラットな姿勢が保たれる。

ただ、ホイールベースの長さはステアリング操作に対する応答性に影響する。クーペは、コーナー進入時にステアリングを切り始めた瞬間から思わず“ウオッ?”と声を発してしまうほど長いノーズがクイッと向きを変える。そのまま切り込んでもダイレクトな反応を示し、グイグイと曲がっていく。まさに、ハンドリングはエキサイティングなのだ。

グランクーペは、クイッという切れ味が実感できるもののグイグイ曲がるようなダイレクト感は期待できない。だが、それも挙動を言葉で表現した場合の微妙な差であり応答性にもの足りなさを感じることはない。むしろ、前後重量配分ではグランクーペの方が1ポイント違いながら好バランスなのでコーナリング中に4輪が路面をガッシリつかむ実感があり、スタビリティの高さにも結びつく。

8シリーズ同様、ルーフはエアロダイナミクスと軽量化に貢献するカーボン強化プラスチック(CFRP)を採用。試乗車のフロントとリアのエアインテーク、エアブリーザーのサイドギルなどはオプションのカーボン製となる。

路面をガッシリつかむといっても、乗り心地までゴツく感じることはない。サスペンションはスムーズに動き、制御がコンフォートならしなやかささえ実感できる。クーペは、制御をスポーツにすると路面によっては目に見えないような荒れの影響でヒョコヒョコとボディがわずかに縦揺れすることもあるが、グランクーペならそれも気にならず落ち着いた乗り味となる。それは、後席でも同じだ。

だが、路面のザラつきをタイヤが拾うと、グランクーペの後席ではゴーッではなくボーッという感に聞こえる低周波ロードノイズが耳に届くことがある。それでも、ボリュームは抑制され響くこともないので不快感とは無縁でいられる。クーペは、キャビンの空間がグランクーペよりも狭いだけに前席でもロードノイズが少しばかり響きやすいが、ジェントルな一面を損なわずに済む程度だ。

M8はジェントルな一面を備えるため、クーペはエレガンスが際立つスペシャルティカーとして、グランクーペはフル4シーターカーなのでラグジュアリーサルーンとして乗りこなせる。それでも、エキサイティングな本質は隠しようがない。場面を問わず、積極的な走りに誘いかけてくる。オーナーになるなら、ときに誘惑から逃れる自制心も必要になりそうだ。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年8月号より転載

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