2019年度の日本メーカーの決算が出揃う

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トヨタ、スバルは手堅くプラスを維持。2020年度の見通しは多くが 「未定」に

波瀾に満ちた2019年度(2019年4月~2020年3月)の国内自動車メーカーの決算が出揃った。グローバルでは最大のマーケットである中国の販売ペース減速、日本国内では昨年10月の消費税増税以降は販売台数が伸び悩んでいただけに、ある程度の業績悪化は避けられないところだったが、さらに2020年2月以降の新型コロナウイルス流行が追い打ちをかける形となってしまう。

国内乗用車メーカー2019年度業績日本メーカーは3月期決算なので新型コロナウイルスの影響が2019年度と2020年度にまたがる形になり、2019年度はまだ年度前半の貯金があるので救われた部分もあるが、そのぶん2020年度の決算は厳しくなると予測される。そのためトヨタ自動車を除くメーカーは、恒例となっている2020年度の予想(業績見通し)はすべて未定とし、予測できる状況となった時点で公表する形で足並みを揃えている。そのトヨタも売上高と営業利益の予想は示したものの、当期純利益に関しては未定としている。
乗用車メーカー8社の決算業績は別表の通りだが、売上高、本業の儲けを示す営業利益、最終利益となる当期純利益、世界販売台数ともにプラスを保ったのはなんとスバルのみ。北米でフォレスターやアセントといったSUVの売れ行きがよかったのに加え、円高による為替差損も290億円に抑えた結果だ。
そのスバルをグループ傘下に置くトヨタは、過去最高の売上高をマークした昨年9月の中間決算から一転して売上高、営業利益ともに小幅ながらマイナスへ後退。3050億円という巨額の円高為替差損をこうむりながら2ケタ増の純利益を確保するあたりはさすがだが、2020年度の業績予想では売上高が19.8%減、営業利益は79.5%減の5000億円と厳しい見通しを示している。販売減だけでなく生産停止にもおよんだ新型コロナウイルスの影響は4月以降のほうが大きいので、それも織り込んでの予想と思われる。その落ち込みをどこまで抑えられるかが2020年度のカギとなりそうだ。
ホンダは為替差損が1058億円、同じくマツダは683億円、スズキが297億円と円高傾向による営業利益減は大きく、販売減と合わせてかなり厳しい数字が並んでいる。冒頭に述べたようにいくつかのマイナス要因が重なった結果だが、これに4月以降の新型コロナウイルスの影響が加わることで2020年度はより厳しい状況が予測される。
そして大方の予想通り日産自動車は営業利益、純利益ともに赤字となり、三菱自動車も純利益が赤字となる。2008年11月のリーマンショック後の2008年度決算ではトヨタ、日産、マツダ、三菱、スバルの純利益が赤字となったが、6700億円を超える日産の赤字額はそのときの3倍近い。ルノー・日産・三菱アライアンスの今後の計画に関しては別項に譲るが、この状況を打破するにはかなりの覚悟と痛みが求められることになりそうだ。
8月に公表されるであろう2020年度の第1四半期決算、11~12月に公表される中間決算ともに各方面から注目されるのは必至だが、この苦難をどう乗り切って回復につなげていくのか、歴史に残る年となることは間違いない。日本経済の屋台骨である自動車産業が、メーカーやサプライヤーの枠を越えてどんな形で試練に立ち向かうのか。しっかり見届けていく必要がありそうだ。

ルボラン2020年8月号より転載

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