「ディフェンダー・ローンチ・エディション」の150台は、予約開始から4日間で予定台数に達成し受付終了。公式サイトにはカタログもアップされ、日本への第一便は今夏を予定している新型ディフェンダー。ここでは仕様書に記された性能や機能から新型の出来栄えを予想する!
モダンな新解釈でライバルとは一線を画す
新型ディフェンダーとはいかなるクルマか? 1948年の誕生以来、基本的素性をキープし、しかもカタチすら大きく変えることなく生産され続けた。ついにはリヴィング・レジェンドと呼ばれるようになった先代までの偉大な足跡を思えば、次にこの大名跡を継ぐクルマにはいやが上にも期待が高まる。クロスカントリー系車型では、やはり歴史の長いジープ・ラングラーやメルセデス・ベンツGクラスがキープコンセプトでのモデル更新によって長寿と繁栄を誇っているが、ディフェンダーはというと、実に見事なまでにしがらみを脱ぎ捨てモダンな新解釈を披露してくれた。
エクスプローラーパック(90、110ともに55万4840円)、アドベンチャーパック(90、110ともに37万40円)はオススメのアクセサリーパック。
シンプルでモダン、そして機能的。百花繚乱のSUV業界だが、まだこういう切り口が残っていたようだ。近年オフロードに連れ出すには繊細過ぎる、もしくはやたら豪奢さを競うニューモデルばかりとお悩みの皆さん、お待たせ! 新しいディフェンダーです。
本国のテレビCMでは新型ディフェンダーが映画『007』シリーズ最新作『No Time To Die』で活躍する制作現場の映像が使われた。
デカいが軽い。アルミモノコック採用の効果は顕著で、全幅2mという堂々たる体躯ながら、ダイエットしてますと言い切れる優等生。日本仕様のエンジンは2L 4気筒のガソリン。車重とトルクのバランス的には過不足なく、確かに標準仕様として妥当だと思う。エコなディーゼルも威勢の良い直6ガソリン+電動アシストターボも、今はまだおあずけだ。
タブレットやスマートフォンでエクステリア、インテリア、アクセサリーパックの仕様を試せるアプリ「DEFENDER AR」の提供を、App StoreおよびGoogle Playで開始。
軽量幅広な車体構成は運動性能にも生かされており、車体のロールは想像よりずっと小さいだろうし、機敏な操舵レスポンスも持っている。つまりちゃんと今時のSUVのツボを押さえている。ただ狭隘路だらけのエリアでは2m幅はちょっと厳しいだろう。
最新インフォテインメントシステム「Pivi Pro」を初採用。10インチのタッチスクリーンは、よく使う操作や機能をホーム画面に設定できる。レイアウトのカスタマイズや情報や機能の追加も行なえる。
さて下馬評どおりオフロード性能は凄いのか? アプローチ、ディパーチャー、ランプの3アングルは市販車では最良クラス。なんといっても前後オーバーハングの短さは不整地で断然有利。さらに地上高は車高調整式エアサスの助けを借りればかなりのもの。
アクスルアーティキュレーションは、もはやリジッドアクスルではなく4輪独立懸架だから、これは並。よって起伏の激しい路面では3輪接地になりやすい。つまり接地荷重変化が激しいので、タイヤの空気容量やトラコン、デフロックでカバーする必要がある。
クロカン重視派は、オプションで最も空気容量の大きい18インチタイヤ(素敵なスチールホイールもある!)を選ぶべし。純正仕様だと外径33インチのタイヤまで使えるので、ちゃんとオフロードタイヤにも対応できる。
イヴォークで初採用された車体下の路面とホイール位置をセンターディスプレイの映像で確認できる「クリアサイトグラウンドビュー」も装備。オフロードでは活躍しそうだ。
では、レンジ、ディスコとはどう違うのか? プラットフォーム的に姉妹関係にあるのだが、テイストは大いに異なる。フラットで床下全面に及ぶアンダーキャリッジ・プロテクションは本格志向だし、超走破性指向のSWB(ショートホイールベース)である90が用意されている点も大名跡に恥じぬ。結論を言えば、ディフェンダーは全く路線の異なるモデルってこと。オーナーにとってさらに好ましいのは、インテリアなども独自性を強く打ち出していて、廉価版のような微妙さは感じられない。
もはやダークホースではない。もちろんたくさんの荷物とともに旅に出るのはディフェンダーの真骨頂だが、「お客さん」の荷物や遠征をサポートする装備を運ぶツアーオペレーターなどのプロが使う「仕事車」かというと、今やもう違う。新世代のディフェンダーはあくまでもプライベートカーとしての立ち位置にあり、スチュワードの運転するクルマとはあまり想定されなくなった。楽しく快適に遠征を楽しむのが新型ディフェンダーの方向性であり、男は黙ってプロ仕事みたいなストイックなお役目は旧守派のトラックたちにまかせるべし。