スペースをシェアしながら賢く使う必要がある
PSAグループでは最大のSUVであるプジョー5008だが、今回の3台の中では最もコンパクトで、全長4640mm、全幅1860mmのボディは街中での取り回しも苦にならないサイズといえる。そのぶん室内の広さも限られるので、3列シートのレイアウトにも苦労の跡が見られる。サードシート自体はシンプルな作りで、座面長は短めながらクッションの底突き感もなく大人でも十分座れる。だがセカンドシートのスペースを十分確保した状態だとフットスペースはミニマムで、7人乗車するにはスペースを上手くシェアする必要がある。
ただ、セカンドシートは3分割でそれぞれスライドおよびフォールディングが可能なので、工夫すればそれぞれのスペースを確保できる。フォールディングはすべて手動なのである程度慣れが必要だが、4.6m程度の全長でこれだけのスペースが得られるメリットは大きい。ただしサードシートを起こした状態だとラゲッジルームの奥行きは30cm程度となってしまい、大きなモノは載せにくくなるので注意したい。
アウディQ7は全長が5070mmと5mを超え、全幅も1970mmと2m近いビッグボディを誇る。だが4WSの一種であるオールホイールステアリング(オプション設定)の効果で最小回転半径が5.3mと小回りが効くのに加え、視界のよさも相まって意外と取り回し性はよく、走らせていて大きさを感じさせない。
この全長と2995mmのホイールベースを生かした室内スペースは潤沢で、サードシートは乗り込みのときこそセカンドシートをダブルフォールディングしなければならないが、乗り込んでしまえばシートクッションも厚めで居住性は高い。サードシートの座面長、シートバック高も十分で、セカンドシート下部に爪先を入れる空間があるので窮屈さを緩和できる。セカンドシートは3分割でそれぞれ独立してスライドおよびフォールディング可能なので、スペースをシェアしながら賢く使うこともできる。
さらにサードシートは電動フォールディング機構を備え、スイッチはラゲッジルーム側と室内側の双方に備わっているので使い勝手もいい。また、サードシートを起こした状態でもラゲッジルームの奥行きは570mmあり、広大とはいえないもののそこそこ大きなモノも積み込める。オプションのアダプティブ・エアサスペンションを選べばラゲッジルームの荷物積卸し時にはスイッチひとつでリアの車高を下げることができ、重いモノを載せたいときには助かる。
ビッグアメリカンの味わい満載のキャデラック・エスカレードは全長5195mm、全幅2065mmとアウディQ7よりさらに大きく、とくに2mを超える全幅は壮観だ。だが見ての通りスクエアなスタイルゆえに前後左右の見切りがしやすく、広くない日本の地方道でも持て余すことはない。さすがに駐車のときは大きさを実感させられるが、左ハンドルゆえに道路左端ギリギリまで寄ることができ、落ち着いて運転すればすれ違いも怖くない。前後車輪の重量配分は前52%、後48%と実はQ7よりも50対50に近く、高速道路のランプウェイなどでも意外と挙動は落ち着いている。FRベースゆえのメリットのひとつだろうが、この特性が運転のしやすさにもつながっているようだ。
ビッグサイズゆえの室内スペースはやはり3車のなかでも随一で、とくに横方向の余裕度は高く、サードシートも3人乗車可能となっている。シート座面長、シートバック高もCセグメント車の後席レベルで、大人でもゆったり座ることができる。ただ、FRベース(トラックベース)のシャシーゆえか床面が高く、大人はどうしても体育座りとなってしまう。セカンドシートがパイロットシートなので中央席は足を伸ばせるがヘッドレストがない。長い時間乗るときは足が窮屈にならないよう姿勢を工夫する必要がありそうだ。
サードシート、セカンドシートともに電動フォールディング機能が付いており、スイッチひとつでラゲッジルーム側からも操作が可能なのはアメリカ車ならでは。とくにシート自体が大きくて重いセカンドシートまで折り畳んでくれる機能は嬉しい。ちなみにサードシートを起こした状態だとラゲッジルーム奥行きは40cm程度と、あまり大きなモノは積めなくなる。
室内スペース最優先のミニバンとは違い、SUVへの3列シート搭載のハードルは低くないが、それを乗り越えるべくさまざまな工夫がなされており、使いこなす楽しみもある。SUV選びを考えるとき、候補に入れる価値は十分にあるといっていいだろう。