コロナウイルス、自動車業界にもインパクトを与える

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生産ライン停止や販売台数減となる一方で、人口呼吸器生産などで貢献も

新型コロナウイルスの蔓延が世界の自動車業界にも深刻な影響をおよぼしている。今年1月のウイルス発覚以降、その流行は中国、日本から欧州、米国へとまたたく間に拡がり、世界の多くの地域で生活を脅かす存在となった。経済へのインパクトも深刻で、自動車業界においては新車販売が大幅に減少し、それにともなう経済状況の悪化が懸念されている。

新型コロナウイルスの影響を受け、フォルクスワーゲンは3Dプリンターで医療者向けのフェイスシールドをいち早く生産した。

欧州主要ブランドの2020年第1四半期(1-3月)の世界販売台数を見ても、メルセデス・ベンツは14.9%減、BMWは20.1%減、BMWミニが23.4%減、ボルボが18.2%減と大幅に減少。欧州に限らず北米、中国、日本などすべての地域でマイナスとなっており、第2四半期(4-6月)はさらに悪化すると見られている。というのもグローバルメーカーはコロナウイルスの流行阻止のために各地の組み立て工場で生産停止を余儀されており、販売できるクルマ自体が減ってしまっているからだ。
日本メーカーも例外ではなく、すでに多くのメディアで伝えられているように全メーカーが国内外で工場ラインを一時停止し、海外では従業員の一時帰休、国内でも人員の削減など生産縮小が図られている。日本では4月7日の非常事態宣言による外出自粛などで消費マインドも大きく冷え込み、新車販売も低迷。3月はまだ2月以前に売れたクルマの登録があり、落ち込み幅は10%程度にとどまっているが、自粛要請が本格化した4月以降はマイナス幅がさらに拡がると思われる。
各国のGDP予測も明るい材料はなく、ドイツは1970年に統計を取り始めて以来最大の下げ幅、フランスは1920年代の大恐慌以来の深刻さと報道され、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)を含め、多くの信頼できる金融機関が2008年のリーマンショック以上の経済危機と認識している。
4月半ば時点では全く先の見通せない状況にあるが、一方で新型コロナウイルスのこれ以上の蔓延阻止に向けて、多くの自動車メーカーが予防に必要なマスクや医療用シールド、人口呼吸器の生産などを開始。あるいはそのための資金供出など、利益追求とは違ったところで力を発揮しつつある。米ゼネラルモーターズ(GM)と米フォードモーターは米政府からの要求ながら人口呼吸器の生産を開始し、フォルクスワーゲンは3Dプリンターで医療者向けのフェイスシールドを生産。VWグループのランボルギーニも縫製技術を生かしてマスクを生産し、同じく3Dプリンターでフェイスシールドも製作。BMWもヘルスケア車両の提供や医療品の提供を行い、ダイムラーも3Dプリンター技術による医療器具の生産に取りかかっている。

トヨタグループも医療用フェイスシールドの生産を本格化している。

日本でも政府が各自動車メーカーに人口呼吸器やマスク、防護服などの生産を要請し、それ以前から各メーカーが独自に医療器具の生産などに向けての準備を進めてきた。自動車メーカーの量産技術を生かせば、かなりのレベルの医療器具生産は可能と思われ、長期戦となる新型コロナウイルスとの戦いでその協力体制は欠かせない。生産停滞、販売減による業績悪化は避けられない自動車メーカーだが、ウイルス撲滅を目指し、そのテクノロジーと企業規模を生かした底力を示して欲しい。多くの人が期待している。

ルボラン2020年6月号より転載

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