一般的に非降雪地域では年間積雪日数は約4日だと言われている。その期間に、クルマを動かす機会があるかもしれない。そこで近年注目されているのがオールシーズンタイヤだ。早速、グッドイヤーの最新作を雪上でチェックしてみよう。
市場拡大が続きそうなオールシーズンタイヤ
近年、日本市場でもオールシーズンタイヤの認知度が高まり未購入者でもその割合は75%に達するという。そもそも、北米市場ではオールシーズンタイヤの構成比が高く約90%を占める。欧州市場でも構成比が上昇し、年平均の成長率が2024年まで14%を維持することが予想されている。
そうした市場動向において、グッドイヤーは40年の歴史があるオールシーズンタイヤのパイオニアだ。2016年にはベクター4シーズンズ、2018年にはアシュランスウェザーレディを日本市場に投入している。
オールシーズンタイヤは、その名の通り年間を通じて履き続けることが可能だ。冬タイヤとしてのスノー性能とアイス性能はスタッドレスタイヤに及ばないが、夏タイヤとしてのドライ性能とウェット性能については優れている。
実際に、2019年にはウエザーレディーを夏タイヤとして評価する機会があった。気になったのは、ステアリングを切り始める瞬間の応答性が穏やかなことくらいだ。そのため、スポーティなハンドリングを期待するなら不向きといえる。だが、舵角が大きくなるとトレッド部の溝内に立体的に刻まれた3D構造によりブロックが支え合うので剛性が増し、安心感ある接地性が発揮されるのだ。
なおかつ、オールシーズンタイヤはスノー性能とアイス性能を確保するためにトレッド部の柔軟性が高いので、夏タイヤとして快適な乗り心地を得ることもできる。溝の多さによりタイヤが発するノイズが少しだけ大きめになるが、意識すれば気づく程度の差だ。
さらに、今回は冬タイヤとしてスノー性能を試すことできた。ウエザーレディとスタッドレスタイヤのアイスナビSUVをRAV4に装着して違いを確かめると、高度な駆動制御システムの威力もあり特設コースでの走破性はほとんど同レベル。このタイヤは、SUV用サイズのバリエーションが充実していることも特徴。それだけに、非積雪地を走る機会が多くない4WDのSUVユーザーであれば最適な選択といえる。
また、軽自動車を含む幅広い車種用のサイズが揃うベクターとアイスナビ7をインプレッサに装着したところ、ステアリングを大きく切り込む場面で違いが認められた。操作に対する初期応答性には差を感じないものの、低速コーナーでスノー路面をつかみ続ける限界はアイスナビ7の方が奥行きがある。やはり、オールシーズンタイヤは万能ではない。アイス性能についても、スタッドレスタイヤとの走破性の差は埋め難い。
だからといって、オールシーズンタイヤの役割に物足りなさを感じるわけではない。不得意な場面は、より注意して走行すればいいわけだ。高速道路などで冬タイヤ規制が実施されても、M+Sまたはスノーフレークマークがサイドウォール部に表記されていれば走行可能。万が一に備えて、チェーンを用意しておけばより心強い。
なおかつ、夏タイヤと冬タイヤを2セット保有する必要がないので保管場所が不要になり、履き替えのコストは抑えられる。積雪地を走る機会が多くても、夏タイヤとしてオールシーズンタイヤを履くユーザーも増えているそうだ。秋から冬、あるいは冬から春という季節の狭間でもより以上の安心感を得るためだ。その意味でも、非積雪地であれば年に何度かの降雪の備えとしてオールシーズンタイヤは見逃せない選択候補となる。
取材協力=日本グッドイヤー www.goodyear.co.jp