カーアクションの撮影では“コカ・コーラ”が活躍!?
このDB5“スタントカー”をはじめ、1960年代に製作された“本物のDB5”、本作に登場する1986年製と思しきアストン・マーティンV8サルーン、同じく最新のDBSスーパーレッジェーラにイギリスのシルバーストンで試乗できるというイベントが2月半ばに実施された。私も世界中から選ばれた30名ほどの幸運なジャーナリストとともに、この貴重な機会を体験したので報告しよう。
ストロングが語ったとおり、DB5スタントカーの外観は本物とまったく変わりない。カーボンコンポジットで作られたというボディパネルも塗装が巧みなためか、目の前でオリジナルと見比べてもその違いはまったくわからない。「ロールケージが見えるのと、スタントカーのほうがフロントグリルの光沢がわずかに強いくらいしか両車に差はありません」というが、まさにそのとおり。映画で必然的に映ってしまうステアリングホイールにしても、オリジナルと寸分違わない細身のウッド製が用いられているうえ、ご丁寧にも当時のものによくある金属製の鋲まで打ち込んである。
コクピットに乗り込むと、ダッシュボードはオリジナルを模しているが、ドライバーの正面にはシンプルなアナログ式のスピードメーターとタコメーターが備わっている程度で、あとはほとんどの装備が省略されている。ギアボックスはマニュアルの4速。その手前にはスピンターン用の油圧式サイドブレーキが取り付けてあった。
シルバーストン内のストウ・サーキットで走らせると、その外観とは裏腹にボディ剛性が極めて高いことに驚かされる。自然吸気式と思しき“謎エンジン”のパワーは400psほどか。軽量なボディを走らせるには十分以上で、コーナリングではフロント荷重を作ったあとにスロットルペダルを強く踏み込めばテールが流れ始める予兆まで看取できた。ちなみに、ステアリングはパワーアシスト付きだがブレーキはノンサーボ。それでもレース用のペダル類を使ってのコントロールは容易で、ヒール・アンド・トゥがしやすいレイアウトに仕上げられていた。
ちなみに件のシーンはイタリアのマテラという街で撮影されたようだが、ヒギンズによれば路面のμが低すぎるため、広場にコカ・コーラ(!)を撒いてからスタントを行ったとか。ここで華麗な“ドーナッツ”を演じたのもヒギンズだが、回転するDB5のコクピットには本物のダニエル・クレイグが腰掛けているように見える。では、彼が本当にスピンターンをしたかといえばさにあらず、前輪を軸にしてクルマを回転する仕掛けを作り、これを人手で押して撮影したのだという。
ストロングによれば合計8台のスタントカーを製作。撮影で傷がつくたびにボディパネルを交換したという。そんな“DB5”が活躍する本作、早く劇場で見てみたいものである。
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