キャラクターの違いは動的性能に現れた
X5の試乗グレードは35d Mスポーツだ。メルセデスも直6を主力ユニットとする今、B57系もならではの美味しさが霞みつつあるのかと疑いながら乗ってみると、さにあらず。ディーゼル離れした回転の軽やかさや振動の少なさ、音の揃いぶりなどにBMWの内燃機屋としてのプライドが垣間見える。パワー&トルクは2.3Lトンに達するこの巨体を自在に走らせるには充分なもの。彼らが育て、素性を知り尽くしたZF製8速ATとのマッチングは抜群で、ATモードでのルーズなドライブでもMTモードでの素早い変速でも如何様にでも受け止める。
四駆の制御はセンターに電子制御多板クラッチを用いて最大50%を前輪側に駆動配分するxDriveだが、ワインディングでのドライブはスポーツモードを用いれば、後輪側の駆動力をしっかり効かせて後ろから車体を積極的に曲げていこうという躾がなされていることが伝わってくる。足周りは低速域で若干硬さも感じる程度に締められていて、ロール量も3モデルの中では最も小さいが操舵側からのインフォメーションは豊富で、大きなマスを操るという実感は伝わってくる。限りなく5mに近い全長と2mを僅かに超える全幅もあってキャビンスペースにはゆとりがあり、3列目シートもレッグスペースこそ限られるも、つま先の差し込みどころは天地に余裕があり、まずまず座りやすい。
GLEクラスの車寸はホイールベース含めX5とほとんど変わらない。全幅2m超の堂々とした体躯に7座を配する。3列目シートの掛け心地も同じようなところに収まるが、フロア形状やシートアレンジの関係か、足の収まりなどは両モデルにやや劣る。
試乗したのは300dと400dだが、4気筒の割に音・振動も小さく抑えられた300dは動力性能も含め、必要十分なパフォーマンスを備えている。が、やはり400dの6気筒はディーゼルにして回転は滑らかで音も心地よくパワーにも余裕あり……と、知ってしまえばその価格差も納得できるほど上質なのは確かだ。中高回転域に味があるX5のそれに対しては、低中回転域での実の詰まったトルク感を特徴とする辺りもいかにもメルセデスらしい。このOM656は近年の彼らのエンジンの中でも秀作だと思う。
乗り心地については、全車20インチタイヤを装着した今回の試乗車ではタウンスピード領域で路面の荒れを割と正直に拾い伝えてくる傾向があった。下したての個体でランニングインが進んでいないことも影響しているかもしれないが、こと快適性に対する期待値が高いメルセデスだけに、走り込んからのフィーリングを再確認したいところだ。もちろん速度域が中高速になれば、入力を途端に収束させてボディをピタッとフラットに保つメルセデスらしいライド感が味わえる。
GLEのハンドリングは至ってメルセデス的でニュートラルに纏められている。300dが前後均等配分のフルタイム4WDにであるのに対して、400dは理論上0-100%の駆動配分を自在に前後に配することが出来る4WDを採用しているが、後者であっても弱アンダー傾向というセオリーは守られているようだ。手堅すぎるといえばそういうことになるが、今やこのカテゴリーにもクーペという選択肢もあり、普通のGLEはあれもこれもと欲張らず王道のダイナミクスであればいいという判断ではないだろうか。
この3モデルは静的質感や使い勝手においては相当接近したところにいる一方で、動的な性格においては各社のキャラクターがよく反映されてもいる。選択においては乗ってフィーリングが合うか否かが重要な項目といえるだろう。