メルセデス・ベンツとBMWには、Aクラスや1シリーズといったプレミアムコンパクトのほかに、ファミリーユースに適したMPVが用意されている。ここではその2台をガチで比較してみた!
7人乗りの駆けぬける歓びか取り回しのよいBクラスか
218d xDriveグランツアラーはエマージェンシーな2席の3列目シートを備えるコンパクトミニバン。いわばトヨタ・シエンタの立派なやつなわけで、言い添えるならお値段はシエンタの約2倍とご立派なわけだが、異常にいいエンジンを積んでいる。「エンジン屋なんでこればっかしは手が抜けないんでさぁ」と気風のいい職人さんがバイエルンの青い空の下見得を切る様子が目に浮かぶ。分厚いトルクで下支えする2L直4ディーゼルは賢い8速ATと組み合わされ、力強くなめらかな加速でこれでもかと歓ばせにかかってくるから駆けぬけざるを得ない。BMWがインテリジェント四駆と謳うxDriveは、雪に気を揉む季節に心強い上に、高速での直進安定性にも貢献してシャキッとしっかり前を向かせる。
運転席からの眺めはミニバンらしく見切りがいい。2列目は前席より一段高く、窓も大きくて見晴らしがいい。3列目は前述の通りおまけ的なプラス2座で、日ごろはきれいに床下収納して広い荷室の恩恵にあずかるべきものだろうが、乗れるというのはいいことだ。たとえば7人で食事に行く時、誰かが運転を買って出てくれたら私は喜んで3列目に体育座りする(そしてお店に着いたらお言葉に甘えてビールをいただく)。
ただしBMWの常でなにせ足が硬く、低速域でのゴトゴトした乗り心地は残念だ。街乗りでは主に乗り心地のよさからB180に軍配を上げたい。見切りの点ではグランツアラーに見劣りするが、ジェットエンジンのタービン風エアコン吹き出し口をはじめとする華やぎと囲まれ感のあるスポーティなコクピットでありながら、着座位置が高く視界はいい。こちらはメルセデスの常で期待以上に小回りが利くので、華々しく搭載される運転支援システムに頼らずとも、狭い裏道や窮屈な駐車場で窮することはない。ちなみに最小回転半径はグランツアラーが5.7m、B180は5m。広さと取り回しのよさは欲しいがスポーティルックじゃないとイヤというわがままをどーんと受け止めてくれる。
B180に搭載されるのは1.4Lだがさもありなん、2Lディーゼルと比べたら非力だし、一段少ない7速DCTのシフトショックもそれなりだが、一般道での軽快さと高速での安定感を両立し、すべての速度域でリニアで爽やかなハンドリングが供されるのはうれしい。パドルシフトを駆使してパワーを使い切るのも楽しいし、渋滞から高速までフォローするACCまかせにしてもいい。いわば重厚なグランツアラーと軽妙なBクラス。今回は乗り出し価格を揃えたモデルを比べたが、興味があればぜひB200dなどほかのモデルもお試しいただきたい。
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